気候変動監視システム

現在、世界中で地球観測技術を活用し、様々な気候変動を監視するシステムが開発されている。気候変動に関連する大気中の物質を包括的に監視することが、緩和に向けたすべての対策・政策の科学的基礎となるからだ。

効果的な気候変動対策のためには、できるだけ多くの種類のグローバル温室効果ガスや関連物質の世界全体、国・地域レベルでの総排出量や平均的な大気中濃度情報が必要となる。

地球全体の温室効果ガスの監視は、24年から世界気象機関(WMO)主導のグローバルな温室効果ガス監視(G3W: Global Greenhouse Gas Watch)が運用。気象観測と同じように大気中の温室効果ガスを観測し、天気予報に似た数値モデルを用いてその解析や予測を行うことを目指す。

G3W は、国連気候変動枠組条約 (UNFCCC) およびパリ協定の締約国が講じた緩和措置が、気候の状態に与える影響を理解するために作られた。

WMO の気象予報と気候分析における国際協力の調整の経験と、1989 年に設立された地球大気監視、および統合地球温室効果ガス情報システム権限下での温室効果ガスの監視と研究における、長年の活動に基づいている。

温室効果ガスを扱う既存の国際的および国内的な活動の多くは、主に研究コミュニティによって運営されており、途上国は資金やノウハウ不足。G3W は、地上および宇宙ベースの温室効果ガス観測とモデリング情報をタイムリーに国際交換できる場を提供する。

この活動は、各国の協力のもとで実施することが前提で、世界有数の観測ネットワークとモデル開発・運用能力を持つ日本が、大きな役割を果たすことが期待されている。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

アクション動詞

JPO公募が始まり、応募書類を書き始める人も多い頃と思う。採用側に アピールする 書類をどう作るか、に注目してみよう。

パワーワーズと言われる単語やフレーズは、職歴や業績を簡潔かつ力強く印象に残すためのもの。応募書類には欠かせないツール だ。

機関独自の価値観や、空席広告のキーワード、職業に独特な業界用語、重宝されそうな 資質などを盛り込み他の応募書類との差別化をはかる。

よく耳にするアクション動詞はパワーワーズの一つ。履歴書では、普通主語を省き動詞から書き始めるが、正確に活動や業績を記述し能力を際立たせる。だがアクション動詞のリストに乗っているもの全てが効果的なわけではない。

アクション動詞の中には使い古され、新鮮味にかけるものが多々。led, organized, managed, supported, improved, motivated などは 繰り返し目にする。日本人が よく使う, involved, assisted, participated, engagedもインパクトいまいち。

ではどういう言い回しなら効果的か。例として、上にあげた動詞をorchestrated, chaired, programmed, operated, guided, initiated, collaborated, facilitated, capitalized, integrated, clarified, remodeled, partnered 等で代用したらどうか。これらは一捻りあり、国際機関のボキャブラリーにも近い。

各機関で頻繁に使われている一般的動詞をある程度リピートするのはやむを得ない。だがそれだけでなく、 ボキャブラリーに変化を持たせ ピッタリの動詞も使っていけば効果的だろう。

印象に残すためとはいえ、経歴や空席に合っていない動詞を使っては逆効果。バズワードのみの使用や、自分でも意味のよくわかってないものを書いたりしても マイナスとなる。アクション動詞をうまく使い JPO応募書類にパワーを持たせたいものだ。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

2025 年度 JPO 試験

今年のJPO 試験募集要項が、外務省 国際機関人事センターサイトで公表された。応募開始は2月3日。

応募締め切りは昨年と同じ3月4日だが、例年日本時間23時59分だった締め切り時間が18時に変わっているので気をつけよう。

外務省枠の場合、外務省の第二考査の結果発表(6月から7月)の後、国際機関との面接があるのが8月以降。結果通知は 10月頃の機関が多いとの旨。国際機関枠も、結果通知はほぼ同じタイミング。

去年は志望先国際機関5つまで記載可だったが、今年は3機関に絞られている。ただし志望ポストが外務省の定めた危険レベル 3 又はレベル 4 でないことを確認した上で申込む。

国際機関枠(UNDP、WFP、OECD、 OPCW、ICAO、WOAH(旧 OIE)、GCF)を選ぶか、外務省枠にするかは希望するポスト、機関によるだろう。国際機関枠だと外務省とは面接する必要がなく、希望機関との面接だけで決定。またライティング課題提出がない場合もある。

