国際連盟の主導で初の捕鯨取締条約がジュネーブで締結されたのは1931年。それから約1世紀が経った今、日本の捕鯨は瀬戸際に立たされている。
国際捕鯨委員会(IWC, 加盟国88)の商業捕鯨モラトリアムが発効した1986年以来、商業捕鯨は禁止されている。ノルウェーとアイスランドが異議や留保をして商業捕鯨を続ける一方、日本は長い間「科学的研究」目的であると主張し、モラトリアムを回避してきた。
だが国際司法裁判所(ICJ)は2014年、日本の南極での捕鯨活動に有罪判決を下した。判決を受け、日本は南極海での調査捕鯨を中止したが、2019年にIWCから脱退し、領海と排他的経済水域(EEZ)での商業捕鯨を正式に再開した。
IWCの脱退後も、日本には環境や海洋生物を保護する義務がある, というのが国際的見解。海洋環境問題を専門とする国際弁護士、マルゴシア・フィッツモーリス氏は「日本は国連海洋法条約(UNCLOS)の加盟国であり、海洋哺乳類の保護に協力しなければならない」ため、データの共有や環境影響評価の実施などが義務付けられるという。
2023年に採択された国連公海条約は、国の管轄権外にある海洋の保護を目的としている。フィッツモーリス氏は、2025年に発効予定の同条約は強力な拘束力を持つので「もし日本が領海を越えて鯨を捕獲すると決めた場合、国際的な反発を招くだろう」と予想。ただし日本が捕鯨の範囲を公海にまで拡大する可能性は低いそうだ。
2023年時点、世界最大の捕鯨国は年間500頭を捕獲するノルウェーで、日本の300頭が続く。3番目はアイスランドで24頭。国内での鯨肉消費は、1960年以来下降をたどっている。
環境NGO「シー・シェパード」創設者のワトソン氏は、7月21日にグリーンランドでデンマーク当局に逮捕された。米国・カナダ両国籍を持ち、NGO「グリーンピース」の共同創設者でもあるワトソン氏は日本から告発されている。日本の捕鯨船に悪臭弾を投げて損傷させ、乗組員を負傷させた罪であり、日本では最長15年の懲役刑を受ける可能性がある。
ワトソン氏の逮捕以来、世界中で解放を求める声が上がっている。8月6日、ジュネーブの国連欧州本部前広場で、40人ほどがプラカードを手に「ポール・ワトソンを釈放せよ」とシュプレヒコールを上げた。同15日、デンマークの裁判所は環境活動家のワトソン氏の勾留を9月5日まで延長すると決定。ワトソン氏は果たして日本に受け渡されるのだろうか。もしそうなれば、日本の捕鯨への風あたりはますます強くなりそうだ。