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小島晶子は、国際機関の人事政策と戦略、組織開発、人材雇用育成に25年以上の経験を持つシニアの人事スペシャリストです。彼女はUNHCR(国連高等難民弁務官)、UN(国連)、ITU(国際電気通信連合)および, 雇用 , キャリアマネジメント、研修課課長であったOECD(経済協力開発機構)などに勤務しました。人事コンサルタントとしてUNISDR(国連国際防災戦略プログラム)、DNDi(Drugs for Neglected Diseases Initiative)とSotelGui(ギネアコナクリテレコム)などさまざまな国際機関、非政府機関で働いています。

応募書類の書き方セミナー

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来る9月6日外務省主催の応募書類の書き方についてのセミナーが東京市ヶ谷で開催される。当サイトの管理人小島晶子が講師となるこのセミナーでは、国際機関に応募する際必要な履歴書及びカバーレターの書き方について指導することになる。

普段ならもっと長く、具体的な練習等も入るこのようなトレーニングを一時間あまりで講義するのだから、情報量はかなり多い。それなりに濃縮して書類作成の際の日本人特有の傾向や改善点にも触れていく予定である。何百という応募書類の中で雇用側の目に留まる書類の特徴とは何か、それを国際機関人事部にいた管理人の実務経験に基づいて解説していきたい。

輝く履歴書、とよく言われるが私が実際に見た限りでは、他に比べて格段に抜きん出ている履歴書に遭遇することは滅多にないと言っていい。一般的に応募者のレベルが向上しまた平均化してきている今日、抜きん出た経歴というのが稀になってきているのが主な理由だろうか。その分、競争は激化する傾向にある。また何度にも及ぶスクリーニングの後、筆記試験や面接で何人かの採用可能な最終候補に絞る国際機関のリクルートプロセスでは、応募者が輝く履歴書のみで選出されることはない。

そのような激しい競争の 中で、一分にも満たない最初のスクリーニングを通過するには、まず求められている条件をすべて満たしていることが要求される。これがなければいくら立派な応募書類でも直ちに除外される。ほぼ50パーセントの応募書類は基本条件を満たしておらず、それだけで候補者は半減するわけだ。

条件を満たしていれば、応募書類の書き方、空席と自己プロフィールの合致の売り込み方などでかなり差をつけられる。そのためにも空席広告締め切りギリギリまで待っていないで、早めに空席に適応した応募書類を作るべきだろう。このような努力は時間も労力も結構かかるが最終的には報われるものと思う。キャリア国際機関でも添削サービスをしているので利用してほしい。

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国際都市ジュネーブ

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スイスのジュネーブ州は周囲をフランス領に囲まれた面積282 km2人口約50万の狭い地域だ。1602年以来、自由都市、ジュネーブ共和国を形成していたが、1815年にスイス連邦に加盟し州(カントン)となった。中心部のジュネーブ市は人口20万で、世界で最も小さな国際都市といわれている。宗教改革の活動拠点になり、古くから難民を受け入れたこの街は1860年代にアンリー・デユナンが赤十字運動を始めたことをきっかけに、国際都市を売り物にして発展した。

この7月スイスミッションの発行した統計によると、ジュネーブ市にある国際機関は27、NGO約250、国際機関政府代表部またはそれに類するもの255となっている。職員は合計3万人近い。2014年に開催された国際会議はおよそ2400件で20万人程が参加している。これらを支えているのは、便利な交通、安全性、質の高い労働力、美しい街並等に加え、スイスの永世中立という外交政策であろう。

国連を例にとると、職員数の一番多い勤務地はニューヨークで6545人、ジュネーブは3459人で二番目だ。だが人気が高く、希望者が多いので狭き門となっている。人事部勤務中、何度もジュネーブから離れたくないという声を職員から聞いたものだ。この他にもILO,WHO,WIPO,ITU,UNHCR,WTO,WMOなどがここに本部を置いている。

