人道支援の展望

第2次ドナルド・トランプ政権の誕生後、アメリカは人道支援費を大幅に削減。これを契機に、他のドナー諸国も次々と対外援助の見直しや削減に動き始めた。

現在、世界の人道支援の約65%は、米国、ドイツ、欧州連合(EU)、英国の4カ国・機関が担っている。日本は2024年、人道支援総額3482億ドルのうち約12億ドルを拠出し、全体の3.5%を占める7番目のドナー。

トランプ政権の予算カットに続き、英国は2024年2月末、対外援助予算を国民総所得(GNI)の0.5%から0.3%に削減することを発表。ドイツも新連立政権のもと、3月の連立協議で国内総生産(GDP)比0.7%という援助目標の放棄を表明した。

新型コロナウイルスのパンデミックやウクライナ戦争による国防費の増加を理由に、フランス、ベルギー、スウェーデン、スイスなども人道支援・国際協力関連予算の縮小に踏み切っている。

こうした中で、対外支援を拡充している例外的な国もある。日本は支援削減の流れに逆らい、UNICEFなど国連機関への拠出を継続・拡大。ノルウェーも、米国の資金カットによって影響を受けたウクライナやNGO支援を強化しているが、何十億ドル規模である不足分を埋めるには到底足りない。

米国の資金的空白を補える存在として、中国や湾岸諸国(アラブ首長国連邦、サウジアラビアなど)が考えられる。湾岸諸国はここ数年、国連人道支援機関への有力なドナーとなっているが、その支援は主にイエメンなどアラブ連盟・イスラム協力機構加盟国への地域的支援に偏っている。

国連の人道支援は、国籍、宗教、性別を問わず、最も支援を必要とする人々を公平に援助するという「公平性の原則」に基づいている。また人権の尊重、環境・気候保護、民主主義の促進といった条件も伴い、複雑で効率性に欠けると見られる場合がある。

中国は不動産バブルの崩壊による経済停滞で不安定要因を抱えているだけでなく、その対外援助は国連を通じた多国間支援よりも、二国間での影響力確保を重視する傾向にあり、将来国連援助を促進するか不明。

近年、民間セクターの財政的貢献への期待も高まっているが、その参入は国連援助とは必ずしも相いれない。民間企業は、戦争下にある地域や見返りのない投資には消極的であり、結果として人道支援の倫理原則が後退する懸念もあるからだ。

米国の援助削減によって生じた資金の空白を埋めるのは、なかなか難しそうだ。

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