UNRWA

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)はアラブ・イスラエル戦争で住居や生計を失ったパレスチナ人を救済するため1949年、暫定的に設立された。仮組織として任務の委託を3年ごとに延長しつつ、すでに75年。ヨルダン、シリア、レバノン、パレスチナ自治区に住む560万人を、医療・教育・人道政策などの分野で支援している。

パレスチナ難民支援を始めた当時から、財政難はUNRWAにつきまとった。だが、2010年頃から援助資金を減額する国や地域が増え始め、状況は切迫。支援活動の維持ばかりか、UNRWA職員約3万人への支払いに困ることも少なくないという。

難民の地位は子に引き継がれるため、数は増す一方でUNRWAの活動も増大した。2022年の資金は16億ドル(約2140億円)で大半は西側諸国からの寄付。日本はアメリカ、EU、ドイツ、スウエーデンに次ぐ大口の拠出国だ。

パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから、UNRWAの資金状態はさらに悪化。それに加え今年1月、UNRWA職員12人が昨年の奇襲に関与していたというイスラエルの告発があった。

UNRWAは直ちに職員を解雇し、イスラエルは告発の証拠をまだ国連に提出していないと反論。だがこの告発で、日米を含む15カ国以上が拠出金を一時停止し、ガザの人道危機への対処予算8億8千万ドル(約1300億円)の半分近くが不足することになった。

告発を受けて国連が調査に乗り出し、4月22日に独立調査報告書を発表。それによると、UNRWAの中立性に関しては、組織内に大きな機能不全はないとの結論がでた。だがこの結論は米国とイスラエルを納得させなかったようだ。

4月末で資金停止を解除したのは日本をはじめ、EU、 ドイツ、スウエーデン、カナダなど。アメリカ、イギリス、スイス等は以前解除を見合わせている。その間に難民状況は深刻化する一方で、UNRWAを解体できるような平和的環境にはまだ遠いようだ。

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