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小島晶子は、国際機関の人事政策と戦略、組織開発、人材雇用育成に25年以上の経験を持つシニアの人事スペシャリストです。彼女はUNHCR(国連高等難民弁務官)、UN(国連)、ITU(国際電気通信連合)および, 雇用 , キャリアマネジメント、研修課課長であったOECD(経済協力開発機構)などに勤務しました。人事コンサルタントとしてUNISDR(国連国際防災戦略プログラム)、DNDi(Drugs for Neglected Diseases Initiative)とSotelGui(ギネアコナクリテレコム)などさまざまな国際機関、非政府機関で働いています。

日本語を生かせる国際機関の仕事

Japan to toughen eligibility standards for Japanese-language schools | The  Japan Times

「国連で働いています」というと、よく返ってくるのが 「 通訳ですか 」、という質問。日本国内で想像する国際機関の仕事に通訳、翻訳官のイメージは強いようだ。

国連の公用語は、英、仏、スペイン、アラブ、ロシア、中国語の6カ国語。通訳、翻訳官はこの内の一つを母国語とし、他の2種類の公用語からその言語に通訳、または翻訳する。ただし、アラブ語、中国語の場合 、母国語ほか2カ国語が達者なものは稀なので、それぞれの母国語を英語かフランス語に、そして そこから母国語に直せば良いことになっている。

通訳、翻訳官等は言語スタッフと呼ばれる専門職。一斉採用キャンペーンで 採用者を多数リストアップし、空席が空き次第徐々に配置していく。日本語は公用語ではないので国内のイメージとは裏腹に、国際機関の正式ポストに日本語通訳、翻訳官は存在しない。

国際機関で日本語が生かせる仕事は多少存在する。例えばWIPO(世界知的所有権機関)のパテント関係ポストやそれに関する翻訳など。ILOでは、職員ではないが、大会議の際は 日本代表団に通訳がつく。国連の日本語ガイドも少ないながら需要はある。

邦人がトップに立っている機関やプログラム の特別補佐 や、日本事務所とのリエゾンの仕事にも日本語は有利。大きな機関だと採用担当官に日本人をあて、邦人採用に活用する場合もある。

このほかUNV(国連ボランテイア計画)では定期的に日本人向け、日本語使用ポストを公募している。ボランテイアであるが、手当もつき、国際機関の経験として認められる。また在日国際機関ポストの多くには、 日本語が望ましい条件に含まれている。

いずれの場合もあくまで、学位、経験などの基本条件を満たしてのみ日本語が生かせるわけだ。国際機関では、おしなべて英語母国語の者が有利と言われるが、少ないとはいえこのような機会もあるので、逃さず利用したいものだ。

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Deadline

国際機関空席公募ではよく目にするdeadline。応募書類受付の締め切り日を指すが、そのままの解釈だと死線ということになりおだやかではない。

「deadline」はもともと、1861〜1865年アメリカの南北戦争時代に捕虜収容所の周り半径17フィート(5,2メートル)で引かれていた線。その線を越えてしまうと、逃げたとみなされ射殺されてしまうことから「超えてしまうと命が無い線」という意味で使わた。

今のように締め切り時間や最終期限として使われるようになったのは20世紀半ば頃から。現在でも、囚人がこの線を越えると射殺される「超えてはならない線」「死線」という意味もある。

「死」という言葉を含みインパクトの強い「deadline」は避けて、空席公募締め切りに「closing date」類を使う機関もあるがdeadline使用機関のほうが数は多い。

ただし国連ではposting periodを使い空席がインターネットにアップロードされた日から、取り去られる日までをの期間を公示している。これにならっているのは採用システムが国連の傘下にある、UNEP, UNESCAP, ECLAC , ICAOとUNOPS (application period)。

その他はclosing date派 か deadline派だが、それなりに頭をしぼり独自の表示をしている機関もあり、posting end date (Global Fund, EBRD), apply before (UNDP) などが目立つ。

だがなんといっても一番印象に残るのはdeadline。そのインパクトはまだまだおとろえていない。空席公募の締め切りは厳守しないと採用されてもらえないから、ある意味「死線」でもあるわけだ。応募書類は期限前に余裕をもって提出しよう。

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ウクライナ紛争と国連

ウクライナにロシア軍が侵攻してからすでに3週間。毎日悲惨なニュースが通報されている。国連は何をしているのか、という疑問も湧いてくるだろう。

人道面での援助では、UNHCR、 UNICEF、 OCHA、WFP、WHOなどの機関が、赤十字国際委員会を始めとする多数のNGOと共に現地で活動している。

紛争解決の目的で、アメリカを始めとした軍事大国やNATOがウクライナに加勢すれば、核戦争、第3次世界大戦に発展する恐れがある。では国連軍介入はどうだろうか。

国連平和維持ミッションを設立するには安全保障理事国15カ国のうち9カ国の賛成が必要だが、常任理事国である、中国、フランス、ロシア連邦、英国、米国のいずれかが反対すれば、否決される。

