Tag Archives: キャリア

キャリア国際機関の軌跡

管理人
管理人

キャリア国際機関のサイトを立ち上げ、国際機関キャリア支援サービスを始めてからはや一年半あまりが過ぎた。この間の主な活動と成果を振り返って見たい。

昨年2月15日に最初の記事を載せてから、ほぼ2週間おきに国際機関のキャリア開発に役立ちそうな記事をアップロードしてきた。掲載された記事は44件、今回が45番目の投稿となる。キャリアアドバイス、コーチング、応募書類添削、模擬面接等のサービスを利用した方は約36人。応募、面接テクニック資料の販売は14件となっている。報告のあった範囲では、国際機関に採用されたものが2名、JPO試験に受かったものが2名とうれしい結果に結びついている。

また、国際機関邦人職員用にキャリア構築セミナーをジュネーブで一度、外務省主催の応募書類書き方セミナーを東京で一度行い、インターネット上だけでなく、直接の指導ができてとても有意義であった。その他にもジュネーブ国際機関訪問の大学生たちにレクをする機会に恵まれ、若さの可能性を実感させてもらっている。来年は国際機関訪問ツアーが実行され、参加者にキャリアカウンセリングを提供する予定となっている。

アドバイザーを引き受けてくれた元同僚、外務省国際人事センター、ジュネーブ邦人職員会、そしてジュネーブ日本政府代表部にもずいぶんと協力していただき、感謝している。いろいろと成果があったこの20ケ月間に感じたことを以下に述べてみた。

外務省人事センター等の努力のおかげでどうやったら国際機関に入れるか、という情報はとても充実している。しかし、個別のプロフィールやキャリアのニーズに合った国際機関や空席を捜し、応募書類を作るための情報やアドバイスを得る機会は稀である。とくに地方の社会人や海外在住者は孤立がちで、そのような支援には恵まれない。アドバイスや適切な情報のないまま、プロフィールの合致していないポストに何度も応募を繰り返し、あきらめてやめてしまうケースも多いと想像できる。

国際機関就職希望者のみならず現職員からもアドバイスやコーチングの依頼はあり、この分野でもキャリアサポートの強化は必要だろう。とくにJPOはコーチやメンターが早い時点からついていれば、国際機関の正式職員になれる可能性が高くなると思う。

なるべくたくさんの人に役立ちたいという思いから、キャリア国際機関のサービス料金は比較的低く設定してある。アドバイスは無料だが的確な情報を提供するためには、リサーチやデータ分析が必要となり、それなりに時間も手間もかかっている。応募の成功、不成功にかかわらずアドバイスや面接、書類添削後の結果を知らせてもらえると、とてもやりがいがある。

空席広告の理解

tablet-1250410_640

9月のセミナーでは応募の基本である、空席広告を完全に理解する、求められたプロフィールに当てはまる場合のみ応募する、空席毎に合わせた応募書類を作成するという三原則を主張した。この中から、空席広告の完全理解と必要条件に当てはまる場合にのみ応募という、関連した2点をクローズアップし、一番空席公募の多い国連のシステムを例にとって説明してみたい。

空席広告の最後に書いてある仕事遂行に必要な学歴、経験、資格等の基本条件(Qualifications required)は、最低満たしていなければならない基準でありそのうちのひとつでも欠けている応募書類は最初のスクリーニングで除かれる。現職員以外の候補者はこの時点で容赦なくはねられるので採用必要条件はクリアしておく必要がある。

ここで残った応募者を対象に、基礎条件に加えDesirable, advantage, asset などの形容詞のついた条件、例えば、特殊な資格、途上国での労働経験、国際機関での経験等のあると有利とみなされる条件のチェックがされる。また最低条件を満たしていていてもその質の高さ(たとえば経験の年数と環境、空席のポストに近い経験かなど)を問われることもある。この他、求められるコンペタンシーのプロフェッショナリスムの項に資格やソフトウェアが具体的に挙げられていると、これも選抜フイルターとなりえる。このようにして絞り込められた15人程の候補者が筆記試験に招待され、その結果を見て3から8人程度の最終候補者を選び面接となる。

