イスラエル国会は10月28日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のイスラエル国内での活動を禁じる法案を賛成多数で可決。UNRWAは昨年10月のイスラエル軍とイスラム主義組織ハマスとの戦闘以来、パレスチナ自治区ガザでの人道支援を担っている。
イスラエルはUNRWAの職員が、戦闘の発端になったハマスによるイスラエルへの奇襲に関与したとして、解体を求めていた。ネタニヤフ首相はX(旧ツイッター)で「テロ活動に関与した職員は責任を負わなければならない」と投稿し、法案の正当性を強調した。
UNRWAはアラブ・イスラエル戦争で住居や生計を失ったパレスチナ人を救済するため1949年、暫定的に設立された。ヨルダン、シリア、レバノン、パレスチナ自治区に住む560万人を、医療・教育・人道政策などの分野で支援している。イスラエル軍の攻撃で少なくとも190万人が避難生活を送るガザ地区では、UNRWAが人道支援物資の配布のほか診療所を運営するなど住民の医療も支えている。
国連安全保障理事会は30日、報道機関向け声明を出し、イスラエル国会が28日に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁じる法案を可決したことに「重大な懸念」を示し、UNRWAを「解体または縮小しようとするいかなる試みにも強く警告する」と表明。
安保理はまた「UNRWAはパレスチナ自治区ガザでの人道支援の要」であり、代替機関はないと強調。イスラエル政府を名指しして、ガザでの人道支援促進の「責任を果たす」よう求めた。声明は全15理事国の全会一致。イスラエルの後ろ盾である米国も法案には否定的だ。
国連とイスラエルの関係はもともと良くないが、現在は悪化する一方。UNRWA職員とハマスに関し、今年4月の国連報告書が組織の中立性を確定したが、イスラエルは今回の措置をとった。今回の安保理の声明も無視される可能性は大きい。
UNRWAのイスラエルでの活動が禁止されれば、ガザでの人道活動は危機的状況に陥り、イスラエルの占領下で暮らす数百万人のパレスチナ人にとっては大打撃。このままいけば法案実行まであと90日たらずとなる。