UNOGの財政危機

ジュネーブにある国連欧州本部UNOGは前例のない予算危機に直面し、大幅な経費削減を実施中。予算は増えていないのに加盟国の支払いが遅れたり、全額拠出しないケースが増加。そこに諸経費の値上がりや予想外の出費が重なったのが主原因らしい。

UNOGのあるスイスでは2023年、家庭のエネルギー価格が27%上昇したが、このようなインフレは、2022年12月に国連総会で承認された2023年度通常予算では想定外。電気代節約のため、昨年12月20日からは国連ビルが2週間以上全面閉鎖になったほど。

国際外交と人道主義の中心地であるUNOGは今年、給与以外の経費を42%削減する取り組みを進めている。このため、UNOGの建物の照明を落としたり、サイドイベントや非政府組織(NGO)の会合をセーブしたりしている。

UNOGは現在、国連人権理事会や軍縮会議など、毎年定期的にセッションを開催する義務がある公式会議を優先。外交交渉の生命線ともなる非公式会合や市民社会の参加は、激減するリスクがある。

財政的な課題は、UNOGの職員に限らず、ジュネーブに集まる国際機関やNGOを含むコミュニティ全体に広範囲な影響を及ぼす。削減された予算を管理しながらも、基本的な機能とサービスの維持は必要。とは言っても、オンラインの会合ばかりでは、舞台裏での多国間交渉の機会が失われてしまう。

この予算危機には、新型コロナの影響、ウクライナ戦争、中東情勢に揺れる加盟国の経済的課題が反映されており、多国間組織の正当性の危機でもある。UNOGの財政問題は、国際秩序のより深い変化の兆しであり、国連の活動を支える多国間主義の原則と対話への挑戦ともなり得る。

複雑な国際政治と世界的な危機が根本にある現在、財政安定の鍵となる各国拠出金を調達するのは難しくなっている。資金削減策により、多国間対話に不可欠な、包括的プラットフォームの一部を放棄することが財政危機の一番大きな問題であろう。

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