世界貿易機関(WTO)

Is there any alternative to WTO? - Modern Diplomacy

世界貿易機関(WTO)の第12回閣僚会議が、6月13から15日までジュネーブで開催。数百の閣僚や代表団、複数のデモ等で、ジュネーブの右岸は交通マヒとなる。

閣僚会議は、通常2年に1度開催されるが、新型コロナの感染拡大で2度延期され今会合は5年ぶり。コロナワクチンの特許放棄や食料安全保障課題が議題となる。

新型コロナウイルスのワクチンや治療薬に関する知的財産権を、一時的に放棄する交渉はハイライト。権利放棄により、発展途上国による後発ワクチンの生産が可能になるが、大手製薬会社の本拠地があるスイスや英国がこの案に強く反対。現時点では、加盟国が必要な全会一致を得て合意に達する可能性は低い予想。 

20年以上にわたり議論されてきた乱獲につながる漁業補助金の禁止も、閣僚会議の交渉議題。継続的な乱獲によって海洋水産資源が枯渇し、緊急性を帯びている問題だが最終合意に達するかどうかは不明。

ウクライナ戦争によって、食料インフレ、サプライチェーンの混乱、輸出制限も議題となっている。加盟国は、国連の世界食糧計画(WFP)による人道的支援のための食料調達を輸出制限の対象から外す可能性など、現在の食糧危機に対処するためのさまざまな提案を検討する予定。ちなみに会議にはロシアも参加。

WTOは、関税などの貿易障害をできる限り減らし、国際貿易関係における差別的な待遇を廃止することなどを目指し、1995年に設立された。現在、メンバー国・地域は164。「自由貿易の番人」といわれるWTOの主な機能は(1)国際通商のルール(協定)の交渉、(2)ルールの履行監視、(3)メンバー間のルール違反を巡る紛争の解決。

WTOでは合意に加盟国の全会一致が必要なため、協議のアジェンダを決めるだけで何年もかかる。2001年にスタートした鉱工業品・農業サービス・ルール・貿易円滑化・知的所有権開発・貿易と環境分野のドーハラウンド交渉も各国が複雑に対立し、現在も膠着状態が続いている。

紛争処理制度は、加盟国・地域同士の貿易紛争を解決する2審性の枠組み。「王冠の宝石」と呼ばれるほどよく利用され、存在意義を高く評価されてきたWTOの貿易紛争解決機能だったが、米国がその枢である上級委員会の委員補充を拒否し、2019年から機能不全に陥っている。

このように緊急なWTO改革の必要性が広く認識されているが、具体的な改革案は出されていない。今回の会議での改革に関する議論が注目される。

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