一見国際機関枠の方が簡単そうに思えるが、希望機関との面接を通過しなければそれ限り。外務省枠だと第一希望でない機関やポストに再考慮される可能性がある。どちらの枠を希望するにせよ、最初の書類選考は外務省が行い、結果通知は4月下旬。

キャリア国際機関では、応募書類添削、ライティング課題や面接準備の支援と共に、対象ポストの選び方やキャリアのアドバイスも実施。JPO支援サービスはこのサイトのリソースセンターに表示中である。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

新年に向けて

2024年もあっという間に終わり、すでに新年になってから一週間。

イスラエル・ガザ情勢、中東の不安定、またウクライナ紛争など、停戦のめども立たないまま、新たな年を迎えた。今年こそ終結を願いたいもの。

米国のトランプ前大統領は、2025年1月20日に政権に返り咲く。多国間主義を次々と攻撃した前任期中と同じような行動をとるとすると、国連へのダメージが懸念される。

全国連機関への負担額が最も大きい米国は、2023 年総額4640万ドルの28% を拠出。2位はドイツの12% 、日本、中国、英国が5%ずつでこれに続く。今後のトランプの行動は予測できないが、拠出金削減は国際機関の将来に大きな影響をもたらす。

2025年は十二支でいうと「巳(み:へび)」年。「巳」は蛇のイメージから「再生と変化」を意味するとのこと。世界情勢が安定に向かうよう期待したいものだ。

今年もキャリア国際機関を、よろしくお願いいたします。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

国際機関の年末

師走もだいぶ進み、クリスマスと新年の休暇シーズンに入った。

年末は国際機関にとっても忙しい時期。プロジェクトの年度末報告書作成や契約終結、更新などに追われる。大抵の機関では経理決済の時期でもあり、予算や出費の調整、プログラム資金などの処理を要求される。人事部でも職員の契約更新 、休暇届け、待遇変更など休暇前の処理事項リストは長い。

個人レベルでも休日前後の業務調正や、パーティーへの出席、職員同士のクリスマスカードやメールの交換から、部下へのプレゼントなどで多忙となる。祖国の名物料理を持ち寄ったり、民族衣裳を着て出席したりするパーティーは国際機関年末の風物詩でもある。

ここで要チェックは休暇プラン。国外在住者の多い国際機関では長期の休暇を取れるクリスマス、年末年始は故国に里帰りするチャンスだ。同じ部で全員欠席にならないよう調整し、チーフ 代行の指名も必要となる。

喧騒に満ちた年末も24日過ぎにはぐっと静まる。その前に 決済を取れなかった事項は来年まで保留。新しい企画や、人材決定などもこの間据え置きとなる。昨今は経費節約のため、クリスマスから新年まで、建物を閉めてしまう機関も多い。

このように年末は国際機関では慌ただしいシーズン。12月に赴任したり、インターンを始めたりするのは避け、新年から新たな気持ちで仕事を始めたいものだ。

本年もキャリア国際機関を応援いただきありがとうございました。来年もどうかよろしくお願いいたします。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

国連機関を目指すには

キャリアカウンセリング中よく聞くコメントは、「何度もやってるのに通りません。いつになったら採用されるんでしょう」というもの。応募を続けているのに進展がない、という感想はよくあり、歯がゆい思いが伝わってくる。

「もし応募者が対象ポストの要求項目にピッタリ当てはまっているのなら、あきらめずに何度も応募し続けるべき」、が上記のコメントへのアドバイスだ。キャリア支援を通じ数多くの成功例を見てきたが、最初の何発かで正規ポストへの就職に成功する例は稀。

応募で気を付けたいのは募集要項を徹底的に分析し、自己のプロフィールと合致している時のみ応募すること。その場合採用者の目につくよう対象ポスト関連の経験を明確にアピール。カバーレターと履歴書は対象空席に合わせ応募の都度カスタマイズする。

自分の経験とスキルが空席広告と合致していれば、最初のスクリーニングに呼ばれる筈である。このスクリーニングは候補者をさらに絞るためのもので、電話や自己録画面接、筆記試験が主。ポストに合致している場合でも、他の応募者にもよるので、最初の応募からすぐ次のプロセスにいけるとは限らない。根気よく応募を重ねるのがコツ。

スクリーニングを通過すれば、面接官が複数いるパネル面接に招待される。数多い候補者の中からパネル面接に呼ばれるのはごく少数で、3人から多くても10人程度。ここまできたら採用のチャンスはかなり高くなっている。

