
プラスチックによる環境汚染の防止に向け、初めてとなる国際条約案をまとめる政府間交渉委員会が8月5日からジュネーブで始まる。170カ国の代表が集まり、法的拘束力のある内容をまとめる予定。
世界では年間4億トン以上のプラスチックが生産され、半分は使い捨て。リサイクルされるのは1割に満たず、年間1,100万トンが湖や海に流れ込むか、マイクロプラスチックとして生態系や人間の体内に浸透する。一人あたりの年間マイクロプラスチック摂取量は、5万個以上という。
OECDの報告書では、プラスチック生産量は2040年に2倍、2060年に3倍に増え、汚染はさらに深刻化すると予測されている。
この問題に対応するため、2022年の国連環境総会で、2024年末までに国際条約を合意する歴史的な決議が採択された。条約は生産規制や廃棄物管理など、プラスチックの全ライフサイクルが対象。
しかし、合意は難航している。2024年12月の韓国・釜山での会合で決着するはずだったが、合意は先送りされた。ノルウェー、ルワンダ、日本などは2040年までの生産削減を主張するが、サウジアラビアやロシア、中国などの産油国・プラスチック生産国は生産規制に反対し、廃棄物管理にとどめたい考え。また、釜山会合には化石燃料・化学業界のロビイスト約220人が参加し、交渉を妨げた。
健康専門家は、プラスチックが健康に及ぼす影響を条約に盛り込むよう求めている。WHOも「人の健康とクリーンな環境は密接に関わる」と指摘。プラスチック添加物や化学物質はホルモンかく乱や発がんリスクを高め、糖尿病や心血管疾患等にも影響する。
人権専門家は、クリーンで健康な環境への権利を条約で保障すべきとし、子どもや労働者、先住民などが被害を受けやすいと訴える。
プラスチックの生産と消費の持続可能な削減、危険性化学物質の制限、バリューチェーン透明性の向上、製品設計の改善などがプラスチック汚染根絶の鍵だろう。ジュネーブ会合での合意を期待したいものだ。






