国際機関応募書類書き方講座(9月3日)への御参加ありがとうございました。
セミナーの際にお話しした要点のパワーポイント資料を9月10日以降リソースセンターにアップロードしますのでご利用ください。
また完全な資料(2000円)をご希望の方は、こちらからお申し込みください。ゆうちょ銀行口座またはペイパルお支払後メールでお送りします。
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国連は社会的弱者グループとして女性、若者、子供、高齢者、貧困者、障害を持つ人々、少数者と先住民などの人権を定義付け、その擁護に力を入れてきた。持続可能な開発目標SDGsでも、「誰も置き去りにしない」が普遍的テーマとなっている。
世界で最も小さな国際都市ジュネーブの多文化性については、すでに書いた。人口の41パーセントは外人であるこの街は、多様性に対する(diversity) 許容力の高さが特徴。包括的 (inclusive) な共同体を作ろうとする動きが政策随所に見られる。
スイス女性の地位は意外と低く、今年6月にはジュネーブ中の女性が給料格差やハラスメント反対の大型ストライキを実地。1991年以降2度目のイベントで、女性の社会参画をより進めるために改善すべき課題は多いと訴えた。
同性愛者や性同一性障害者を、根深い差別から保護するのは国連人権委員会の活動の一部。地元ジュネーブでも毎年恒例の「プライド」と称されるセクシュアル・マイノリティのパレードイベントが初夏に繰り広げられる。
ジュネーブは2007年WHO(世界保健機関)で提唱された「高齢者にやさしい都市」にも登録。シニアの生 活を支援し,安全に暮らし,健康を保持し,社会に参加し続けながら老いることができる環境を作るのが理想だ。そのような環境は全年齢層にも有益となると主張。
多様で包括的な共同体は、少数派だけでなく全ての参加者にポジティブな影響を与えると言われ、「違っている一人一人が生きやすい社会」という理念の基本になっている。平等や公正さだけでなく、総合的な社会発達を促すのが最終目的。
人類の歴史を振り返れば、社会的マイノリティーへの差別や虐待、人権侵害の方が長い。異質のものを取り除こうとする原始的な反応は誰の内面にもあるもの。それを追い払うためにも制度、法律を確立し、支援しながら、文化として維持していくことが重要だろう。
インクルーシブな環境作りをグローバル、職場レベルで目標としている国際機関だが、ジュネーブも街単位で平等参加型社会作りに努力している。時間も予算もかかる取り組みであり、まだ目標は全て達成されてないが、その姿勢は評価できるだろう。
外務省から9月3日の応募書類書き方講座が発表された。今までの経験から、「書類にありがちなミスは何ですか。」という参加者からの質問が予想される。今回はそれに先駆けて少し詳しく解説した。
スペルミス、誤字は命取り。スペルチェッカーでは検出できないものもある。例えばLead の過去形にLedではなくLeadを使ってもチェック機能は正しいと認識。またハイフンの入った複合語はミスの元になりやすい。
例 mid- and long-term goals
大文字小文字の使用についてはこのサイトでも解説済み。特に大文字乱用は読みにくい。
時制の統一にも気をつける。現在の業務は現在形、業績は過去。過去の仕事は、職務内容、功績とも過去形が一般的。全部過去形で統一するのも可。
同じ言葉や言い回しのリピートは文章が単調になり、英語力も疑われる。重複表現や不必要な形容詞にも注意。
例 past experience, final result, unexpected surprise
自由様式レジュメで時々あるのが、職務期間が年代のみで月の表示がないケース。国際機関の履歴テンプレートでも日ずけは義務化されており、ないと採用側に疑問をもたれる。
以前にも触れたが、フリーレジュメにcareer objective, summary, references, hobbies などは不用。
ミスというわけではないが、職務の描写が長く読みにくい応募書類は歓迎されない。読み手側に立って再度チェックしよう。
以上応募書類の添削サービス中目立ったものを挙げてみた。これらに気をつければ応募書類の質は確実に上がるだろう。
今回で5度目になる外務省国際機関人事センター主催の“国際機関への応募書類書き方講座”。国際機関へ提出する履歴書とカバーレターの書き方について以下の日時で説明する。
9月3日(火)18:00~19:30
■場所:東京都中央区丸の内1-7-12 サピアタワー10F
関西学院大学・東京丸の内キャンパス
講座は兵庫県の関西学院大学、西宮上が原キャンパスでも同時中継される。