空席広告で求められたプロフィールと自分の経歴がマッチしているかどうかの確認は冷静かつ客観的にやってほしい。自分のプロフィールが空席広告に表示されている基礎の資格プラス、有利と記された条件にあっていない場合は応募を見送るとともに、ミスマッチの分野や程度を見極め、今後の対策をたてることが大切になってくる。

同じ機関の複数の空席広告を分析すれば、採用基準の条件や傾向、または組織構成等がわかり将来応募する際の戦略が立てられるだろう。また異なる機関の同類職種の空席広告を比べることによって、機関ごとに採用基準が少しずつ違うことが発見できるかもしれない。自分と空席の経験との相違を分析しキャリアプランに使うためには、求められた基礎条件の他に、どんな環境でどういう種類の任務を遂行するかを空席広告から読み取り、自分の経験の量、質と比べるという作業も大切であろう。

このように戦略をたてて空席広告を充分分析し、自分の経歴が求められた条件に近いことを確認してから応募すると成功率が上がることと考える。

セミナーの感想

head-1556567_640

9月6日外務省主催の応募書類の書き方についてのセミナーが東京市ヶ谷で開催され、当サイトの管理人小島晶子が講師として国際機関に応募する際必要な履歴書及びカバーレターの書き方について指導した。

もともとは2日程かかるようなトレーニングを一時間あまりに濃縮して講義するのだから、情報量はかなり多い。参加者の消化不良が危ぶまれたが、皆熱心で活発に質問しインタアクテイブなセミナーとなった。

このセミナーで一番強調したかったのは、採用側のほしい情報を早く簡潔に伝えるという点である。そのためにも応募の基本三原則、空席広告を完全に理解する、求められたプロフィールに当てはまる場合のみ応募する、空席毎に合わせた応募書類を作成するという事項を主張した。

外務省人事センターの努力のおかげで、現在ほぼ毎週のように国際機関就職セミナーが開催され、一般的な情報はよく浸透しているようだ。しかし、個別のプロフィールやキャリアのニーズに合った国際機関や空席を捜し、応募書類を作るのはなかなか大変だ。参加者の多数が応募書類作成以前に、納得できるキャリアプランをどう立て、実行していくかという時点でサポートを必要としていると強く感じた。

本人の経歴や資質、目標にマッチした職種、機関そしてグレードの空席を効果的に見つけ出してのみ、雇用側にアピールする応募書類が書けるというもの。空席と自己プロフィールの合致の売り込み以前の段階の情報が不足しているわけだ。これがプロフィールに合致しない空席選びや基本条件を満たしていない応募という残念な、しかし頻繁な結果となっているようだ。

キャリア国際機関では応募書類の添削サービスをしているが、その以前のステップであるキャリアカウンセリングも提供している。応募の前に、空席と自己の経歴そしてキャリアプランとの合致をもっと検討してみるといいだろう。

「管理職へのキャリア構築」セミナー

workshop-745013_640

国際機関でのキャリア開発は、機関、上司、本人という3部構成になっている。組織のキャリア開発サポートと上司はキャリア開発の重要な助けである。ただし、国際機関の人材政策でも « キャリアは自分で作るもの »と、個人の最終責任を明確に打ち出している。これからのキャリア開発には、自分の市場価値を常に高めつつ周囲のサポートを利用していく、という態度がより重要となるだろう。

とくに昇進は日本の職場と違って、一生懸命仕事をしたものに自動的に与えられるものではない。国際機関での昇進には戦略が不可欠で、仕事熱心のあまり昇進活動を怠るとるとかえって取り残されたりもする。管理職へのキャリアはまさに計画して積み上げていくものといえる。

ジュネーブ国際機関日本人職員会JSAGは中堅レベルの邦人職員を対象に、「管理職へのキャリア構築」セミナーを今4月に開催した。目的は幹部ポストに必要とされる見識やコンピテンシーについて理解を深めるためで、サイト管理人小島がこのセミナーの講師を務めさせていただいた。

