国連は社会的弱者グループとして女性、若者、子供、高齢者、貧困者、障害を持つ人々、少数者と先住民などの人権を定義付け、その擁護に力を入れてきた。持続可能な開発目標SDGsでも、「誰も置き去りにしない」が普遍的テーマとなっている。
世界で最も小さな国際都市ジュネーブの多文化性については、すでに書いた。人口の41パーセントは外人であるこの街は、多様性に対する(diversity) 許容力の高さが特徴。包括的 (inclusive) な共同体を作ろうとする動きが政策随所に見られる。
スイス女性の地位は意外と低く、今年6月にはジュネーブ中の女性が給料格差やハラスメント反対の大型ストライキを実地。1991年以降2度目のイベントで、女性の社会参画をより進めるために改善すべき課題は多いと訴えた。
同性愛者や性同一性障害者を、根深い差別から保護するのは国連人権委員会の活動の一部。地元ジュネーブでも毎年恒例の「プライド」と称されるセクシュアル・マイノリティのパレードイベントが初夏に繰り広げられる。
ジュネーブは2007年WHO(世界保健機関)で提唱された「高齢者にやさしい都市」にも登録。シニアの生 活を支援し,安全に暮らし,健康を保持し,社会に参加し続けながら老いることができる環境を作るのが理想だ。そのような環境は全年齢層にも有益となると主張。
多様で包括的な共同体は、少数派だけでなく全ての参加者にポジティブな影響を与えると言われ、「違っている一人一人が生きやすい社会」という理念の基本になっている。平等や公正さだけでなく、総合的な社会発達を促すのが最終目的。
人類の歴史を振り返れば、社会的マイノリティーへの差別や虐待、人権侵害の方が長い。異質のものを取り除こうとする原始的な反応は誰の内面にもあるもの。それを追い払うためにも制度、法律を確立し、支援しながら、文化として維持していくことが重要だろう。
インクルーシブな環境作りをグローバル、職場レベルで目標としている国際機関だが、ジュネーブも街単位で平等参加型社会作りに努力している。時間も予算もかかる取り組みであり、まだ目標は全て達成されてないが、その姿勢は評価できるだろう。