採用への道ははるか彼方と感じられても、面接に頻繁によばれるようになると採用は近い、というのが模擬面接サービスをやっていての実感。キャリア支援の経験上、とくに10度以上パネル面接に呼ばれた人は、遅かれ早かれ就職が決まると言える。

もう一歩のところであきらめないことが肝心なのだが、色々な事情がありそういかない場合もある。まさに継続は力なり、である。キャリア相談が必要な場合はこのサイトのお問い合わせフォームを利用してほしい。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

トランプ新政権と国連

ドナルド・トランプ前大統領が、米大統領選で勝利し次期大統領になることが決まった。前トランプ政権で苦い経験をした国連は、トランプ次期米大統領が再び多国間システムに挑戦することを警戒している

国連や多国間主義に批判的なトランプ氏は、第一期目では、WHOから脱退する方針を表明したほか、実際に国連人権理事会とユネスコ(国連教育科学文化機関)、パリ協定、イラン核合意から離脱。

また、国連の運営資金における米国の負担が不公平なほど大きいと不満を漏らし、改革を要求した。米国は伝統的に国連への支払いが遅く、国連の22%と27%を占める通常予算、平和維持活動予算の支払いはよく延滞し、国連の年末の資金繰りを厳しくする。

米国が多国間主義に共鳴せず、「米国第一主義」を取る姿勢はトランプ政権に限らない。トランプ時代を引き継ぎ、バイデン政権もWTO上級委員会への新たな判事の任命を拒否し続け、WTOを機能不全に追い込んでいる。

2023年10月の中東紛争の勃発依頼、ガザでは多数の民間人が犠牲となり、イスラエルのネタニヤフ首相は国連やグテーレス事務総長を非難。だがイスラエルを支持するバイデン政権はパレスチナ地区ガザでの停戦を求める安全保障理事会決議に繰り返し拒否権を発動。一部の国際社会の怒りを買っている。

国連が最も心配しているのは、米国が分担金の拠出を減額し、世界保健機関(WHO)や気候変動対策の枠組みであるパリ協定などから脱退してしまうこと。2023年の米国からの拠出金は、国連・関連機関の全歳入の28%を占めた。ドイツは12%、中国や日本はそれぞれ5%だ。米国への依存度は高い。

このように米国は国連システムの最重要アクターである一方、国連批判の急先鋒でもある。国連に敵対的なトランプ氏がどのような政策を出してくるかは未知数だが、国連が痛手をこうむる可能性は大きい。

多国間主義である国連にとって、米国の影響力が減少することは、多国間の力のバランス再編を意味している。トランプ氏が国連分担金を減らして国際協定から手を引けば、中国は国連での影響力を強める願ってもない機会を、手に入れることになる。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

イスラエルとUNRWA

イスラエル国会は10月28日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のイスラエル国内での活動を禁じる法案を賛成多数で可決。UNRWAは昨年10月のイスラエル軍とイスラム主義組織ハマスとの戦闘以来、パレスチナ自治区ガザでの人道支援を担っている。

イスラエルはUNRWAの職員が、戦闘の発端になったハマスによるイスラエルへの奇襲に関与したとして、解体を求めていた。ネタニヤフ首相はX(旧ツイッター)で「テロ活動に関与した職員は責任を負わなければならない」と投稿し、法案の正当性を強調した。

UNRWAはアラブ・イスラエル戦争で住居や生計を失ったパレスチナ人を救済するため1949年、暫定的に設立された。ヨルダン、シリア、レバノン、パレスチナ自治区に住む560万人を、医療・教育・人道政策などの分野で支援している。イスラエル軍の攻撃で少なくとも190万人が避難生活を送るガザ地区では、UNRWAが人道支援物資の配布のほか診療所を運営するなど住民の医療も支えている。

国連安全保障理事会は30日、報道機関向け声明を出し、イスラエル国会が28日に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁じる法案を可決したことに「重大な懸念」を示し、UNRWAを「解体または縮小しようとするいかなる試みにも強く警告する」と表明。

安保理はまた「UNRWAはパレスチナ自治区ガザでの人道支援の要」であり、代替機関はないと強調。イスラエル政府を名指しして、ガザでの人道支援促進の「責任を果たす」よう求めた。声明は全15理事国の全会一致。イスラエルの後ろ盾である米国も法案には否定的だ。

国連とイスラエルの関係はもともと良くないが、現在は悪化する一方。UNRWA職員とハマスに関し、今年4月の国連報告書が組織の中立性を確定したが、イスラエルは今回の措置をとった。今回の安保理の声明も無視される可能性は大きい。