しかしこの国際都市にも悩みはある。まず、物価がとても高く、手頃な値段のアパートが不足している。人口の約半数が外国人で、ジュネーブ人と外国人との二重構造社会になっているのも事実だ。ジュネーブの国際機関に赴任し、最初に対面するのはこの2つの問題だろう。実際、生活費の安いフランス側に住み毎日越境勤務する国際公務員は多数だ。また英語で外国人とのみ付き合い滞在中スイス人を知らないというケースも頻繁にある。

これらを緩和すべくジュネーブ政府では現地人との交流サークルや行事、住宅,学校捜しの支援などを無料で行っている。交通機関整備や町の清掃、イベント作り、国際公務員向けサポートや広報など広い分野にわたり、この小都市の国際都市政策は徹底している。これらがまた小国スイスが生き延び繁栄し続ける秘密なのかもしれない。

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キャリアコーチングが有効な場合

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国際機関への就職希望者または国際機関邦人職員への個別キャリア支援が有効なのはどういう場合だろうか。キャリアプラン作成、実現の段階毎に考えてみよう。

まず、キャリアプランの第一歩である自己分析、環境分析のサポート。本人の強みや市場価値を分析し、国際機関という特殊な職場にそれをどのように使っていけるかを見つけ出す手伝いをする。またキャリアや仕事に対する自分の価値観を分析するのも有効かと思う。それらを基盤にして、納得できるキャリアパスやキャリアプランを構築していくにも国際機関という労働市場をよく知っているコーチの支援は貴重だろう。

プラン作成後、目標に沿って自分の希望する職を捜し応募するという活動を開始する。本人の経歴や資質、目標にマッチした職種、機関そしてグレードの空席を効果的に見つけ出す際、国際機関という特殊な労働市場に精通したコーチの助けは有効だろう。応募や採用プロセスの途中でも、各機関の構造や特殊な人事事情、規則などの情報を説明し、アドバイスしてくれるプロがいると心強い。空席公募に応募し選抜課程を得て採用にこぎつけるまでには履歴書やカバーレターの添削や指導、面接対策用ガイドブックや模擬面接、筆記試験の指導等が役立つことと思う。採用が本決まりになる前にステップや給料の委細、契約の種類等をコーチに確認できるという利点もある。

すでに就職しているものにもキャリアコーチは有効だ。とりわけ入って間もない職員やJPOには必要度が高いかと思う。同僚には話しにくい職場の悩みや、キャリアの可能性もキャリアコーチがいれば相談できるというもの。国際機関の人事部や上司だけではカバーできない、個別に対応した自己ブランドやネットワーク作り、自己投資等への助言がされる。JPOにとっては2年間の間に正式職員になる道筋を作る意味で、とりわけケースに応じた支援が重要となる。キャリアアップは意識しているが、日々の仕事に追われて思うように空席広告をチェックできない職員にとってもプロフィールに応じて空席情報やアドバイスを提供してもらえるのは有効だろう。

キャリア国際機関が提供している様々なキャリアサポートサービスは、このサイトのリソースセンターに記述してある。

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履歴書作成の要点

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履歴書作成の際の要点はすでに記事にしたが、大事なテーマなので何度も触れる価値はあると思う。採用側が300近い応募フォームを短い時間で評価し、ロングリストやショートリストを作るものだから、時間を充分かけて満足のいくものを作成すべきだろう。

前述したように理想的な履歴書の条件は、空席の要求条件に合致したもの、簡潔で一貫性があり理解しやすいもの、必要な情報は全て揃っているもの、内容、文法、スペルに間違いのないものということになる。ではどのようにして採用側の目に留まる履歴書を作成することができるだろうか。

空席広告をみると最初に仕事環境や状況が書いてあり、そのあと仕事の記述、仕事遂行に必要な経歴や条件が続いている。これらをよく読んで分析し自分の職歴との共通点を見つけて強調していく。共通点は学歴経験だけでなく仕事内容、環境そして、語彙にまで及ぶということを頭にいれておこう。仕事内容の文をそのままコピーすることはできないが、動詞や似たような表現、その他のボキャブラリーをいくつか利用すると効果的だろう。

また強調したい共通項はなるべく早く採用側の目に留まるよう、職歴上部に書くように心がけよう。最後の最後までよんでやっと応募者の強調したい点がわかるようでは、スクリーニング過程で除去される危険がある。

