プレゼンターのパラドックス

プレゼンターのパラドックス(Presenter’s Paradox)という言葉をご存じだろうか。サービス提供者はサービスが多いほどよいと考えるのに、消費者は多いサービスに必ずしも価値を見出さないという矛盾を指す。

プレゼンや営業、自己PRをする時、私たちはちょっとした「おまけ」をつけた方が効果が高まると考える。しかし、それは逆効果だということが2011年心理学の実験によって示された。

心理学者のキンバリー・ウィーバー、スティーブン・ガルシア、ノーバート・シュワルツらは、被験者にiPodとカバー、そして音楽を1曲無料でダウンロードできる特典つきパッケージとiPodとカバーだけのパッケージの2種類を提示しそれぞれへの支払い意思額を調べた。被験者らが示した意思額の平均は、ダウンロード付きのパッケージで177ドル、ダウンロードなしのパッケージで242ドルだった。価値の低い無料ダウンロードをおまけしたために、パッケージの知覚価値がかえって65ドルも下がったのである。

一方で別の実験グループにはサービス提供者になってもらい、上記2つのパッケージのうちどちらが消費者にとって魅力的だと思うかと尋ねた。結果、提供者の92%が無料ダウンロード付きのパッケージに魅力を感じたということだ。

このように、提供側の立場に立つと「多いに越したことはない」と思うのに、消費者の立場ではそうではないというパラドックスが生まれる。国際機関応募者もこのサービス提供者心理から、空席に関係ないスキルや資格、興味等の情報を書類に満載しがち。

応募者は学歴、職歴、ボランタリー活動、言語、出張の経験、海外在住経験、大学での研究のテーマ等等、全体に加算されるなら多いほど良いはずと考える。だが採用側は、候補者の学歴や資格職歴等を足し算しているのではなく全体をひとつのパッケージとして評価している。好ましい学歴や有益な資格も、それほどでもない言語能力や、ポストに関係のないスキルや出張と同列にされると、却って応募者の魅力が低下したりインパクトが薄れたりしてしまう。

何でもいれたい衝動にかられるときは履歴書の全体像をチェックすべきだろう。パッケージ全体の価値やインパクトを減らしている要素を捜し、よけいな情報、ポストとの関連性の薄い情報は削ることだ。ただし、これは自分を売り込むという主観性がプレゼンターのパラドックスと相まってなかなか難しい。あれもこれも入れたいという誘惑にかてず、長く委細にわたる履歴書になりがち。

シンプルで簡潔、かつ関連情報は網羅している履歴書を完成させるには、第三者にみてもらえばいいだろう。キャリア国際機関の履歴書添削サービスも利用してほしい。

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