ジュネーブ在住の11人の邦人職員が参加したこのセミナーでは、幹部ポスト(P5、D~)を目指すにあたって重要な要素やステップ、幹部に求められるコンピテンシーなどを説明した。2日程度のセミナーの内容を1時間半に濃縮したのでインタアクテイブにとはいかなかったが、参加者が積極的だったので活発な質疑応答と情報交換ができた。

セミナーのポイントはJSAGのウェブページに掲載される予定なのでここでは触れない。ただし、早く昇進したい人にもっとも必要なものを挙げろといわれたら、柔軟性のある具体的目標、3年から5年で動くこと(2年から4年で準備)、自己の市場価を上げること、情報収集とアドバイスと答えると思う。もちろん他にも重要な点はたくさんあるのだが、昇進を自分の価値観の中心にとらえている職員はロールモデルやメンター、コーチ等を活用し早い時期に軌道を先取りすることを考えるべきだろう。

また自分の仕事に対する意識や価値観はキャリアや人生の節目節目で変わっていくものだ。案外と自分の興味や大切とすることに気ずいてない場合もある。時々は職場から距離をとって、自分が何のために働いているのか、何が大切なのかを見直す時間を作るといいと思う。

キャリアサクセス

国際機関職員のキャリアは,国際政治経済情勢の変化や情報化、科学技術化、グローバル化等に伴う機関自体の構造の変化、役割の複雑化や多様化、地理的条件、予算やポストの変動など様々な要素に影響される。最近の傾向として目立って感じられるのは専門分野の多様化、キャリアの可動性、契約パターンの暫定化であろう。

国連に関していえば、上級管理職レベルのポストはとくに減っていないが競争は厳しくなっている。階層構造が平坦化し、専門職には中間レベルが多いので管理職レベルの空席への応募は内外から多数となる。そして応募者の学歴、職歴が一般的に高くなっているのでよっぽど特殊な仕事内容でない限り、選考基準を満たす候補者は十二分にいる。またロスター制度により、リクルートプロセスを経ないですぐにポストにつける候補者がすでに何人も存在している。雇用側にとっても候補者の差別化はデリケートな作業となってきているといえよう。

また構造改革をへてスリム化した国際機関も多いから、狙っていたポストが消えてしまう可能性もある。新規プログラムに伴う職務も通常予算で賄われるものは減っている。このようにキャリアパスの複雑性、不確実性が高まる中で、昇進を伴ったキャリア開発は以前よりむつかしくなっている。

こういう環境で給料や地位以外に何をもとめてキャリアを積んでいくか、何をもって成功とするかを、自分の価値観に照らして考えてみることが必要だろう。近代化経済成長モデルが生き詰まり経済的尺度で測れない自由や豊かさの見直しが問われる昨今、キャリアパスの概念も上昇を目指す道だけではなく、一人ひとりが従来の外的要因に束縛されないで自由に自分の道を作っていくという方向に変換している。

地位や収入という外的要因だけが判断の基準ではなくなり、キャリアサクセスにはもっと自由で多様な解釈があてはめられる。面白い、楽しい、成長感のある仕事、知的刺激に満ちた職場、自律性、国際社会発展への貢献度、私生活とのバランス等も成功の要素であり、結局は自分のキャリアに対する満足感という内部要因がより重要になってくるだろう。

国際機関でよく耳にする表現

UN_08

国際機関のコミュニケーションは主に英語でなされる。英語が堪能とはいえ、母国語ではない職員も多いし、勤務地のローカルな言語からの影響もありキングスイングリッシュばかりが使われているわけではない。長く勤務しているとその機関独特の語彙に気がついたりして興味深い。以下の表現は記憶に残っているものの一部である。

High-maintenance

維持の手間がかかるという意味の言葉だが、人事部で使用する場合は常に注意の必要な職員をさす。例えば自分の待遇条件等に、頻繁に質問や不満を発する者や、感情の起伏が激しく上司や同僚と衝突の多い者、勤務成績や態度に問題があり定期的なモニターが必要な職員など。どこの会社や機関にも大抵何人かいる、世話のやける困ったさんのことである。機関や部署により、その手の職員の割合は微妙に異なると言えよう。まあ、ハイメインテナンスと言われないよう気をつけたいものだ。