仕事の記述を分析した後は広告の最後にある必要とされる学歴、経験、資格、言語等と自分のプロフィールを再度比べてみる。競争の激しい昨今では基本的な条件を全て満たしてなければ、応募する必要はないと判断していいと思う。資格条件と自分のプロフィールとの合致はカバーレターで強調するといいだろう。

このように空席広告にいちいち合わせて応募書類を作る必要がある。いくら立派にかけている履歴書でも空席広告内容に適応していない場合は、応募者の動機はそれほど高くないと評価されるだろう。ときどき空席公募の参照番号まで前の応募のままだったりする応募書類があり、応募者の真剣度具合いが疑われたりする。

キャリア国際機関では応募書類添削サービスもしているので、必要であれば利用してほしい。

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民間企業の経験が優遇される職種

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国際機関のポストに応募するときは学位と職務経験が同一分野であることと、経験が対象ポストの関連分野でかつ、国連に類似した環境で得られたものである点が重視される。そういう意味で、公共事業での国際的経験例えば、官公庁関係、在外公館調査員、派遣員、JICA、海外青年協力隊、NGO, NPO等の職場経験が望まれる。また、国際機関でのインターン、ボランタリー、短期採用やコンサル、技術協力専門家、あるいはパートナーシップや会議、タスクフォース、ネットワーク等に参加といったような国際機関との接点があれば有利とも前述した。開発関係ポストであれば、フィールドでの経験も必要となる。

ただし、職種によっては、民間企業で経験を積み最先端の知識、技術をもっている外部の者が優先的に選択される場合がある。進化が早く知識や技術投資コストの高い分野で、一般に国際機関より民間企業のノウハウが進んでいる職種が対象となる。プライベートセクターの経験をもつ応募者が、内部職員や国連に類似した環境出身者より圧倒的に有利になるわけだ。

その分野の典型的な例はIT関係ポストだ。日進月歩のこの分野では専門職には珍しく、学士で経験年数の少ない部外者の採用が頻繁にある。その他では投資バンキング、会計監査、エンジニア、医療関係といった職種も外部調達に頼ることが多い。とくに世界的に名の知られたIT企業や大手コンサルティングファームでの経験がある応募者は有利と言える。また医師や妊産婦健康管理専門家は供給不足と言われており、とりわけ短期緊急採用はチャンスが高いと考えられる。

その他の職種で民間企業の経験が重宝されるものに、人事、物資調達やロジ、財務、法律、コミュニケーション等がある。民間のシンクタンク、多国籍企業、開発コンサル、国際法律事務所、銀行などでの経歴が生かせるというものだ。ただし、これらは国際機関に類似した環境での経験も合わせてもっていた方が、多数いる候補者との競争には有利だろう。ITや医療関係ほど最先端の知識や技術でなくても通用することと、ある程度内部でも能力開発が可能なこと、国際機関独自のやり方があることがその理由とである。

応募やキャリアについてのアドバイス希望者はこのサイト、リソースセンターのコンタクトフォームを利用していただきたい。

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MBTI 性格診断テスト

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性格診断テスト、「Myers–Briggs Type Indicator(通称MBTI)」は、20世紀初頭の分析心理学の父、カール・グスタフ・ユングが生み出した心理学的類型論をもとにキャサリン・クック・ブリッグスと娘のイザベル・ブリッグス・マイヤーズによって開発され初版が1962年に完成した。以来改版を重ね現在50カ国以上で使われており、世界で最も利用されているパーソナリティテストと言われている。

MBTIは、一人ひとりの性格を心の機能と態度の側面から「ものの見方(感覚・直観)」「判断のしかた(思考・感情)」及び「興味関心の方向(外向・内向)」と「外界への接し方(判断的態度・知覚的態度)」の4 指標で表し、16 タイプに分類するところから日本では「16性格診断」という名で知られている。自己理解・他者理解の他リーダーシップやマネジメント研修、チームワーク促進、キャリアカウンセリング等にも使えるという効能書きのせいか国際機関のトレーニングでも当時は随分使われていた。しかし自己理解・他者理解が深まったという印象を与える他に何の効果があったかは疑問である。

