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民間企業の経験が優遇される職種

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国際機関のポストに応募するときは学位と職務経験が同一分野であることと、経験が対象ポストの関連分野でかつ、国連に類似した環境で得られたものである点が重視される。そういう意味で、公共事業での国際的経験例えば、官公庁関係、在外公館調査員、派遣員、JICA、海外青年協力隊、NGO, NPO等の職場経験が望まれる。また、国際機関でのインターン、ボランタリー、短期採用やコンサル、技術協力専門家、あるいはパートナーシップや会議、タスクフォース、ネットワーク等に参加といったような国際機関との接点があれば有利とも前述した。開発関係ポストであれば、フィールドでの経験も必要となる。

ただし、職種によっては、民間企業で経験を積み最先端の知識、技術をもっている外部の者が優先的に選択される場合がある。進化が早く知識や技術投資コストの高い分野で、一般に国際機関より民間企業のノウハウが進んでいる職種が対象となる。プライベートセクターの経験をもつ応募者が、内部職員や国連に類似した環境出身者より圧倒的に有利になるわけだ。

その分野の典型的な例はIT関係ポストだ。日進月歩のこの分野では専門職には珍しく、学士で経験年数の少ない部外者の採用が頻繁にある。その他では投資バンキング、会計監査、エンジニア、医療関係といった職種も外部調達に頼ることが多い。とくに世界的に名の知られたIT企業や大手コンサルティングファームでの経験がある応募者は有利と言える。また医師や妊産婦健康管理専門家は供給不足と言われており、とりわけ短期緊急採用はチャンスが高いと考えられる。

その他の職種で民間企業の経験が重宝されるものに、人事、物資調達やロジ、財務、法律、コミュニケーション等がある。民間のシンクタンク、多国籍企業、開発コンサル、国際法律事務所、銀行などでの経歴が生かせるというものだ。ただし、これらは国際機関に類似した環境での経験も合わせてもっていた方が、多数いる候補者との競争には有利だろう。ITや医療関係ほど最先端の知識や技術でなくても通用することと、ある程度内部でも能力開発が可能なこと、国際機関独自のやり方があることがその理由とである。

応募やキャリアについてのアドバイス希望者はこのサイト、リソースセンターのコンタクトフォームを利用していただきたい。

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MBTI 性格診断テスト

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性格診断テスト、「Myers–Briggs Type Indicator(通称MBTI)」は、20世紀初頭の分析心理学の父、カール・グスタフ・ユングが生み出した心理学的類型論をもとにキャサリン・クック・ブリッグスと娘のイザベル・ブリッグス・マイヤーズによって開発され初版が1962年に完成した。以来改版を重ね現在50カ国以上で使われており、世界で最も利用されているパーソナリティテストと言われている。

MBTIは、一人ひとりの性格を心の機能と態度の側面から「ものの見方(感覚・直観)」「判断のしかた(思考・感情)」及び「興味関心の方向(外向・内向)」と「外界への接し方(判断的態度・知覚的態度)」の4 指標で表し、16 タイプに分類するところから日本では「16性格診断」という名で知られている。自己理解・他者理解の他リーダーシップやマネジメント研修、チームワーク促進、キャリアカウンセリング等にも使えるという効能書きのせいか国際機関のトレーニングでも当時は随分使われていた。しかし自己理解・他者理解が深まったという印象を与える他に何の効果があったかは疑問である。

MBTIは自己分析をパターン化するという意味でとても興味深いが、自己の性格を16種に分類する課程は科学的、客観的とは言えないだろう。心理学者でもない母娘によって開発されたという点もよく批判の対象になっている。組織の人材管理側からみれば能力開発、キャリアプラン、採用等に結果は利用できない。私もトレーニング担当官として何度かやってみたが、そのたびに違うタイプの結果がでるのも困りものである。

しかし国際機関、企業などで頻繁に使われているのは事実だ。実際リーダーシップ等の研修プログラムの中ではこのテスト分析が一番人気があり、盛り上がった。またこの分析はマニュアルワーカーからダイレクターまで広い層に受けるところも魅力だろう。例えば採用でよく利用されるビッグファイブというテストはもっと科学的だが、結果は要素ごとに傾向がパーセントで出るだけで、他人と比較したり会話の話題にしたりはできない。

