酷暑と屋外労働

今年の日本は130年ぶりの猛暑に見舞われた。韓国や中国、イギリス、アイルランドなどでも観測史上最高の暑さが記録され、中東では50℃超、ヨーロッパでは40℃超の日が続き、森林火災も頻発。年平均気温は世界・日本ともに上昇傾向にあり、今世紀末にはさらに数℃の上昇が予測されている。

炎天下での労働は深刻なリスクであり、ILOは毎年24億人以上が過酷な環境で働き、2200万人以上の負傷、1万9000人の死者が発生していると警告。暑さは健康だけでなく生産性にも直結し、暑さ指数(WBGT)が20℃を超えると1℃上昇ごとに2〜3%の低下を招くとされる。

日本でも状況は深刻だ。厚労省によれば熱中症による労災は増加傾向にあり、特に屋外作業で目立つ。このため2025年6月から労働安全衛生規則が改正され、WBGT28以上や気温31℃以上の環境で作業する事業者に、熱中症リスクの早期報告体制づくりが義務付けられた。

WHOとWMOの共同報告書(8月22日付)によれば、世界人口の半数が猛暑の影響を受けており、とりわけ途上国では貧困の悪化が懸念される。裕福な国では冷房や屋内作業で暑さを避けられる一方、低所得地域では「健康か生計か」という二択を迫られる現実がある。これが不平等を拡大させ、貧困削減の取り組みを後退させかねない。

WHOとWMOは、雇用主・労働組合・自治体が協力して職場の猛暑対策を進める必要性を強調。人口の大半がインフォーマルセクターで働いているアフリカでは公的保護が行き届かないため、意識向上は国家計画と同じくらい重要だと指摘した。

報告書は熱中症対策をSDGsの「貧困撲滅」「健康増進」「働きがいのある仕事」「気候変動対策」と結びつけている。猛暑から労働者を守ることは、経済やサプライチェーン全体を守ることでもある。気候変動が突きつける課題は、今や職場の安全と社会の持続性そのものに直結している。

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