Catch-22

第二次世界大戦中のアメリカ人飛行士の小説の題から有名になったこの言葉は矛盾していて出口のない状態を指す。小説中の奇妙な軍規22項(狂気に陥ったものは自ら請願すれば除隊できる。ただし、自分の狂気を意識できる程度ではまだ狂っているとは認められない)に翻弄され除隊できない主人公の例のごとく、2つの相反する要求のジレンマから解決不可能となるケースは国際機関でもよく見られる。例えばフィールドのポストに応募したが、フィールド勤務経験がないという理由で不採用になった場合とか、予算がもらえずプロジェクトが始められないがプロジェクト不在のため予算獲得ができない例等。国連でのキャッチ22という表現は悲しいながら何となく現実離れしたコミカル感も漂い、官僚主義にお手上げという語り手の気持ちが感じられる。

Take it from there (here)

そこ(ここ)から始めよう、またはそこ(ここ)から続けようという意味。建設的かつ肯定的な響きをもったこの表現はどんな状況でも都合よくピタッとはまり、特別提案することがない場合など、とくに重宝される。そのためか会議や、打ち合わせ、メール等で結構よく使われている。ただしそこ、ここというのが何をさすのかはっきりしない場合も多く皆が同じことを理解しているかどうか心もとない。そことはどこか、という質問がでることがほぼないのも不思議である。文化、習慣の違いを乗り越えての以心伝心が可能なのか、それぞれが違うことを理解し他人もそうだと信じ切っているのか、知るのがちょっと怖いような気もする。

国際機関での昇進

UN_08

一度契約が安定したら、たいていの人が昇進について考えるのではないだろうか。

国際公務員は昇進を意識しすぎだとよく批判される。しかしルールにしばられ、経営陣や人事部の一存で人財を動かせない国際機関では、仕事処理能力や努力だけで昇進は望めない。その結果職員が自己でキャリアを切り開こうとすることになる。

では昇進することにおける経済面以外のメリットは何だろう。まず、自分の実力が認められたことに対する充実感と仕事への意欲の向上がある。決断や予算面での権限が増し、影響力が上がるので、プロジェクト実施がやりやすくなる。また上に行くほど情報が入手しやすく、自己のサバイバルに有利に働く。このほか、若手や同僚の管理育成や、機関内のマネジメントに自分の考えを反映できるという点もあるだろう。

ただし昇進したことで雑用と部下管理ばかりが増えてしまい、自分の得意分野でスペシャリストとして活躍できなくなるというデメリットもあるので、やみくもに管理職を選ぶのも考えものである。給料の面からいけば、グレードが一つ低くても滞在年数が多いので収入は上司より高いというケースもよくある。何が自分にとって一番大切な価値かをまず見極めるるべきであろう。

国際機関での昇進には以下のケースが挙げられる。

自分のポストよりグレードの高いポスト(機関内,外)に応募し、採用される。機関内であれば、すぐその下のグレードを最低何年経験する等の条件が課せられることがあるが、他の機関に行けば、そういう制限はかからない。

自分のポストのグレードをjob classificationにより上げてもらい、そのポストと供に昇進。これは自身のポストでも、公募対象になり選考されなければ上がらない制度と、ポストのアップグレードに伴って条件さえ満たせばほぼ自動的に昇進となる制度とがある。

この他にも、機関によっては競争なしでノミネートできる特別ポストがあったり、一時的に特殊な責任を課され特別手当をもらえる機会があったりもする。国連だとスペシャルミッション等も対象となるだろう。

上記したように、昇進は素晴らしい仕事をしたものが自動的に与えられるものではない。国際機関での昇進には戦略が不可欠で、仕事熱心のあまり昇進運動を怠るとるとかえって取り残されるくらいである。

どういう戦略をたて実践していくかは次の機会に書きたいと思う。