人道支援活動の資金不足

今月1日、国連の2023年統一人道アピールが発表された。ドナー国に呼びかけられる支援額は$51.5 billion (515億ドル)と、22年額を25パーセント上回る記録的な高さ。支援対象人口も約70ヵ国の230 million(2億3千万)と今年より6千5百万人の増加となった。

国連人道問題調整事務所OCHAは、国連その他の援助機関(赤十字国際委員会除く)からの資金要請の調整役を務める。ドナーは主に欧米諸国の政府だが、最近では民間からの寄付も増加。OCHA広報官によると、国連が調整して呼びかけた人道支援のうち、年末を控えた今月22日の時点で実際に集まったのは、年間必要資金のわずか46.7%。過去3年間の平均は55%だった。

同広報官によると来年は記録的な資金不足となる見通し。要請予算を満額確保できないのは例年のことだが、ニーズとの差は開く一方だ。実際に集まった支援金額自体は増加しているが、ニーズのペースにはついていけない。

支援ニーズ増加にはウクライナ戦争、新型コロナウイルスや気候変動の影響、金融危機や長期化する紛争などさまざまな原因がある。特にウクライナの影響は大きく、欧州全体のウクライナ難民は760万人に昇る上、戦争の波及効果で食糧や燃料の価格が上昇し、支援コストに影響している。

ウクライナ侵攻は人道支援の慢性資金不足に拍車をかけた。イラク、シリア、イエメン、コンゴ民主共和国、エチオピア、南スーダン、アフガニスタン、バングラデシュ、ミャンマー、コロンビア、ハイチ、ベネズエラなどへの支援プログラムは、一層の資金不足から遅れが見られているという。

一方でウクライナ難民危機は、人道活動に個人や企業、財団といった新規のドナーをもたらした。こうしたドナーらは、ウクライナで起きていることを身近に感じ支援を決意したもの。このような支援が今後も継続され、ウクライナ以外にも広がっていけば、人道支援目標額達成にも希望がでてくるだろう。

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ウクライナ穀物輸出

ロシアがウクライナ侵攻を始めた2月以降に黒海が封鎖され、穀物輸出大国のウクライナに数百万トンの穀物が滞留。世界規模の食糧価格高騰と食糧危機が懸念された。

FAOによると、ウクライナの穀類輸出は世界総輸出の16パーセント、ひまわり油は40パーセントを占める。またWFPの食糧援助に使われる小麦の40パーセントはウクライナ産。

この7月に国連事務総長とトルコの仲介下、穀物運搬貨物船の安全航行や検査に関する合意文書が作成され、ウクライナ、ロシアとも署名。大きな外交的成功と評価された。

しかしロシアはウクライナによる攻撃があったと主張し、穀物輸出合意の履行を10月29日に停止。ロシア不参加中「黒海イニシアチブ」と呼ばれる輸出枠組みを使い続けるのは危険だと警告した。だがロシアが合意参加停止を発表した後も国連とトルコ、ウクライナは黒海経由の穀物輸出を続けていた。

ロシアの参加停止4日後、トルコのエルドアン大統領が「穀物輸送は、今日正午時点で以前の合意通りに継続される」と述べ、ロシア政府は国際合意に復帰。協議を仲介した国連のアミール・アブドラ氏は、トルコの貢献をたたえ、ロシアの判断を歓迎した。

この合意は有効期限が11月19日で、ロシアの延長賛同が再び危ぶまれたが、エルドアン大統領は、合意書をさらに一年延長するよう努めるとバリG20サミットで表明。

国連のグテレス事務総長は17日、4者全てが合意延長に同意したと声明。この合意は食料と肥料の価格を引き下げ、世界的な飢餓を回避するために不可欠だと強調した。国連はロシアからの食料や肥料の輸出に向けた障害除去にも取り組んでいるとの旨。