個人的な意見だが、この性格判断は血液型判断や占星術のようなものにマネジメント的な箔をつけて、一見科学的にしかし、一般向けするよう記述したという感じだ。ビジネス用語と4文字のアルファベット、そしてどのタイプにも一貫している肯定的な表見が人気の秘密だろうか。また正式なものはMBTI認定ユーザーが当人と話し合いながら、タイプを確定することになっており信用度を高める効果十分だろう。たくさん出回っているMBTI 派流テストに至っては、4文字のアルファベットの他にどのタイプにも分析家、外交官、建築家というような素晴らしい名前がついており、ますます自我を満足させてくれる。

人間の性格を明確に定義づけ分類する方法は昔から追及されてきたが、その複雑性、流動性のゆえ、行動をパターン化して予測する完璧なツールというのは存在できないだろう。市場に星の数ほどある性格判断テストだが、分類して比較ができ信用もあるMBTIは魅力的なツールの作り方と巧みな市場戦略で成功した例と言える。

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P1, P2ポストへの応募

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国際機関、とくに国連では専門職ジュニアレベルでの就職がとても難しい。このレベルに各当するのはP1, P2そしてNO-A 、NO-B(National Professional Officer、現地採用)だろう。P1または NO-A には修士プラス一年、 P2 とNO-Bには修士プラス専門分野二年の経験が必要とされる。大学を終えて2年の経験をもった若者は多数なのでこれらの空席への応募者数は他のグレードに比べてとても高い。

応募者数と対照的にポスト数は少ない。まずNO-A、NO-Bはフィールド事務所所在地の国民のみの採用で機会は限られている。P1, P2の空席公募は稀である。2013 年7月より2014年6月の国連専門職職員Pレベルの任命件数(新規採用、契約更新を含む)は1613件で、このうちP1は24件P2は388件。P3が708 件P4349件P5 144件となっている。

国連の衡平な地理的配分の原則適用ポスト(通常予算で人件費が支弁されている言語職以外の専門職ポスト)P1 P2は競争試験によって埋めることが義務ずけられている。同じ時期に任命された62名のP2のうち16名が国別試験(JPO)46名がYPPの競争試験を通ったものである。(P1は皆無)。

このようにP2の空席にはまず競争試験を通過したロスター登録者が採用される。核当する登録者がいない場合や、地理的配分対象外のポスト、短期採用ポスト等に限ってのみ公募されるので数は少ない。そこに、短期採用の職員やコンサルタント、すでにP2だが仕事や勤務地を変えたい職員、現地採用から国際公務員のステータスになりたいNO-AやNO-B等が応募することになる。これらの職員はすでに内部の知識と経験を持ち合わせているので、外部の者が競争に打ち勝ち採用される可能性は非常に低い。

以上を考慮した場合、JPO選考試験は国際機関でキャリアを始める近道であることを再認識できると思う。JPO試験を受けられない場合は、各機関の若手職員採用プログラム、その他の競争試験や採用ミッションを受験するほうがP1P2空席に個別応募するよりチャンスはあるかと思われる。またはもう少し経験を増やして、P3のポストで勝負するほうが雇用の可能性は広がるだろう。

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プレゼンターのパラドックス

General Assembly Seventieth session: High-level Thematic Debate on Achieving the Sustainable Development Goals Opening ceremony and Plenary segment: Action at all levels: National implementation Mr. Forest Whitaker, SDGAdvocate,Actor andActivist

長くて委細にわたる履歴書が効果的とは言えない。一貫性と簡潔性に欠け、空席に関係ないスキルや資格、興味等にも及ぶものはインパクトが薄い。関係が少しでもありそうな情報は全て入れ採用の可能性を高めたいという願望はほぼ直感的なものだろう。だがそれこそ逆効果だ。応募者は「プレゼンターのパラドックスPresenter’s Paradox」という落とし穴にはまることになる。