MBTIは自己分析をパターン化するという意味でとても興味深いが、自己の性格を16種に分類する課程は科学的、客観的とは言えないだろう。心理学者でもない母娘によって開発されたという点もよく批判の対象になっている。組織の人材管理側からみれば能力開発、キャリアプラン、採用等に結果は利用できない。私もトレーニング担当官として何度かやってみたが、そのたびに違うタイプの結果がでるのも困りものである。

しかし国際機関、企業などで頻繁に使われているのは事実だ。実際リーダーシップ等の研修プログラムの中ではこのテスト分析が一番人気があり、盛り上がった。またこの分析はマニュアルワーカーからダイレクターまで広い層に受けるところも魅力だろう。例えば採用でよく利用されるビッグファイブというテストはもっと科学的だが、結果は要素ごとに傾向がパーセントで出るだけで、他人と比較したり会話の話題にしたりはできない。

個人的な意見だが、この性格判断は血液型判断や占星術のようなものにマネジメント的な箔をつけて、一見科学的にしかし、一般向けするよう記述したという感じだ。ビジネス用語と4文字のアルファベット、そしてどのタイプにも一貫している肯定的な表見が人気の秘密だろうか。また正式なものはMBTI認定ユーザーが当人と話し合いながら、タイプを確定することになっており信用度を高める効果十分だろう。たくさん出回っているMBTI 派流テストに至っては、4文字のアルファベットの他にどのタイプにも分析家、外交官、建築家というような素晴らしい名前がついており、ますます自我を満足させてくれる。

人間の性格を明確に定義づけ分類する方法は昔から追及されてきたが、その複雑性、流動性のゆえ、行動をパターン化して予測する完璧なツールというのは存在できないだろう。市場に星の数ほどある性格判断テストだが、分類して比較ができ信用もあるMBTIは魅力的なツールの作り方と巧みな市場戦略で成功した例と言える。

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P1, P2ポストへの応募

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国際機関、とくに国連では専門職ジュニアレベルでの就職がとても難しい。このレベルに各当するのはP1, P2そしてNO-A 、NO-B(National Professional Officer、現地採用)だろう。P1または NO-A には修士プラス一年、 P2 とNO-Bには修士プラス専門分野二年の経験が必要とされる。大学を終えて2年の経験をもった若者は多数なのでこれらの空席への応募者数は他のグレードに比べてとても高い。

応募者数と対照的にポスト数は少ない。まずNO-A、NO-Bはフィールド事務所所在地の国民のみの採用で機会は限られている。P1, P2の空席公募は稀である。2013 年7月より2014年6月の国連専門職職員Pレベルの任命件数(新規採用、契約更新を含む)は1613件で、このうちP1は24件P2は388件。P3が708 件P4349件P5 144件となっている。

国連の衡平な地理的配分の原則適用ポスト(通常予算で人件費が支弁されている言語職以外の専門職ポスト)P1 P2は競争試験によって埋めることが義務ずけられている。同じ時期に任命された62名のP2のうち16名が国別試験(JPO)46名がYPPの競争試験を通ったものである。(P1は皆無)。

このようにP2の空席にはまず競争試験を通過したロスター登録者が採用される。核当する登録者がいない場合や、地理的配分対象外のポスト、短期採用ポスト等に限ってのみ公募されるので数は少ない。そこに、短期採用の職員やコンサルタント、すでにP2だが仕事や勤務地を変えたい職員、現地採用から国際公務員のステータスになりたいNO-AやNO-B等が応募することになる。これらの職員はすでに内部の知識と経験を持ち合わせているので、外部の者が競争に打ち勝ち採用される可能性は非常に低い。

以上を考慮した場合、JPO選考試験は国際機関でキャリアを始める近道であることを再認識できると思う。JPO試験を受けられない場合は、各機関の若手職員採用プログラム、その他の競争試験や採用ミッションを受験するほうがP1P2空席に個別応募するよりチャンスはあるかと思われる。またはもう少し経験を増やして、P3のポストで勝負するほうが雇用の可能性は広がるだろう。