安保理が機能しない今回、国連は全加盟国を集めた「緊急特別総会を開催し、3月2日にロシア非難決議案を採択した。だが総会決議は安保理決議と違い、法的拘束力を持たない。141ヵ国の団結を示す機会とはなったが、ロシアへの直接影響力はない。

「常任理事国の絡む紛争に国連は無力」と言われるが、事務総長が紛争解決に動いたケースは過去にある。例えば62年のキューバ危機にウタント氏が米ソを仲介している。

ロシアの武力行使に対し、自国の軍事力だけで領土を守れない国や旧東欧諸国の危機感は高まる一方だ。国連やマルチの国際共同体の紛争解決能力に期待したい。

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お知らせ

JPO応募書類の締め切り3月7日が近づいてきた。

キャリア国際機関の添削サービス受付も、3日頃で締め切る予定なので必要な応募者は早くコンタクトしてほしい。

また現在込み合っているのでメールの返事が3日以上来ない場合は、再度問い合わせするようお願いする。

締め切り後、外務省側の書類選考が行われ、そこを通過すると筆記試験または課題、そして面接という段取りとなる。筆記試験または課題、そして面接対策支援も行っているので、書類選考を通過した応募者は利用してほしい。

さらにJPO試験や国際機関応募その他に関するキャリア相談にも対応しているので、興味のある方は問い合わせてほしい。メールはこちらから

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国際機関クイズ

Quizzes

スイス政府主催の国際機関についてのセミナーを、フランス語圏スイス人対象にZOOMで行った。オンライン研修で、3時間16人の注意を引き付けるのは容易ではない。コーヒーブレイクやグループ作業の他にクイズをとりいれたら割と好評だった。

以下、似たような問題を挙げてみた。あなたは何問できるだろうか。

1. 国連の加盟国ではない国はどれ ?

Aバチカン Bペルー Cトンガ

2. ユニセフの本部はどこにある ?

Aジュネーブ Bパリ Cニューヨーク

3. 国連軍いわゆるブルーヘルメットはいつ機動し始めたか ?

A 1944 年ポーランドの国境にて

B 1956 年スエズ運河の危機

C 1960 年アルジェリア

4. 空席に応募する際、修士号でなく学士でよい職種は ?

Aエコノミスト B法律家 C IT関係

5. UNEP国連環境計画(UNEP)の本部はどこにある ?

Aジュネーブ Bナイロビ Cローマ

6. 国連の公用語でないのは ?

Aスペイン語 Bポルトガル語 Cロシア語

7. 現国連事務総長は ?

Aコフィアナン Bバンギムン Cアントニオ・グテーレス

8. 女性専門職職員の少ない職種は ?

A平和構築 B開発 C IT関係

9. 国際民間航空条約に基づき発足した機関は ?

A国際飛行機協会 (IFA)

B国連航空経済機構 (UNAEO)

C国際民間航空機関 (ICAO)

10. 国際原子力機関の略称は ?

  A IEA   B IAEA  C WTO

答え1A, B, B, C, B, B, C, A, C, 10B

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国際機関とNGO

Photo de RODNAE Productions provenant de Pexels

スイス政府の依頼で、国際機関についてのセミナーをフランス語圏スイス人対象に行っている。NGOと国際機関の違いをよく説明してくれと頼まれたので、理由を聞いてみた。国連機関で働くよりNGO活動を好むスイス人は多いからとのこと。さすがはNGO伝統の強いスイスである。

スイス人のアンリー・デュナンがジュネーブで赤十字』(Red Cross)運動を開始したのは1860年代。後、世界最古にして最大のNGOの一つであるICRC赤十字国際委員会は、精力的な人道支援を展開している。

この活動に象徴されるように、NGO(非政府機関)は多くが国際機関でありながら、民間の立場から民間にサービスを提供するユニークなスタンスを保っている。国連を代表する政府間組織、いわゆる国際機関にないNGOの魅力とは何か。

政府間機関は各国政府が相手なので、規模は大きく政治的な影響力は強いが、官僚的なアプローチになりがちで小回りが利かない。国際機関より決断が早く、活動に柔軟性のあるNGOのほうが、即効果をあげられるという利点があるだろう。

世界中にある国際機関の数はおよそ300といわれているが、国際NGOはずっと多く40000程。地域ベースのNGOを含めば、その数は百万千万単位であろう。

NGOは国連にとっても重要なパートナーで、国連と市民社会とを結びつける貴重な存在。ECOSOC(国連経済社会理事会)は加盟国ばかりではなく、その権限内にある事項について関係するNGOとも協議する。このようにNGOは独自の経験や専門知識を提供しつつ、市民の関心事を国連機関の政策や国際的合意に反映させ、世界規模の問題解決に貢献している。

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2022年度JPO 試験

今年もJPO 試験のシーズンがやってきた。外務省からの募集要項はすでに発表されたが、毎年少しずつ変化があるので気をつけたい。

事前登録は1月6日から可能。応募期間は2月1日から3月7日までと去年より長い。外務省枠外応募は、OECD, UNDP, WFP, OPCW, ICAOの5機関。

和文応募書類の志望機関・ポスト欄は、第3希望機関・ポストまで。職歴に希望ポストとの関連性を書く部分もあるので、和文応募用紙記入はJPOポストのリストが公開される2月1日待ちとなる。事前登録ですでに記入した学歴等の基本情報は、応募用紙に再入力する必要はない。