心理学者のキンバリー・ウィーバー、スティーブン・ガルシア、ノーバート・シュワルツらは2011年に、「プレゼンターのパラドックス」を例証してみせた。被験者にiPodとカバー、そして音楽を1曲無料でダウンロードできる特典つきパッケージとiPodとカバーだけのパッケージの2種類を提示しそれぞれへの支払い意思額を調べた。被験者らが示した意思額の平均は、ダウンロード付きのパッケージで177ドル、ダウンロードなしのパッケージで242ドルだった。価値の低い無料ダウンロードをおまけしたために、パッケージの知覚価値がかえって65ドルも下がったのである。

一方で別の実験グループにはマーケティング担当者(サービス提供者)になってもらい、上記2つのパッケージのうちどちらが消費者にとって魅力的だと思うかと尋ねた。結果、被験者の92%が無料ダウンロード付きのパッケージに魅力を感じたということだ。

このように、提供側の立場に立つと「多いに越したことはない」と思うのに、消費者の立場ではそうではない。これは国際機関へ自分自身を売り込む時の応募書類にも当てはまる。

空席に応募する時、自分の数ある実績を全て並べておけば、雇用側がそのひとつひとつを足し算してくれるだろうと、応募者は普通考えるだろう。例えば学歴、職歴、ボランタリー活動、言語、出張の経験、海外在住経験、大学での研究のテーマ等等、全体に加算されるなら多いほどいいはずだという心理である。だが実際には、単に多いだけでは雇用側によい印象を与えない。採用側は、候補者の学歴や資格職歴等を足し算しているのではなく全体をひとつのパッケージとして評価しているからだ。非常に好ましい学歴や有益な資格もそれほどでもない言語能力や、ポストに関係のない学歴や出張などと同列にされると、受け手にとっての魅力が低下したりインパクトが薄れたりしてしまう。

何でもいれたい衝動にかられるときは履歴書の全体像をチェックすべきだろう。パッケージの全体的な価値やインパクトを減らしている要素を捜し、よけいな情報、ポストとの関連性の薄い情報は削ることだ。ただし、これは自分を売り込むという主観性がプレゼンターのパラドックスとも相まってなかなか難しい。実際シンプルで簡潔、かつ関連情報は網羅している履歴書を書くのは大変なことだ。あれもこれも入れたいいう誘惑にかてず、長く委細にわたる履歴書になりがちとなる。こういう場合は第三者にみてもらえばいいだろう。キャリア国際機関でも履歴書添削サービスをしているので利用してほしい。

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履歴書の書き方

Official Opening of the Permanent Premises of the International Criminal Court

大抵の国際機関の履歴書は応募フォームに記入するシステムになっている。一律の形式を使用することで採用判断に必要な情報をむらなく収集できるわけだ。応募者にとっても形式や内容項目の判断に気を遣わずに済む分手軽とも言える。

採用側が300近い応募フォームを短い時間で評価し、ロングリストやショートリストを作る際、読みにくく印象の悪いものは不利だろう。

私の個人的経験からいくと、英語のスペルや文法が間違っているもの、空席広告の記述の大部分をコピーペ―ストしたもの、全体に長く字数の多いもの、職歴等の記述が細かすぎるもの、まったくイメージのわかない仕事内容や成果が不明なもの、関連性の薄い余計なものまで含まれているもの、アクロニムの使い過ぎ、大文字だけで書いてあるもの、逆にi を小文字で書いてあるもの、全くポストに合っていない職歴、といった履歴書は印象が悪いといえる。

では理想的な履歴書とはどういうものか。空席のプロフィールに合ったもの、簡潔で一貫性があり理解しやすいもの、必要な情報はすべて入れてあるもの、内容、文法、スペルに間違いのないものという条件を満たしていれば次のステップまで進める可能性は高い。

履歴書の中で一番大切なのは職歴である。記述の際よく引用されるテクニック(例えばアクション動詞使用、Iの省略、成果の追加)等に加えて重要なのは、空席に記された仕事内容と自己の職歴の合致を強調することだろう。経験は、空席に近い仕事内容で、似たような仕事環境で得られたものであるほど重宝される。同じ5年でも空席に類似した仕事を国際機関やNGOにて、そして空席と同じ地域(例えば開発途上国)で経験していれば、採用後即戦力となると判断されるからだ。

