赤十字国際委員会

赤十字国際委員会(ICRC)は国際協定や規約から正式な地位と人道的役割を与えられた、唯一無二の国際人道支援組織。1863年の設立以来、ノーベル賞を3回受賞。国際人道法の促進と保護を目的として幅広い活動を展開している。

知名度も財政も申し分なかったICRCだが、今160年の歴史で最悪の危機に直面している。2023年の活動資金として27億9千フラン(約3900億円)の支援を求めていたが、任意拠出金が集まらず、予算を4億3000万フラン削減せざる得なくなったのだ。

これを反映し、全職員2万2700人のうち退職者も含め1800人の解雇が迫られている。また、国内外の350カ所にある事業所のうち、少なくとも20カ所が閉鎖予定。援助プログラムにも縮小や中止が見られる。

ロバート・マルディーニICRC事務局長によると、ICRCが抱える最も重要な活動10件のうち、資金調達の見通しが前向きなのはウクライナのみ。他のすべての活動(アフガニスタン、シリア、イエメン、南スーダン、ソマリア、イラク、コンゴ民主共和国、エチオピア、ナイジェリア)は資金調達が困難になっている。

ジュネーブにある本部の職員1400人のうち35人が解雇される予定との旨。これに対し、2500人の職員が匿名の書簡で経営陣に抗議した。書簡は過去10年間に予算と人員が急増したことを批判し「予算の変動」についての説明を訴えた。また複数の職員は「武力紛争の犠牲者の保護や捕虜の訪問、行方不明者の捜索が基本的な使命だったはずなのに、実際は人道支援活動が増えている」と証言。

カルボニエ副総裁は「主要ドナー国自身が大きな財政的制約を抱えているため、人道支援部門全体が大きな変化に直面している」と指摘し、経営陣の責任を否定。ICRCは他の団体と同様、各国の財政難やインフレ、さらにはウクライナ戦争により世界レベルで人道資金が枯渇していることの犠牲者だと主張した。

かつてない財政危機に見舞われ、新しい活動戦略を模索中の赤十字国際委員会。活動範囲の拡大化や経営方法、最高幹部の給与や退職金への批判も多い。先見性、透明性をもった活動や予算の見直しが期待される。

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