このようにウクライナ侵攻の影響は、色々な部門で世界の隅々にまで及んでいる。国際社会の在り方や国際機関の役割が改めて問われる時でもあるだろう。

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2023年度JPO試験

今年もあと2か月を残すばかりとなった。来年のJPO試験も年明け早々に受付が始まると思われる。説明会や公募の日も近い。

毎年応募書類の添削依頼が同じ時期に集中し、対応に時間がかかる。殆どの応募者が対象ポストが公示されてから書類作成をスタートする上、作成に時間をとられるため。

タイミングに余裕を持って作成しておけば、JPO試験対策に早いスタートを切ることができる。そのためには今から基本のP11 を用意しておくと良いだろう。

だいたいの項目を埋めて置き、対象ポストが公示された時点で微調整をする。P11の動機部分は応募対象ポストとの合致をアピールするカバーレターとは異なり、希望機関、JPOプログラムに対する動機、適格性や将来の抱負、貢献等を書くものなので、今からでもドラフト、添削ができる。

英文レジュメとP11をすでに用意しておけば、他の候補者より時間的に有利に立てる。早めに添削依頼をすれば,書類も早く返却され、あとは対象ポストに合わせたカバーレターに集中できるというもの。希望ポストがわかってからカバーレターと和文応募書類を完成させ、2度に分けて添削することも考えていいだろう。

一度作成添削した書類も、時間があれば何度か読み直し改善点を加えることができる。締め切りに追われず、納得できる書類となるまで書き直しする余裕も、早めに書類作成を開始したからこそ。

10月26日に開催された応募書類書き方セミナーでも話したが、書類提出をギリギリまで伸ばすのは避けたい。ストレスが増え、応募書類の質に悪影響を及ぼす心配もある。

とにかく計画性をもってJPO試験対策を早めに練り、実行することが成功のコツと思う。

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キャリア相談が有効な場合

コーチングやアドバイスを伴うキャリア相談(カウンセリング)はキャリア国際機関提供のサービスの一つ。国際機関への就職希望者や、国際機関職員への個別キャリア支援が有効なのはどういう場合か。キャリアプラン作成から実現の流れに沿って考えてみよう。

まず、キャリアプランの第一歩である自己分析、環境分析のサポート。本人の強みや市場価値を分析し、国際機関という特殊な職場にそれをどのように適用していくかを見極める手伝いをする。同時にキャリアや仕事に対する自分の価値観を分析。それらを基盤にして、納得できるキャリアパスやキャリアプランを構築していく際、国際機関という労働市場をよく知っている者からのアドバイスは貴重だろう。

プラン作成後、目標に沿って自分の希望する職を捜し応募。本人の経歴や資質、目標にマッチした職種、機関そしてグレードの空席を効果的に見つけ出すにも、国際機関という特殊な労働市場に精通したコーチの助けは有効。応募や採用プロセスの途中でも、各機関の構造や特殊な人事事情、規則などの情報を説明し、アドバイスしてくれるプロがいると心強い。

空席公募に応募し選抜課程を得て採用にこぎつけるまでには履歴書やカバーレターの添削や指導、面接対策用ガイドや模擬面接、筆記試験の指導等がキャリアをサポート。採用が本決まりになる前にステップや給料の委細、契約の種類等をコーチに確認できるという利点もある。

すでに就職している職員にもキャリアコーチは有効。とりわけ入って間もない場合やJPOには必要度が高いだろう。同僚には話しにくい職場の悩みや、キャリアの可能性もキャリアコーチには相談できる。国際機関の人事部や上司だけではカバーできない、個別の自己ブランド設定やネットワーク作り、自己投資等への助言は貴重。

JPOの場合は、正式職員を目指すためのケースに応じた支援が必要だろう。キャリアアップは意識しているが、日々の仕事に追われて思うように就職活動をしていない職員にも、プロフィールに応じての情報やアドバイスは歓迎されている。

キャリア国際機関が提供している様々なキャリアサポートサービスは、このサイトのリソースセンターに記述してあるので活用してほしい。

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国際機関応募書類書き方セミナー

コロナの影響で2019年以来ストップしていた応募書類書き方セミナーを、今回やっと開催できることになった。外務省サイトでもうすぐ公示されるが、期日は10月26日、日本時間18時30分から20時まで。Webex 使用のライブ配信となる。

過去何度かの東京開催セミナーでは、地方や海外在住の人にはアクセスが困難だった。今回のオンライン研修では、参加はずっと簡単になる。参加者の人数も会場のキャパに関わらず増やせるから、同じ条件でコネクトできる。開催関連ロジやコストも削減可能だろう。

