
国連の予算危機の中、アントニオ・グテーレス事務総長 は 3月、コスト削減を中心に組織の効率化などをめざす改革案「UN80」を発表した。
その目的は、国連活動の効率化と改善の領域、マンデートの履行状況の見直し、構造的な変革とプログラムの再編成ついての提案を、加盟国に出すこと。提案は今年9月に用意される26年予算と、27年予算に反映される。
グテーレス氏は5月12日、改革案の検討状況を加盟国に説明。国連事務局における部門の統廃合や、国連で最も維持コストの高いニューヨークとジュネーブの一部業務を物価や人件費の低い都市に移転する案を検討中と発表した。
このようにトップダウンの抜本的な構造改革案が検討されており、国連職員は移住や失職を強いられることに不安を抱いている。
ニューヨークとジュネーブからの移転可能性に危機感をいだくのは、職員だけではない。地域と国に名声と大きな経済効果をもたらしている国際都市ジュネーブの地位が弱まれば、スイスが失うものは大きい。
ジュネーブには、国連欧州本部など大規模なインフラがあり、加盟国193カ国のうち183カ国が外交使節団を派遣。多数のNGO、大学、民間企業も拠点を置く。国連にとって利点の多い都市であり人道支援、保健、平和構築、気候変動といった世界の懸念事項が議論される。
数ある機関がジュネーブに拠点を置くのは、国際都市ジュネーブの「エコシステム」の一部になりたいという理由から。ジュネーブがただちにグローバル・ガバナンスの中心地としての地位を失うとは考えにくいが、将来維持コストの低い国に、財務、IT、人事などのバックオフィス(事務管理部門)を置くことは十分に可能。
スイス政府は5月初め、2025年に国連児童基金(ユニセフ)、国連女性機関(UN Women)、国連人口基金(UNFPA)へ計3900万フラン(約67億7700万円)を拠出すると発表。拠出を更新することで、国際都市ジュネーブに有利に働く強いメッセージを送るという。