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プレゼンターのパラドックス

General Assembly Seventieth session: High-level Thematic Debate on Achieving the Sustainable Development Goals Opening ceremony and Plenary segment: Action at all levels: National implementation Mr. Forest Whitaker, SDGAdvocate,Actor andActivist

長くて委細にわたる履歴書が効果的とは言えない。一貫性と簡潔性に欠け、空席に関係ないスキルや資格、興味等にも及ぶものはインパクトが薄い。関係が少しでもありそうな情報は全て入れ採用の可能性を高めたいという願望はほぼ直感的なものだろう。だがそれこそ逆効果だ。応募者は「プレゼンターのパラドックスPresenter’s Paradox」という落とし穴にはまることになる。

心理学者のキンバリー・ウィーバー、スティーブン・ガルシア、ノーバート・シュワルツらは2011年に、「プレゼンターのパラドックス」を例証してみせた。被験者にiPodとカバー、そして音楽を1曲無料でダウンロードできる特典つきパッケージとiPodとカバーだけのパッケージの2種類を提示しそれぞれへの支払い意思額を調べた。被験者らが示した意思額の平均は、ダウンロード付きのパッケージで177ドル、ダウンロードなしのパッケージで242ドルだった。価値の低い無料ダウンロードをおまけしたために、パッケージの知覚価値がかえって65ドルも下がったのである。

一方で別の実験グループにはマーケティング担当者(サービス提供者)になってもらい、上記2つのパッケージのうちどちらが消費者にとって魅力的だと思うかと尋ねた。結果、被験者の92%が無料ダウンロード付きのパッケージに魅力を感じたということだ。

このように、提供側の立場に立つと「多いに越したことはない」と思うのに、消費者の立場ではそうではない。これは国際機関へ自分自身を売り込む時の応募書類にも当てはまる。

空席に応募する時、自分の数ある実績を全て並べておけば、雇用側がそのひとつひとつを足し算してくれるだろうと、応募者は普通考えるだろう。例えば学歴、職歴、ボランタリー活動、言語、出張の経験、海外在住経験、大学での研究のテーマ等等、全体に加算されるなら多いほどいいはずだという心理である。だが実際には、単に多いだけでは雇用側によい印象を与えない。採用側は、候補者の学歴や資格職歴等を足し算しているのではなく全体をひとつのパッケージとして評価しているからだ。非常に好ましい学歴や有益な資格もそれほどでもない言語能力や、ポストに関係のない学歴や出張などと同列にされると、受け手にとっての魅力が低下したりインパクトが薄れたりしてしまう。

何でもいれたい衝動にかられるときは履歴書の全体像をチェックすべきだろう。パッケージの全体的な価値やインパクトを減らしている要素を捜し、よけいな情報、ポストとの関連性の薄い情報は削ることだ。ただし、これは自分を売り込むという主観性がプレゼンターのパラドックスとも相まってなかなか難しい。実際シンプルで簡潔、かつ関連情報は網羅している履歴書を書くのは大変なことだ。あれもこれも入れたいいう誘惑にかてず、長く委細にわたる履歴書になりがちとなる。こういう場合は第三者にみてもらえばいいだろう。キャリア国際機関でも履歴書添削サービスをしているので利用してほしい。

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履歴書の書き方

Official Opening of the Permanent Premises of the International Criminal Court

大抵の国際機関の履歴書は応募フォームに記入するシステムになっている。一律の形式を使用することで採用判断に必要な情報をむらなく収集できるわけだ。応募者にとっても形式や内容項目の判断に気を遣わずに済む分手軽とも言える。

採用側が300近い応募フォームを短い時間で評価し、ロングリストやショートリストを作る際、読みにくく印象の悪いものは不利だろう。

私の個人的経験からいくと、英語のスペルや文法が間違っているもの、空席広告の記述の大部分をコピーペ―ストしたもの、全体に長く字数の多いもの、職歴等の記述が細かすぎるもの、まったくイメージのわかない仕事内容や成果が不明なもの、関連性の薄い余計なものまで含まれているもの、アクロニムの使い過ぎ、大文字だけで書いてあるもの、逆にi を小文字で書いてあるもの、全くポストに合っていない職歴、といった履歴書は印象が悪いといえる。

