WHOバイオハブ

Gebaeude Labor Spiez

先月ジュネーブで開催された世界保健総会(WHA)で、スイスとWHOは「WHOバイオハブ施設(WHO BioHub Facility)」の立ち上げを発表した。WHOがこのような研究所を設けるのは初めて。

WHOバイオハブは病原体や生体材料を安全に受け取り、分析・保管し、他の研究施設にそれらを供給する国際協力センター。現在、各国の研究施設間の病原体の共有は、必要に応じて2国間ベースで行われているため、時間がかかる上、入手の機会を逃す国もある。バイオハブ設立で疫学的・臨床的データや生体材料をタイムリーに共有し、病原体に対する世界的な準備体制を整えることができるようになる。

バイオハブ発祥の背景には、WHOのテドロス・アダノム事務局長の「新型コロナウイルスなどの感染拡大によって、世界各国の科学者によるリスク分析や診断、治療薬とワクチンの開発を促すために病原体を迅速に共有することの重要性が強調された」という発言がある。

これに応じ、スイスの保健行政を管轄するアラン・ベルセ内相は緊密な国際連携を深めることを支持。WHOに近く、安全性、技術性、機能性の評判が高いシュピーツ研究所を世界中の研究所への拠点とすることを提案した。

防衛・国民保護・スポーツ省(DDPS)の一部門であるシュピーツ研究所はベルン州にある。事故からテロリズムや事件、戦争まで幅広い事象に渡る核(nuclear)、生物(biological)、化学物質(chemical)によるNBC災害から国民を守ることが元々の存在目的。放射性核種についての研究では、IAEAのパートナーにもなっている。バイオハブは研究所の生物学部が担当することになる。

新型コロナウイルスにより多国間主義、連帯、国際協力の意義が、改めて重要視された。どの国も単独でこのような危機に対応するのは難しい。依然として国家単位のパンデミック対策が目立つが、このハブを通じWHOが多国間協力でより主導的な役割を果たすことを期待したい。

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