読みやすい応募書類

国際機関への応募や、筆記試験には明確でわかりやすい英文が求められる。主語動詞/修飾関係がはっきりしており簡潔な文は採用側が短時間で読め、空席との合致を評価できる。長く読みにくい履歴書やエッセイは、概括する能力を疑われる場合もある。

無駄に長く単語配置が効果的でないと、文法的に正しくても難解。複雑な英文でないとレベルが低いような印象があるからか、特にアカデミックな英文はわかりにくい。実際には、複雑なことを簡単に書く方が難しく、高い英語力を要する。

英語母国語の人が書いた英文が読みにくい例は多く、応募書類も文法のみ直しても分かりづらいままでは不利。簡潔明晰に自分の履歴や考えをアピールするためには、何が必要か。

まず文全体の情報配置を構築し、書き順マップ作成。主語を短くし、主語と動詞間の距離を詰めると読み手の理解度はアップする。次に無くても良い表現はカットし、語数、周りくどさを減らす。

具体的には、動詞を吟味しlyで終わる副詞 (例completely, successfully)を削る、clichéと呼ばれる決まり文句 (例last not least、in my humble opinion)や場つなぎ言葉、無駄な表現 (例just, that, really, in order to, several, various, certain)もなるだけカット。選べる場合は簡単な表現を優先(例utilize をuse, due to the fact that をbecause, conducted some researchを researched )など。

また否定表現より肯定表現、受動態より能動態を使った方が読みやすさ度は上がり、語数は減る。

アプリやAIも活用し、全体を書き終わったら読み直し、書き直す。AIの文は回りくどいものが多いので、気をつけよう。一旦書いたものは少し時間を置いてから読み返せば、冷静な判断がしやすいもの。その後、第3者に見てもらえれば理想的。 キャリア国際機関の添削サービスも利用してほしい。

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カフェテリアの懲りない面々

今回は国際電気通信連合(ITU)勤務中の体験。舞台は、職員なら一度はいくカフェテリアだ。各国際機関にはカフェテリアがあり、その機関や他の機関の職員に食事や飲み物を提供。ジュネーブでは一般に開放しているところも多い。

ITUは職員数1000人程度の小さい専門機関であり、2つあるカフェテリアもそれを反映しこじんまりしたもの。そこで出会う職員や従業員は皆顔馴染みだ。

そのせいで、長年いたコックが突然辞めた時は目立った。職員に毎日違うメニューを、リーズナブルな値段で提供するのは大変だ。陽気で忍耐力があるコックだったが、週末に宝くじで大金をあて月曜日から突如欠勤。週刊誌でも大きく取り上げられたほど多額だったらしい。

それと前後して、やはりカフェテリアから消えた従業員がいた。こちらは、毎日、コーヒーや紅茶をカウンターから手渡してくれていた女性。当然話題になったが、驚きのエピソードがあった。この女性は自分の尿を飲むという健康法を実行していて、その効果をスイスのテレビのインタビューで説明したそうなのだ。

視聴者にとっては興味深い話だったろうが、その番組が放映されてから、女性従業員は解雇された。衛生上、カフェテリアには相応しくない慣習とみなされた模様。以上の2人はITUと契約して、職員用カフェテリアを管理している下請け会社の社員であり、国際機関の職員ではない。

だがこの人達に劣らないユニークな職員もいた。毎日朝のコーヒーに華麗な姿を現す、ファッションモデルのような男性職員。ラテン系の情熱的なルックスで背は高く、毎日おしゃれな服を召し、高そうな靴を履いている。人気があるらしく、コーヒーのお相手をする女性には事欠かない。

外装にお金をかける職員はよくいる。だが、地下にある印刷部の同僚たちはラフな恰好で働いており、彼のスタイルとは天と地。お近ずきの光栄に預からないうちに、その男性職員はある日、カフェテリアいやITUから姿を消した。

なんでも借金がかさんで払えなくなったから、という噂は耳にしたが、本当かどうかは不明。衣装に金を使いすぎたのかとも想像するが、国際公務員、とくに男性でそこまでする人も珍しい。今頃どんなカフェテリアでお茶を飲んでいるのだろうか。

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国際機関に適した履歴

国際機関の空席広告に応募する場合、要求された学歴、経験、資格などを全部クリアしているのは最低条件。競争相手に差をつけられるのは 以下の付加価値だ。開発、人道支援関係はもちろん、大抵のポストに通用する。これらの要素が多いほど、 国際機関では重宝される。

フィールド事務所の経験、特に緊急事態地域での経験は本部のポストに応募する際も貴重。アフガニスタンやスーダンのような、困難な環境での仕事は特に評価される。国連採用者の約半数は緊急事態状況での勤務経験があると言われる