では理想的な履歴書とはどういうものか。空席のプロフィールに合ったもの、簡潔で一貫性があり理解しやすいもの、必要な情報はすべて入れてあるもの、内容、文法、スペルに間違いのないものという条件を満たしていれば次のステップまで進める可能性は高い。

履歴書の中で一番大切なのは職歴である。記述の際よく引用されるテクニック(例えばアクション動詞使用、Iの省略、成果の追加)等に加えて重要なのは、空席に記された仕事内容と自己の職歴の合致を強調することだろう。経験は、空席に近い仕事内容で、似たような仕事環境で得られたものであるほど重宝される。同じ5年でも空席に類似した仕事を国際機関やNGOにて、そして空席と同じ地域(例えば開発途上国)で経験していれば、採用後即戦力となると判断されるからだ。

この職歴はドットを使って簡潔に書くとよい。空席広告をみると最初に仕事環境や状況が書いてあり、そのあと大抵ドットを使った仕事の記述がある。この記述部分より履歴書の記述の方が長く複雑にならないようにしたい。つまり最大10ドット前後に絞ることだ。もちろんそれ以下ならもっとよい。UNDP やUNICEFの空席は多いせいか記述の質にバラツキがあり、長すぎる例も多いのであまり見本とならない。開発銀行や専門機関の空席広告の方が管理されていて読みやすく参考になるだろう。空席広告の記述から共通点を見つけ自分の職歴の上部に書いたり、似たポストの表現やボキャブラリーをいくつか利用したりすると効果的と思う。

面接の数は応募した数に正比例するとよく言われる。プロフィールが合っているのに何度応募しても反応のない場合は、履歴書を徹底的に見直したほうがいいだろう。

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「管理職へのキャリア構築」セミナー

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国際機関でのキャリア開発は、機関、上司、本人という3部構成になっている。組織のキャリア開発サポートと上司はキャリア開発の重要な助けである。ただし、国際機関の人材政策でも « キャリアは自分で作るもの »と、個人の最終責任を明確に打ち出している。これからのキャリア開発には、自分の市場価値を常に高めつつ周囲のサポートを利用していく、という態度がより重要となるだろう。

とくに昇進は日本の職場と違って、一生懸命仕事をしたものに自動的に与えられるものではない。国際機関での昇進には戦略が不可欠で、仕事熱心のあまり昇進活動を怠るとるとかえって取り残されたりもする。管理職へのキャリアはまさに計画して積み上げていくものといえる。

ジュネーブ国際機関日本人職員会JSAGは中堅レベルの邦人職員を対象に、「管理職へのキャリア構築」セミナーを今4月に開催した。目的は幹部ポストに必要とされる見識やコンピテンシーについて理解を深めるためで、サイト管理人小島がこのセミナーの講師を務めさせていただいた。

ジュネーブ在住の11人の邦人職員が参加したこのセミナーでは、幹部ポスト(P5、D~)を目指すにあたって重要な要素やステップ、幹部に求められるコンピテンシーなどを説明した。2日程度のセミナーの内容を1時間半に濃縮したのでインタアクテイブにとはいかなかったが、参加者が積極的だったので活発な質疑応答と情報交換ができた。

セミナーのポイントはJSAGのウェブページに掲載される予定なのでここでは触れない。ただし、早く昇進したい人にもっとも必要なものを挙げろといわれたら、柔軟性のある具体的目標、3年から5年で動くこと(2年から4年で準備)、自己の市場価を上げること、情報収集とアドバイスと答えると思う。もちろん他にも重要な点はたくさんあるのだが、昇進を自分の価値観の中心にとらえている職員はロールモデルやメンター、コーチ等を活用し早い時期に軌道を先取りすることを考えるべきだろう。

また自分の仕事に対する意識や価値観はキャリアや人生の節目節目で変わっていくものだ。案外と自分の興味や大切とすることに気ずいてない場合もある。時々は職場から距離をとって、自分が何のために働いているのか、何が大切なのかを見直す時間を作るといいと思う。

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