キャリア国際機関の応募書類作成支援は、メールで送られてきた書類から順番に受け付け、30人程度で締め切る予定。添削サービス希望者が多ければ3月7日前であっても対応できない場合があるので要注意。

他の応募者より早く書類を作成するには、2月1日の対象ポスト掲載を待たず作成できる英文レジュメとP11を今から用意しておくことだ。

P11の動機部分は応募対象ポストとの合致をアピールするカバーレターとは異なり、希望機関、JPOプログラムに対する動機、適格性や将来の抱負、貢献等を書くものなので、今からでもドラフト、添削ができる。希望ポストがわかってからカバーレターと和文応募書類を完成させ、2度に分けて添削することも考えていいだろう。

サービスの流れをリソースセンターにアップロードしたので、合わせて参考にしてほしい。

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新年のご挨拶

無料イラスト 2022年の干支・寅年

新年明けましておめでとうございます。

昨年はCOVID19に強く影響されたほか、アメリカの新大統領就任に関する事件やアフガニスタン、ミヤンマーなどで平和を脅かす展開が見られました。一方で東京オリンピックで日本選手が大活躍するなど、明るい話題もありました。

去年に続き新型コロナの患者が増加する中、2022年も国際情勢は目まぐるしく変わっていくことでしょう。 そのような状況は国際機関とは何か、そこで働くとはどういうことか、という問いを改めて私達に投げかけます。

キャリア国際機関では、今年も例年以上に国際機関に関する情報やアドバイスを発信し、国際公務員キャリアを応援していきたいと思います。 本年も何卒よろしくお願い致します!

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民間企業の経験

国際機関の採用には、専門分野での学歴と職務経験の一致が重視される。また最低条件年数を満たしていれば、経験は空席の環境に近い 職場で得たものほど有利。例えば、他の国際機関、NGO、官公庁関係、在外公館 、JICA等 での勤務がそれに近い。

ただし民間企業での経験の方が重視される場合がある。進化が早く知識や技術への投資コストが高い職種だ。例えば民間企業のノウハウが国際機関より進んでいるIT関係だと 最先端の知識、技術をもっている外部候補が優先される。日進月歩のこの分野では、学士で経験年数ギリギリの民間出身者採用が頻繁。

投資バンキング、会計監査、エンジニア といった職種も民間経験者が多い。世界的に著名な企業や大手コンサルでの経験 は特に歓迎される。また医師や妊産婦、健康管理専門家は供給不足と言われており、とりわけ短期緊急ポストでは採用チャンスが高い 。

人事、物資調達やロジ、財務、法律、コミュニケーション等にも民間企業での経験は有効。シンクタンク、多国籍企業、開発コンサル、国際法律事務所、外資系銀行などの経験が活かせる。ただし、これらは民間経験オンリーでは競争力が弱い。

民間企業 プラス 国際機関の経験がそれぞれ最低2年以上あれば、どの職種にも有効 。国際機関でのインターン、ボランタリー、短期採用やコンサル、技術協力専門家、あるいはパートナー活動や会議、タスクフォース、ネットワーク参加、といった 経験をキャリア計画に盛り込むとよいだろう。 

応募やキャリアについてのアドバイス希望者はこのサイトのコンタクトフォームを利用していただきたい。

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COP26

国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は、各国間の意見調整難航後、成果文書を採択し先月13日に閉幕した。

成果文書では「1.5度目標」明記が大きな前進とされている。2015年のパリ協定では、「世界の平均気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑える」との位置づけだったからだ。

これは確かにCOP26の手柄と言えよう。しかし、採択だけで、世界の地球温暖化対策がどの程度進むかは不明。1.5度温度上昇抑制には2030年に温暖化ガス全球排出量を2010年比45%削減、21世紀半ばにネットゼロにすることが必要でその作業計画はCOP27で採択される。

また、成果文書では、石炭火力の廃止についても採択が難航。議長国の英国は、「段階的な廃止」という表現を成果文書に盛り込むことを目指していたが、インドや中国が強硬に反対。最終的には「段階的な削減」という表現で妥協が成立した。

他のテーマでも先進国と途上国・新興国間の対立が目立った。先進国は2050年のカーボンニュートラル、2030年までの地球温暖化ガス排出量の50%程度の削減でほぼ同意したが、途上国・新興国は反対。世界最大排出国の中国は、2060年カーボンニュートラルという従来の目標のまま。新たにカーボンニュートラルを示したインドも、目標達成時期は先進国よりも10年遅い2060年である。

先進国が途上国・新興国に地球温暖化対策を積極化させるトップダウン式がCOP26の基本構図。しかし先進国自身2020年までに途上国などの気候変動対策に年間1,000億ドルを支出することは達成しておらず、両サイド対立のもとになっている。

各国からかなり先の目標を引き出し、積極姿勢を表明させるだけでは地球温暖化は解決できない。具体的方策、そして対策の実地を随時確認する構造などを促進するのが今後の課題だろう。

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