ユーロビジョン・ソング・コンテスト

5月19日テルアビブでユーロビジョン・ソング・コンテストが開かれた。この国別対抗歌謡祭、国際関係や文化的多様性、果ては参加国の経済、政治事情まで反映していてなかなか興味深い。

ユーロビジョン・ソング・コンテストは、欧州放送連合加盟放送局によって1956年以来毎年開催されている。世界的にも長寿のテレビ番組で視聴者の数も世界一との由。「ユーロ」と呼称されるが、地理的にヨーロッパである必要はなくイスラエルやオーストラリアも参加。今年は前回優勝者の出たイスラエルで41カ国のアーティストが準決勝、決勝を争った。

審査員票半分、視聴者票半分の合計で順位が決まるが自国のアーティストには投票できない。グローバル化を反映して、一時は殆どの参加者が英語で歌っていたが、最近は個性化を目指し、母国語や架空の言葉で歌うケースも。高得点を目指した無難な王道ポップとショー要素の高い振り付けが大部分だが、差別や女性問題を扱ったメッセージ性の高い歌も増えている。

投票には各国間の政治的、地理的、歴史的関係が微妙に反映。一部の国々は互いに票を入れたり、文化や言語圏の近い隣国に投票したりする。祖国を離れて暮らす移民や少数民族は、居住国(自国)への投票はできないが、出身国に投票するパターンも多い。

経済面もコンテストに影響。欧州放送連合の主要な資金拠出国であるイギリス、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアは自動的に決勝進出できる。歌手にとっては、コンテストでの成績は売り上げアップに繋がるが、出身国にとって勝利は痛し痒し。優勝すると次回の開催国となり莫大な予算がかかるからだ。

ゲスト出演マドンナのバックダンサー2人は手をつないで登場し、背中にそれぞれパレスチナとイスラエルの国旗をつけていた。またアイスランド代表のグループ、Hatari(ハタリ)は得点発表の際、パレスチナの国旗がデザインされたマフラーを広げ、Vサイン。政治的なイベントではないコンテスト場で、世界中にアピールしたハプニングとなった。

優勝はバラード「Arcade」を歌ったオランダ代表のダンカン・ローレンス。2016年のカミングアウト以来、バイセクシュアル(両性愛者)として寛容と理解を呼び掛けてきた。このようにエンタメ目的のソングコンテストであっても、時代の背景を写し様々な課題を投げかけている。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

Leave a Reply