この職歴はドットを使って簡潔に書くとよい。空席広告をみると最初に仕事環境や状況が書いてあり、そのあと大抵ドットを使った仕事の記述がある。この記述部分より履歴書の記述の方が長く複雑にならないようにしたい。つまり最大10ドット前後に絞ることだ。もちろんそれ以下ならもっとよい。UNDP やUNICEFの空席は多いせいか記述の質にバラツキがあり、長すぎる例も多いのであまり見本とならない。開発銀行や専門機関の空席広告の方が管理されていて読みやすく参考になるだろう。空席広告の記述から共通点を見つけ自分の職歴の上部に書いたり、似たポストの表現やボキャブラリーをいくつか利用したりすると効果的と思う。

面接の数は応募した数に正比例するとよく言われる。プロフィールが合っているのに何度応募しても反応のない場合は、履歴書を徹底的に見直したほうがいいだろう。

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「管理職へのキャリア構築」セミナー

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国際機関でのキャリア開発は、機関、上司、本人という3部構成になっている。組織のキャリア開発サポートと上司はキャリア開発の重要な助けである。ただし、国際機関の人材政策でも « キャリアは自分で作るもの »と、個人の最終責任を明確に打ち出している。これからのキャリア開発には、自分の市場価値を常に高めつつ周囲のサポートを利用していく、という態度がより重要となるだろう。

とくに昇進は日本の職場と違って、一生懸命仕事をしたものに自動的に与えられるものではない。国際機関での昇進には戦略が不可欠で、仕事熱心のあまり昇進活動を怠るとるとかえって取り残されたりもする。管理職へのキャリアはまさに計画して積み上げていくものといえる。

ジュネーブ国際機関日本人職員会JSAGは中堅レベルの邦人職員を対象に、「管理職へのキャリア構築」セミナーを今4月に開催した。目的は幹部ポストに必要とされる見識やコンピテンシーについて理解を深めるためで、サイト管理人小島がこのセミナーの講師を務めさせていただいた。

ジュネーブ在住の11人の邦人職員が参加したこのセミナーでは、幹部ポスト(P5、D~)を目指すにあたって重要な要素やステップ、幹部に求められるコンピテンシーなどを説明した。2日程度のセミナーの内容を1時間半に濃縮したのでインタアクテイブにとはいかなかったが、参加者が積極的だったので活発な質疑応答と情報交換ができた。

セミナーのポイントはJSAGのウェブページに掲載される予定なのでここでは触れない。ただし、早く昇進したい人にもっとも必要なものを挙げろといわれたら、柔軟性のある具体的目標、3年から5年で動くこと(2年から4年で準備)、自己の市場価を上げること、情報収集とアドバイスと答えると思う。もちろん他にも重要な点はたくさんあるのだが、昇進を自分の価値観の中心にとらえている職員はロールモデルやメンター、コーチ等を活用し早い時期に軌道を先取りすることを考えるべきだろう。

また自分の仕事に対する意識や価値観はキャリアや人生の節目節目で変わっていくものだ。案外と自分の興味や大切とすることに気ずいてない場合もある。時々は職場から距離をとって、自分が何のために働いているのか、何が大切なのかを見直す時間を作るといいと思う。

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国際機関職場の多様性と包括性

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国際機関の職場環境の特徴の一つに、職員の多様性がある

何しろ100ケ国以上の異なった国籍や文化の背景を持った人々が同じ職場で協力しあいながら仕事の成果を上げていくわけだから、共通語を使ってはいても誤解やすれ違いは免れない。反面意見や考えの違う同僚と議論しているうちに、相互理解が深まったり、斬新なアイデアが生まれたりもする。異文化間グループは効率が悪いが、いったん共通項が生まれれば、逆境に強い臨機応変なチームに変化する可能性もある。

多様性は国籍や文化、民族、ジェンダーに限らず、セクシャルオリエンテーション、身体障害等広い範囲に及ぶ。現在大抵の機関ではpeople from all backgroundsとか diverse workforceと広く定義して空席公募の際に明記している。

またILOのようにage, race, gender, religion, colour, national extraction, social origin, marital status, pregnancy, family responsibilities, sexual preference, disability, union membership or political convictionといった要素で採用に差別されることはないと細かくリストアップしている機関もある。