フィールド活動中心の機関は、可動性のある 経歴を重視。空席の活動区域、地方、国などで働いた経験があり、それが最近であるほど 採用後すぐに実務可能とみなされ有利となる。

同類のテーマ(例、教育、環境、労働)担当機関で働いていればプラス。例えばUNHCRに応募するとき難民関連のNGOや公共機関経験がある場合だ。内部職員や、類似活動機関の職員は面接まで行ける可能性も高い。UNHCR からIOM, UNCTAD とWTOなどが良い例。この時同じグレードまたは一つ下のグレードだったり、ロスターに入っていたりしていれば、さらに有望だ。

国際機関の業務語は英語とフランス語だが、その他の公用語( アラブ、スペイン、ロシア、中国語)の一つでもできれば有利。特に開発系ではアラブ語や、公用語ではないが、ポルトガル語ができると重宝される。ジュニアレベルでは 、採用者の約80パーセント が2種類以上の公用語に通じているという統計が出ている。日本人には難しい条件だが、言語の重要性にももっと目を向けたいもの。

これらが、国際機関で重宝されるプロフィール。このうちのいくつかあれば、応募書類を作る段階から 充分にアピールしたいものだ。

管理職に応募するのであれば、他の国際機関ですでにリーダーとして活躍した経験は評価される。その機関が大手で、地域事務所も多ければ申し分ない。

ほぼ応募者数全員が修士である昨今、博士号を持っていれば差がつけられる。もちろん仕事に関連する分野。博士号の応募者は国連では全体の約9パーセントだそうだが、OECDのようなリサーチ、政策分析中心の職務だと、YPP(若者向けの採用プログラム )選抜者の半数がPhD保持者と報告されている。

これらが、国際機関で重宝されるプロフィール。このうちのいくつかあれば、応募書類を作る段階から 充分にアピールしたいものだ。

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2024 年度 JPO 試験

JPO 試験募集要項は人事センターで公表中。今年は去年より応募期間が少し短縮され、締め切りは日本時間3 月 4 日(月)23:59。

締め切りだけではなく、第一審査、第二審査の結果発表も2023年より早めで、それぞれ4月中下旬、6月中旬である。

今年の募集要項にはUNDPへの応募資格説明と、 TOEFLテスト、IELTSの結果に関する虚偽の申告は失格とし、以後JPO 受験申込みを受け付けない旨が追加された。

また第一志望のポストのTORの提出や、志望先として、国際機関5つまで記載可等、新要素が加わった。志望ポストは外務省の定めた危険レベル 3 又はレベル 4 でないことを確認した上で申込む。

国際機関枠(UNDP、WFP、OECD、 OPCW、ICAO、WOAH(旧 OIE)、GCF)を選ぶか、外務省枠で行くかは希望ポスト、機関によるだろう。国際機関枠だと外務省と希望機関と2度面接する必要がなく希望機関との面接だけで決定される上、課題提出がない場合もあるという。

一見国際機関枠の方が簡単そうに思えるが、希望機関との面接を通過しなければそれ限り。外務省枠だと第一希望でない機関やポストに推奨される可能性がある。

キャリア国際機関では、応募書類添削、ライティング課題や面接準備の支援と共に、対象ポストの選び方やキャリアのアドバイスもしているので利用してほしい。JPO支援サービスは、このサイトのリソースセンターに表示中である。

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民間企業の経験が歓迎される職種

国際機関採用には、専門分野での学歴と職務経験が評価される。職歴に関しては国際機関に近い 職場環境 、例えば、官公庁関係、在外公館 、JICA、 NGO 等 での勤務が有利。民間企業での経験はどうか。

職種によっては、民間企業出身者は内部職員や公共機関の応募者より評価が高い。進化が早く知識や技術投資コストのかかる分野では、民間企業のノウハウの方が国際機関より進んでいるため。例えばIT関係だと 最先端の知識、技術をもっている外部の者が優先される。国連時代、同僚のIT担当者 にはGやM出身がよくいたもの。

投資バンキング、会計監査、エンジニア といった職種も外部調達が多い。とくに世界的に著名な企業や大手コンサルでの経験 は歓迎される 。また医師や妊産婦、健康管理専門家は供給不足と言われており、とりわけ短期緊急ポストでは採用チャンスが高い。

人事、物資調達やロジ、財務、法律、コミュニケーション等にも民間企業の経験は有効。シンクタンク、多国籍企業、開発コンサル、国際法律事務所、外資系銀行などの経験を活かし、市場調査やビジネスプラン、イノベーション等に貢献できる。ただし、これらはITや医療関係と違い民間経験オンリーだと競争力は弱い。