スイスの国際機関紹介セミナーでオンライン研修の講師を経験したが、E ラーニングを成功させるには 特殊なテクニックが必要と再認識した。

決まった時間に始めるライブ式では参加者も発言や質問ができるので、ある程度直接の研修に近い形式をとれる。ただし参加者の集中度は直接のセミナーよりずっと短く、特別の工夫が必要。受講者のリアクション把握や交流は難しい上、チャットでの質問が多いと対応も大変だ。

このように新しい形式は新しい工夫や可能性をもたらすので歓迎すべきこと。参加者が満足できるような時間を演出したいと思っている。

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履歴書に不要な言葉

フォーマットの定められていない履歴書やレジュメの書き方に迷ったことはないだろうか。大抵の国際機関ではテンプレート記入方式になっているが、フリーの履歴書をアップロードさせる場合もある。JPO試験でも基本英文略歴(レジュメ)が要求される。

応募書類添削中目につくのは、履歴書には必要ない項目を入れているケース。一応の基本構成はできているのだが、不要または不適当な言い回しを加えると、簡潔にしたいレジュメが長くなる。以下よく見られるものを挙げてみた。

Career objective

採用側では個人の最終ゴールに特に興味を持っているわけではない。応募すること自体がゴールである場合も含め、これらの表現は不要。

Home address

わざわざ聞かれない限り、メールだけで良い。メールは最新のプロらしい住所を使う。email と記すだけでaddressと付け加えなくても充分。

References available upon request

必要があれば雇用側で調べるので不要。

Microsoft Office Suite

これを使いこなせない応募者はほぼいないだろうから、もっと専門的なアプリを挙げて差別化を測るべきだろう。

I, She, He, Him, Her

自分で履歴書を書いているという前提なので、これらの第一人称や第三人称はいらない筈。

Hobbies

仕事に関係ない限り避けよう。

この他にも避けたいのは具体的な例をあげないで、Soft skillsを書き連ねること。特にHard worker, Team player, Dynamic, Self-motivated, Detail-oriented などの能力を自己申告しても効果は薄い。必要なスキルはテストや面接でチェックされる。

以上は基本的なものばかりで、全部をカバーしているわけではないがこれらを避けるだけでも履歴書はスッキリする筈。キャリア国際機関では応募書類の添削サービスもやっているので利用してほしい。

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多文化環境とユーモア

異文化衝突の多い多民族社会では、ユーモアは頻繁に見られるコミュニケーションツール。衝突を回避したり、敵対心や緊張を緩和したりするのに使われる。歴代のアメリカの大統領の中には、演説にユーモアを交えるため専門家を雇った者すらいた。

ユーモアは職場でもストレスを減少させ、心地よく過ごせる環境を作り、生産性や効率を上げられる。ユーモアのある人材は企業や組織においても有益というわけだ。

国際機関でもユーモアの効用は大。人気のある職員や、研修インストラクターにはユーモアのある人が多い。笑いながら人を攻撃することはできないそうだが、上司や顧客とニコニコし合って、難しい場を切りぬけた同僚も何度か目にした。

しかし、ユーモアには危険も伴う。おかしい、という概念はかなり個人的で、文脈や文化に規定されるもの。多文化間コミュニケーションでは、気づかれずに誤解されたり侮 辱的になったりもする。大事なプレゼンや面接の時などにジョークを出すのはリスクが多いと言えよう。

日本人は笑わない、ユーモアがない、とよく言われる。文化的背景の多くを共有している日本人同士では必要度が低いためらしい。文化背景の違う相手だと、語学の壁に加え、使い慣れないユーモアが理解されないというリスクもある。

だが、ユーモアは先天的な能力ではなく後から身につけるビジネススキルであるとも言われる。ジョークの一つや二つ飛ばし、周りをクスッとさせられれば、国際機関での人間関係もスムースになっていくだろう。

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国連システム機関人材データ

国連システム事務局長調整委員会(United Nations System Chief Executives Board for Coordination(CEB)は、国連システム最高レベルの調整機関。事務総長が議長を務め、そのメンバーは国連の主要な31機関の指導者たちだ。委員会が発行する国際機関職員に関するデータが興味深い。

データの対象は一年以上の任期で働いている職員で、2015年から2021年までをカウント。

CEBのメンバー機関総職員数は2021年がおよそ12万人(119870人)。職員数の多い機関は国連35700人)ユニセフ(14413人)UNHCR(12157人)。この後 WFP, WHO, UNDPと続く。総数は2015年の99317人より2万人ほど増えているが UN、FAO、UNRWA、UNAIDS、 ICAO等メンバー機関中およそ3分の1である10機関は職員が減少。