その機関の多様性、そしてそれを受け入れ生かしていく包括性のレベルを測るために、関連政策や戦略、職員統計の分析等がよく利用される。情報収集分析も大事だが、多様性、包括性を感じるには職場を訪問してみるのが手っ取り早いだろう。VIPの写真に女性の多いところ、オフィスにいる職員が多様で車椅子にのった職員が行き来していたりするところ、ホモセクシャルの職員が普通に扱われているところ等、多様性の推進されている職場は雰囲気がフレンドリーで開放的なことが多い。またそういう機関は大抵人事制度も洗練されていて近代化されている。

多様性、包括性を推進するには時間も予算もかかり、かつ短期には結果が出にくい。また上記したように、多様性に富んだチームは始めは効率性が低い。しかし懐の深い受け入れをする職場には優秀な人が惹かれ集まってくる可能性が高いし、複雑化多様化グローバル化した職務に対し職員が創造性や耐久力を発揮する場合が多い。国際機関は、加盟国の職員を採用し、その国の期待に応えるだけでなく、各国の公務員制度の手本としても職場の多様性、包括性に力を注いでいるわけである。

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カバーレター

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カバーレターは空席に応募する際,履歴書とともに送る文字どうり応募書類の表紙である。国際機関によって、ほぼ無視する、一応読む、カバーレターのみでスクリーニングをすませる等、その重要度はさきざまだ。しかしほぼ全部の機関で義務付けられている。

カバーレターだけではねられてしまうというリスクもある程重要なわけだが、それには理由がある。履歴書は短い散文のような書き方で事実をリストアップしていくので、表現やスタイル等はある程度定まっている。カバーレターではどのように要点をまとめアピール性をだす書き方を一ページに納めるかという能力、書き方のスタイルが顕著に現れるので、履歴書よりある意味で差別化ができる。ドライな履歴書と違い個性を出せるところがカバーレターの特徴といえる。

ではどういう自己PRを少ない語彙で効果的にするべきか。基本的な構成は以下のようなものだろう。まず応募しているポストを明記し、なぜその機関や仕事に興味をもっているかの理由を述べる。それから自分の強みを次に並べ、それらが空席にもとめられているプロフィールにどうマッチしているかを強調する。採用側からみれば空席広告の資格や経験条件をどう満たしているのかを書いているものが一番望ましいのだが、強みの主張だけに終わり、空席広告の条件に対応しているものは案外少ない。最後に面接や就業に関する情報を述べ、担当者に、カバーレターと履歴書を読むために時間を費やしてくれたことにお礼を書くといいだろう。

送る前に内容に漏れがないか、スペルミスがないかなど念入りに確認し、採用側の立場に立って読んだ時、空席条件に合致していると思わせるものになっているかチェックしたい。このサイトでもカバーレターの添削サービスを提供しているので、リソースセンターから問い合わせができる。

最後に作家でありエッセイの名手でもあったジョージオーエルの、効果的で解りやすい英文の書き方法則を引用してみよう。

1.Never use a metaphor, simile, or other figure of speech which you are used to seeing in print.

印刷物で見慣れた暗喩や直喩、その他の比喩を使ってはならない。

  1. Never use a long word where a short one will do.

短い言葉で用が足りるなら、長い言葉を使ってはならない。

  1. If it is possible to cut a word out, always cut it out.

言葉を削れるのであれば、常に削るべきである。

  1. Never use the passive where you can use the active.

能動態を使える時に、受動態を使ってはならない。

  1. Never use a foreign phrase, a scientific word, or a jargon word if you can think of an everyday English equivalent.

核当する日常的な英語が思い付く時に、外国語や学術用語、専門用語を使ってはならない。

  1. Break any of these rules sooner than say anything outright barbarous.

あからさまに野蛮な文章を書くぐらいなら、これらの規則のどれでも破った方がましである。

 

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国連のロスター制度

Presidential elections. Photos from almost all the polling station in Bangui.