国際機関空席公募やJPO試験に備えるには、民間企業経歴 プラス 国際機関との接点が欲しいもの。インターン、ボランタリー、短期採用やコンサル、技術協力専門家、あるいはパートナーシップや会議、タスクフォース、ネットワーク に参加、といった 活動を早いうちからキャリア計画に入れるべきだろう。 

応募やキャリアについてのアドバイス希望者はこのサイトのコンタクトフォームを利用していただきたい。

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応募書類とAI

前回も触れたが、履歴書やカバーレター作成にAIを利用する応募者が増えた。応募書類準備に費やす労力や時間を減らせ、ある程度のレベルの書類ができるところが魅力。

だがAIも万能ではない。日本語の職歴やタイトルを入力して英訳させると、文法的には正しいのだが業務内容のよくわからない文がでてくる。日本語と英語の職務記述には文化的な違いがあるので、ただ翻訳しただけでは不十分。採用者が職務内容をすぐ把握できるよう、英文を調整する必要がある。

AIといえど、英文法がまちがっていることもあるので気をつけよう。ただし自分で書くよりはまし、と割り切ってしまう手もある。

またAIには独特のまだるっこしい不自然な言い回しがよくあるので、自然で簡潔な英語になるよう修正する。

以上を鑑みると、AIによる自動生成はあくまで下書きと認識し、最終チェックは人がする、という形が理想的だろう。

AI使用の応募書類作成で気になる点は、実際の英語力は上がらない、というところ。むしろ自動的に作成することで、能力が落ちていく可能性もある。

応募書類は完璧でもテストや面接、そして採用後の勤務で英語ライティングの実力が問われた時が心配だ。今後国際機関で活躍していきたかったら、どこかの時点で英語を書く練習をしておくべき。

AIが作成した書類のおかげでスクリーンされる可能性は、以前の応募書類より高くなるかも。ただし、応募者全員がAIを利用し書類の質が均一化すれば、より差別化を図るための工夫が求められるだろう。

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年末年始に向けて

今年もあと10日足らず。師走と言われるようにせわしない、かつ活気に満ちたシーズンである。

今年の最大注目事項は何といってもイスラエル・ガザ情勢だろう。もうすぐ2年になるウクライナ紛争終止のめども立たないまま、新たな戦争が始まり、人権問題が深刻になっている。

ウクライナの場合もそうだが、一度紛争が始まると和平へのプロセスが長引き、周りへの影響がどんどん広まっていくのが気になる。どちらも第3次世界大戦へと展開していく可能性も秘めている。この暗いニュースで年を越す可能性はかなり大きそうだ。

AIの著しい台頭も今年の特徴の一つ。キャリア国際機関提供サービスでも、今年は国際機関応募者のAI利用が一般化したためか、今まで多数だった応募書類添削依頼が激減。その代わりキャリアアドバイス、模擬面接、テスト準備サポート依頼が顕著となった。

このように2023年は多くの面で大きく、かつ深い変化があり、それらの影響の波も長く続きそうなのが特徴。

辰年である来年が、干支どうり知識の獲得やスピリチュアルな成長を促進する年となり、平和が促進されることを期待したいものだ。

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COP28

COP28がドバイで11月30日から12月12日まで開催中。190カ国以上が参加し、地球温暖化対策として二酸化炭素排出量抑制や途上国支援を議論する。

COPとは気候変動枠組条約(UNFCCC)の下で1995年から年次開催されている気候変動に特化した国連会議。毎年開催され今年で28回目。

最も注視すべきは、COP21のパリ協定で、気温上昇を1.5℃内に抑えることに、各国が同意したこと。同協定は、温室効果ガスの排出削減と気候変動適応への対策を明確にすることを各締約国に求める「国内決定貢献(NDC)」を定めた。

今会議の注目は第1回「グローバル・ストックテイク(GST)」というNDCを検証する枠組み。各国目標と温暖化対策の進捗(しんちょく)への、初チェックがされる。

検証のたたき台となる国連の報告書は9月に発表され、各国が二酸化炭素(CO₂)排出削減に十分な進捗を遂げていないと指摘した。UNFCCC事務局のサイモン・スティル事務局長は「COP28が明確な転換点とならなければならない。各国政府は気候変動に向けた取り組みを強化すると約束するだけでなく、それをどのように実現するかを詳細に示す必要がある」と強調。

