今回はアドバイザー春氏の投稿です。
国際公務員制度はその萌芽を19世紀半ばに成立した各種の専門・技術的な行政協力にみることができる。列強どうし、戦争を繰り広げる反面、産業革命以後、国家の枠を越えた協力が必要とされてきたからだ。帝国主義ヨーロッパで発達したこれらの組織は国際行政連合とよばれ万国電信連合、万国郵便連合等がある。これらの行政連合の職員は国家権力からの圧力に屈せずえこひいきなく任務を遂行することが期待され、「勤務する官僚組織にのみ、したがってその組織を設立した国際社会にのみ忠誠を誓う」という国際公務員のコンセプトの原型をなす。
このコンセプトが国際連盟、国際連合、そして各種の専門機関へと継承されてきたわけだが、その裏には、国際公務員の身分保障という問題がある。
国際機関のための特権免除条約は、国際公務員に外交官並みの特権と免除を認め、いずれの国家に拘束されることなく組織と国際社会のみに忠誠を尽くせる立場を作ろうとしたものである。反面、国際公務員は身分保障や保護を本国から受けることができず、国際機関職員の雇用契約問題は勤務地の労働法にも準拠しない。国際機関の事務局長は最高責任者として事務局の運営を任されており、加盟国も口を挟めない。事務総長の絶対的な人事権は、どの上司でも事務総長の名において行使することができ、人事行政に関して間違いも起こるわけである。
国際公務員という新しい人種の身分保障問題は、国際連盟の設立当時すでに予見されており、国際連盟行政裁判所が創設されている。現在はILOの行政裁判所のほかに国連と世界銀行が行政裁をおいている。専門機関はこれらいずれかの行政裁判所の管轄権を受諾している。
1949年設立以来、行政裁判所はあらゆる種類の訴訟を審議してきたが、契約更新関係が大多数で、ほかに男女差別、懲戒処分の再審査、などが主。三つの裁判所の判決を合計すると2000件以上である。それぞれの裁判所のスタンスも微差があり、労働者の権利擁護のため創立されたILOは組織柄か、行政裁判所の判決はいささか労働者寄りである。国連行政裁判所はどちらかというとマネージメントよりの判断を下すと評価されている。
行政裁判所に行く前に組織内で解決できるよう各機関とも行政不服審査委員会や仲裁人、オムブツマン等の制度を備えている。問題の最初の相談口として、信頼できる同僚、上司、ソーシャルアドバイザー、組合等の利用も考えられる。
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