ロスターとは、採用プロセスを通じてすでに適格と判断され、直ちに採用可能な候補者のリストを指す。国連だと個別ポストの採用プロセス後、採用されなかった最終候補者がロスターにのる。このほかにも特定のポストを指定しないでロスター作成のために公募し、候補者リストの中から採用していく場合もある。その際は広告にロスター作成という目的が明記されている。この制度は短期間で何人も同時に採用したい場合やYPP、翻訳官の採用等によく使われ、国連だけでなく利用している機関は多い。来日採用ミッションの際、ロスターに登録された邦人候補者も何人かいることだろう。

国連の個別空席公募のロスター制度を見てみよう。特定のポストに応募し面接まで残った場合、選考委員会が承認すればロスターに登録され人事からその知らせがくる。登録後は内部応募者、外部応募者供、将来同じ職種の同じレベルで求人があれば、採用プロセスをやり直さなくても雇用される可能性があるわけだ。例えば政務官のP3にロスターされれば、次の政務官職P3の空席には選考プロセスを経なくても雇用可能となる。雇用側にとっては時間と労力の節約となるし、応募者の負担も軽減されよう。

ロスター登録後は同種同レベルのポストの空席広告が出る毎に知らせがくるので、その都度応募することが必要となる。ここで雇用側が採用したいと思えばその応募者を直ちに選ぶこともできる。ただその可能性は、内部職員でその空席の仕事を実際担当しているものでない限り以外と低い。また選考委員会の審査承認免除とはいえ、ロスター登録済みの部下を選ぶ場合でも動機や経歴についての資料を提出することが義務ずけられており、面接も推奨されている。

ロスターは無期限有効なので2009年以来登録者は増える一方であり、空席によっては30人近くのロスター登録者が応募してくる場合もある。これでは新たに採用のフィルターを設けないと選抜がむつかしく、ロスター登録済みの候補者であっても結局筆記試験や面接を受けることになる。また登録済みの内部応募者がショートリストまでいかない場合、その理由を説明することも関係者にとっては結構大変な仕事である。

採用プロセスを簡素化、効率化するためのタレントプールであったロスター制度が果たして現在その目的にどのくらい貢献しているか疑問になる。ロスターに載りさえすればいつかは採用される、という伝説はもはや化石化していると言えよう。ロスターに登録された場合でも、「ジョブ・アラート」を作成したり、ウェブサイトで定期的に空席広告をチェックしたりしてプロ―フィールに合う空席には自分からどんどん応募するべきだろう。

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キャリアサクセス

国際機関職員のキャリアは,国際政治経済情勢の変化や情報化、科学技術化、グローバル化等に伴う機関自体の構造の変化、役割の複雑化や多様化、地理的条件、予算やポストの変動など様々な要素に影響される。最近の傾向として目立って感じられるのは専門分野の多様化、キャリアの可動性、契約パターンの暫定化であろう。

国連に関していえば、上級管理職レベルのポストはとくに減っていないが競争は厳しくなっている。階層構造が平坦化し、専門職には中間レベルが多いので管理職レベルの空席への応募は内外から多数となる。そして応募者の学歴、職歴が一般的に高くなっているのでよっぽど特殊な仕事内容でない限り、選考基準を満たす候補者は十二分にいる。またロスター制度により、リクルートプロセスを経ないですぐにポストにつける候補者がすでに何人も存在している。雇用側にとっても候補者の差別化はデリケートな作業となってきているといえよう。

また構造改革をへてスリム化した国際機関も多いから、狙っていたポストが消えてしまう可能性もある。新規プログラムに伴う職務も通常予算で賄われるものは減っている。このようにキャリアパスの複雑性、不確実性が高まる中で、昇進を伴ったキャリア開発は以前よりむつかしくなっている。

こういう環境で給料や地位以外に何をもとめてキャリアを積んでいくか、何をもって成功とするかを、自分の価値観に照らして考えてみることが必要だろう。近代化経済成長モデルが生き詰まり経済的尺度で測れない自由や豊かさの見直しが問われる昨今、キャリアパスの概念も上昇を目指す道だけではなく、一人ひとりが従来の外的要因に束縛されないで自由に自分の道を作っていくという方向に変換している。

地位や収入という外的要因だけが判断の基準ではなくなり、キャリアサクセスにはもっと自由で多様な解釈があてはめられる。面白い、楽しい、成長感のある仕事、知的刺激に満ちた職場、自律性、国際社会発展への貢献度、私生活とのバランス等も成功の要素であり、結局は自分のキャリアに対する満足感という内部要因がより重要になってくるだろう。

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