国連環境計画(UNEP)は今月20日に発表した報告書で、各国の課題は膨大なものになると予想。2030年までに気温が2.5~2.9度上昇するという現行シナリオを避けるためには、同年までに排出量を42%削減する必要がある。UNEPによると各国の削減目標と国内政策にはズレがあり、化石燃料の上位生産国は、2030年に現在よりも多くの石油・ガス・石炭を生産する計画だと指摘。

また世界気象機関(WMO)は今月15日、地球温暖化の原因となるCO₂やメタン、亜酸化窒素を含む温室効果ガスの2022年の排出量は過去最高と指摘。今年の気温上昇はすでに危険なほど1.5度目標に迫っており、5年以内にこれを超える可能性が「高い」と予測した。

一方で希望的な要素もある。エネルギー転換技術に対する世界の投資は、2022年に1兆3,000億米ドルと過去最高を記録。国際エネルギー機関(IEA)は今年世界の再エネの増加量が過去最多になると予測。また石油・ガスの主要生産国であるドバイがCOP28議長国を務めることで、OPECの協力も期待できるかもしれない。

気候変動のよる災害や異常気象が相次ぐ中、どう脱炭素化を加速するか、どう国際社会が企業や公共団体と協調して変革を実行するのか注目される。

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国際機関応募とAI

前回も触れた国際機関採用プロセスとAI。今回は応募者の観点からの話題である。

AIを利用して履歴書やカバーレターを作成する応募者は激増している。空席に合わせ、英語の間違いのない書類を即座に作成できるところが魅力だ。AIが作成した書類のおかげでスクリーンされる可能性は、以前の応募書類より高くなるかも。ただし、応募者全員がAI利用者であればもとの黙阿弥といえる。

スクリーン後によく行われる筆記テスト。ここで応募者がAIを利用してエッセイ等を作成するのは、採用側にとって頭の痛いところ。いくら禁止しても、より質の高いエッセイを目指して応募者がAIに走るのは想像できる上、コントロールは難しいからだ。

現在のところ、国際機関独自の専門分野に関する質問に正確に答えるにはAIもデータ不足かもしれない。だが大抵の質問に答えは見つかる筈であり、情報も将来充実してくるだろう。

機関によっては答えを書く時のデスク状況を録画させ、インターネット検索していないかチェックしている。またAIで書かれた文章かどうかを分析するアプリや盗作チェッカー使用、人間が念入りに読み込む、など色々対策はある。

だが時間も手間もかけ判断を下しても100パーセントのコントロールはできない。AIの作った文章の長々しさや、不自然さを調整すれば、あたかも応募者が自分で書いたような自然な文章にも加工可能である。

応募者のAI使用に、国際機関が今後どういう対策をたてていくかが注目される。例えば筆記テストにしないで、自動録画で専門分野の課題にすぐ答えさせるようなツールを使用するとか、応募者に短い動画を作成させるとか、AIを利用することのできない環境での選考が必要となるだろう。

色々な分野で静かな革命を起こしているAI。国際機関のスクリーニングや面接にも、まだまだ利用される可能性はありそうだ。

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採用過程とAI

AI は採用プロセスに重大な変化をもたらした。国際機関でも例外ではない。応募書類のスクリーニング、候補者データの分析、面接特にスクリーニング面接や、適正検査等、AIの出番は多い。

面接やアセスメントエクササイズの日程調整、スタンダードなメールなど、採用プロセスはルーティーン化しやすく、AI採用で効率性、公平性をあげ、エラーを防げる。将来はもっと使用範囲が広がると予想される。

現在一番使用されているのは最初の書類選考とポスト適格者サーチであろう。担当者のバイアスが入ることなく、的確に速やかなスクリーニングができるのが魅力。コスト削減の可能性もある。

ただし採用過程全部をAIに任せることはできず、あくまで補助。とくに最終面接では応募者の熱意や組織との文化的フィットなど、人間でないと判断できない要素が多い。

また過去のデータ蓄積量が少ないと、精度の高い判定は難しい点やAI判断基準がどう組み込まれているか不明な場合等、まだ手探りの課題もある。

今までの国際機関の採用過程は、応募者にとって印象の良くないものだった。まずリクルートメントに時間がかかりすぎる。また結果の連絡がすぐ来ないことや、質問があっても誰も答えてくれないこと等サービス度は低い。これらがAI使用で大幅に改善されれば、応募者側にも特典があるというもの。

応募者としてもAIを活用して競争力をあげたいもの。例えば応募書類の出来具合をチェックしたり、キーワードを入れたりしてスクリーニングに備えると良いだろう。カバーレターも同様に、書類考査を通過するように吟味する。キャリア国際機関の支援サービスも利用してほしい。

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