国連事務局地理的配分対象ポスト上、日本人の数が足りないとよく言われるが、対象以外の言語ポストや一般職も含めた総数でカウントすると傾向はもっと顕著。国連関係機関の邦人は1179人で、アメリカ(5567人)フランス(4488人)ケニヤ(3763人)とは差がつく。イタリア(3700人)やドイツ(1832人)のように母国語が国連公用語ではない国と比べても多いとは言えず、28位という順番。

職員が集中している勤務地はジュネーブ(11742人)、ニューヨーク(9744人)、ウイーン(4413人)の他、ナイロビ(3482人)ローマ(3314人)アディスアベバ(2164人)。東京は153人と少数だ。

だが、地域的にみると職員が一番多いのはアフリカで全体の36.2% (43395人)が勤務。ヨーロッパは24.9% 、アジア22.9%、南北アメリカ15.5% であり、国連機関活動の中心はアフリカ大陸にあることを示している。経済社会発展の他、紛争解決、緊急人道支援から環境問題、COVID-19まで国連介入のテーマは多彩である。

これらの職員統計は、今後もSDG達成度 と世界の地政学的状況により目まぐるしく変化していくことだろう。

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マルチリンガルの街ジュネーブ

ジュネーブでバスに乗ると、いろいろな言語を耳にする。英語の会話を始め、スペイン語、ドイツ語、アラブ語など国際色豊か。

マルチリンガル人口が多いスイスの公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語。これは歴史的、地理的背景から4つの公用語を ひとつに統一することが難しいためと、消滅の危機にある、ロマンシュ語を守るため。

スイスでは店やレストラン、公共機関等でもたいてい英語で用が足りる。特にジュネーブは外国人が多く、英語だけで暮らしている人もよく見られる。

スイスは言語教育に力を入れておりドイツ語、フランス語、英語の3か国語が話せるのは一般的。ジュネーブでは小学生からフランス語、ドイツ語、英語の3か国語を学ぶ上、高校からは語学留学制度が充実している。また、英語やドイツ語の学校や英語仏語バイリンの学校も多く、休暇中はサマースクールやキャンプで語学を磨ける。

もともと国際機関や多国籍企業の多い国境の街ジュネーブでは、現地語フランス語ができなければ、すぐ英語が使われる。日本では英語を話すとインテリ層という印象があるが、ジュネーブではバスの運転手からスーパーの店員まで皆バイリンで感心する。

ドイツ語はジュネーブでは第2外国語だが、文化的に合わないのか学校でも人気がなく、レベルは低い。一方ドイツ語圏のチューリヒなどでは最近はフランス語よりも英語を先に教えるリキュラムを取って、英語の方を重視。

ドイツ語圏スイス人とフランス語圏スイス人との会話は、一昔前はドイツ系スイス人がたどたどしいフランス語で対応していた。昨今スイス人同士の会話は、公用語ではない英語使用という不思議な現象になっている。

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Which 対 That

国際機関への応募書類を書く際によく使われる関係代名。Which を使うか that にすべきか、迷ったことはないだろうか。

Whichとthatは先行詞を定義し、欠かせない情報を提供している場合 (制限用法)どちらでも可能。だがwhichを使えるのはイギリス式英語で先行詞が人以外の場合だけ。 

例 I have never read the book which/ that is on the table.

先行詞が「人 + 物(動物)」や「all」「anything」「everything」「little」「much」「nothing」の場合、または先行詞に、最上級の形容詞や「first」「only」「very」などが付いているような制限用法ではthatのみ可能。

例 This is the best film that I’ve ever seen.

関係代名詞節が残りの英文に補足的説明しかつけない場合(非制限用法)はwhichを使用し、特定していない関係節の間にはコンマを入れる。下の例では、コンマ以後の情報は、取り除いても全体の意味に影響はない。

例 I finished the work in record time, which was appreciated by my colleagues.

結論として、関係代名詞後の情報が文章の意味に不可欠であればthat、単なる追加情報であればwhich (コンマ付き)を使用、と記憶すれば便利。

ネイティブでもthatとwhichを混同する事は多い。疑いのある場合はキャリア国際機関の応募書類添削サービスも利用してほしい。

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