UNRWAのイスラエルでの活動が禁止されれば、ガザでの人道活動は危機的状況に陥り、イスラエルの占領下で暮らす数百万人のパレスチナ人にとっては大打撃。このままいけば法案実行まであと90日たらずとなる。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

ウクライナ地雷除去国際会議

スイス、ローザンヌで10月17日と18日、ウクライナの地雷除去に関する国際会議 (UMAC)が開かれ、国連PKO局地雷対策サービス部(UNMAS)他、60以上の国・国際機関が参加した。

この会議では人道的な地雷除去をどのように組織化できるかが議題。ウクライナのシュミハリ首相は、「地雷除去の分野で支援を強めてほしい」と訴えた。

地雷は生産が安価で、敷設も容易だが、除去作業は複雑で時間がかかる。ウクライナでは国土の約23%に及ぶ土地が地雷、不発弾などの爆発性危険物によって汚染されている可能性があるという。民間人の死傷者は900人に上っている。

ウクライナ戦争が終結しても、地雷は長期間にわたり国の復興を妨げることとなる。スイスはウクライナでの人道的地雷除去を優先課題に据え、多額の支援とともにこの国際会議をホストしている。

日本は地雷対策における世界最大ドナー国の1つだ。地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)報告書によると、2018年から2022年の資金拠出額では常にトップ5。日本から参加した柘植芳文外務副大臣は、来年はウクライナ地雷除去国際会議を日本で議開催すると発表している。

日本政府は2022年のロシアによるウクライナ侵攻以来、JICAを通じ、ウクライナ非常事態庁(SESU)に対し地雷除去機材の供与と技術能力開発支援を提供。今年7月には、ウクライナ復旧支援総額910億円の無償資金協力の一環として、日建が開発した地雷除去機4台をSESUに引き渡した。世界でも珍しいショベルカータイプで、アームの先端部を交換すれば、がれき除去や樹木の伐採などにも使える。年内に計約20台を届ける予定。

また2023年末には、東北大学の佐藤源之名誉教授が開発した最先端の小型地雷探知機ALIS(エーリス)を計50台、ウクライナに無償供与。対人地雷の画像をタブレットに映し出し、地面を掘らなくても地雷の位置を探知できる画期的なシステムだ。

日本の地雷除去支援の始まりはカンボジア。1998年以来、日本はカンボジアに総額160億円以上の無償資金協力を行い、地雷の処理を支援してきた。現地に赴いて直接探査・除去を行うのではなく現地関係者の能力強化を主眼にしているのが特徴。

最先端の地雷除去機を開発する日建、コマツに加え、現在はIT大手のNECがAIを活用した地雷埋設エリアの予測技術を開発中。来年のUMACは日本の存在を世界にアピールする良い機会となりそうだ。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

NATOジュネーブ連絡事務所

北大西洋条約機構(NATO)は32カ国が加盟する政治・軍事同盟で、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以来、連携を強めている。今秋ジュネーブに連絡事務所を設置する予定。

ジュネーブは多国間外交の一大中心地で、国連欧州本部のほか、国連専門機関や赤十字国際委員会(ICRC)等の本部がある。特に軍縮や戦争のルールを定める国際人道法などの分野では、交渉の最前線に立つ。

NATOは、国連本部があるウィーンとニューヨークにすでに連絡事務所を設置。ジュネーブ事務所が稼働すれば、国際機関、政府代表部の外交官や、ジュネーブを拠点とする750の非政府組織(NGO)と交流できる。

ウクライナ戦争勃発後、フィンランドやスウェーデンなどの非同盟国や中立国がNATOに加盟。非加盟国であるスイス自体もNATOとの関係を見直すことを連邦会議で提案している。

またNATOは、ロシアと中国の影響力拡大に対抗すためアジア・アフリカへの拡張を狙っており近年は日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドなどの非加盟国もNATOの年次首脳会議に出席している。

NATOのジュネーブ事務所開設はスイスの中立性を傷つけ、ジュネーブの「平和の首都」としての評判を損なうと、国内に論争を巻き起こした。一方で連邦内閣(政府)は、安全保障政策問題に関する議論の中心地としての、ジュネーブの地位強化につながると反論している。

現在の世界情勢を見ると、国の安全保障政策を確立させつつ、完全な中立国になるというのがいかに難しいかを感じさせる。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail