国連世界観光機関 – United Nations World Tourism Organization (UNWTO) は 2003年より国連専門機関として活動。World Trade Organization (WTO – 世界貿易機関)と区別するためWTOの前にUNを追加している。
観光を通じた豊かな社会の実現と各国の相互理解の促進を掲げ、責任ある持続可能な観光の促進が目的。UNWTOは6地域、加盟国158ヵ国、500以上の賛助会で構成され、本部はマドリッドにある。
観光振興には官民の連携が欠かせず、研究機関や企業も賛助加盟員として参加している。正規職員総数は90名あまりで、ジョージア出身のズラブ・ポロリカシュビリ氏が事務局長。
観光大国である日本はUNWTOの執行理事国であり、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン及び中国と共に加盟国中最多の分担金を拠出。奈良にはアジア太平洋センター(駐日事務所)がある。
2024年5月21日、ダボス会議で有名な世界経済フォーラム – World Economic Forum (WEF)が旅行・観光開発ランキング(Travel & Tourism Development Index)を発表し、日本は1位のアメリカ、2位のスペインに次いで3位となった。これは環境、インフラとサービス、旅行と観光資源、旅行と観光の持続性の分野における様々な指標を比較したもの。トップ10位は2019,2021年とも欧米諸国と日本、中国が占めており途上国との差は大きい。
上記の報告書によると、観光産業は世界全体の国民総生産(GNP)の約10%を占め、雇用に多大な影響を与えているが、不安定。マクロ経済と地政学的な不確実性、そして環境と気候変動によるリスクが大きい。コロナやデジタル化により、たくさんの旅行会社がつぶれたのも最近だ。
観光公害(オーバーツーリズム)もよく問題にされる。円安に伴ってインバウンド旅行者が激増した日本でも、深刻な問題となっている。UNWTOはオーバーツーリズムを防ぐ方法も提案しているが、成長と持続可能性を両立していくのは簡単ではない。とくに途上国では財源とノウハウが不足している。
災害が多い日本は、観光分野でも災害からの復興や危機管理の技術、経験が豊かで、UNWTOへの貢献が期待される。また日本人旅行者のマナーの良さは世界的に知られており、それも責任ある観光の手本として、もっと注目されて良いだろう。