里帰りの際日本でセミナーを開く機会は限られているので、たくさんの方に受講していただきたいもの。職種ごとのキャリアパスとか、面接の仕方などレクチャーしたいテーマはいろいろあるが、応募書類の質を上げることはキャリア開発優先事項の一つだろう。
応募書類を充実させる際、どういう国際機関のどの職種、業務を目指すか、自分のプロフィールとの合致はどうか、を含むキャリアプランや戦略があれば効果的。
毎回講座の後にたくさん質問が来るのだが、キャリアプランが立っていないケースが多く、まずそこから始めるべきという感じをいだく。
目標がはっきりしないままに応募していては、書類だけ直しても次の採用プロセスに進むのは難しい。
在日中、個別カウンセリングの時間は取りにくいので、キャリア相談はサイトに直接問い合わせてほしい。キャリア国際機関サービスに関しての情報は無料。キャリア相談一回2000円、六ヶ月6000円で提供している。
応募前に、空席広告の最後に書いてある必要な学歴、経験、資格等の基本条件をもう一度チェックしたいもの。これらを全て満たしていなければ、応募しても筆記試験や面接に呼ばれる可能性はほぼない。
「ではAdvantage, Asset, Plus, Desirableと記された条件はどうですか。」とよく聞かれる。競争の激しい昨今、望ましいとされる資格や技能でさえも、なければ筆記試験や面接まではたどり着けない。
プロフィール合致の概念は最近かなり浸透してきたが、まだ現実把握は難しいらしい。「学歴はないが経験でカバー。」とか、「国際レベル経験はないが海外出張している。」という応募理由をよく耳にする。国連採用プロセスの例を取り、なぜ完全合致にこだわるか再度説明したい。
採用必要条件は、学歴、経験、言語の3種類。応募者リストができたら、人事部がそれらを満たしていない候補者をまず除外。その後、雇用上司による筆記試験招待者の選抜があり、上記の望ましい資格や経験のチェックがされる。さらに候補者を絞り込むため、条件に合っていても、その質の高さ(たとえば経験の年数と環境、空席のポストに近い経験かなど)を問われる場合もある。
このような書類選考後、300から400人近い応募者から15人ほどが筆記試験に招待される。筆記試験の結果を見て雇用上司が3人から8人程度最終候補者を選び面接となる。
インターネットの発達で応募者数は激増、また高学歴者が増え、募集広告条件を満たす履歴書は多い。これに内部職員やすでに採用可能者リスト(ロスター)に入っている候補者が加わり競争は激化。
採用プロセスを考慮すれば、資格条件と自分の経歴がマッチしていない応募は可能性が低いことを理解できよう。せっかく労力や時間を費やして応募するのだから、もっと自分の経歴に近い空席を狙うべきだろう。
国際機関の対面面接で守るべきマナーは、基本的に私企業とあまり変わらないが独自のものもある。以下の行為は面接官の心情に悪影響を与えるので気をつけたい。
面接前
面接時間に遅れるのは言外。余裕を持って到着し待機している応募者を、担当官が面接室まで案内することがある。その際面接官の先を歩くと横柄な態度と思われるので注意。この印象が面接中の話す姿勢などとも相まり尾を引くリスクは高い。
握手は適度にダイナミックに。力のない握手も困るが力をこめて強く握りしめ、相手に苦痛を与えてはマイナス。
席に着いたら携帯をテーブルの上に置いたりしてチラチラ見るのもご法度。電源を切ってバックに入れておくのがマナーだろう。
面接中
印象付けようと、大使や大臣などの名を知人として挙げる人がいるが、好感度を自ら下げる行為。また給与に関する質問をするのは面接外で良い。
前職の批判や愚痴といったネガティブ発言は「採用後も同じように不満を抱えるのでは」という懸念に繋がる。
話が長いのもご法度。特に最初に自分の適性や強みをアピールする際2分以上一人で喋り続けるのはやめよう。自己PRが面接官にとって長すぎ退屈と思われる候補者が採用された例はない。
化粧が濃すぎたり、オーデーコロンや香水が強すぎたりすると、不快なだけでなくその印象のみが残る。ネールが奇抜なネオン色の応募者がいたがその色の記憶が後を引いていた経験がある。
面接最後の逆質問
積極的に質問しモチベーションを強調する機会だが、内容も吟味。ホームページを見ればわかる基礎情報を聞くのは勉強不足を暴露しているようなもの。
また「私が採用される見込みはどのくらいですか?」と聞いたり、質問の代わりに「この機関で働くのが夢です!」とか「絶対役に立ちます」とアピールする候補者がいるが、採用側はむしろ引いてしまう。
以上面接で避けたいマナーをいくつか挙げてみた。全部網羅しているわけではないが、これらに気をつけるだけでかなり面接の質は上がるだろう。
応募書類添削中に頻繁に出くわすutilize。大抵useに直すが、疑問に思う応募者も多いようだ。Utilizeとuseの違いは何なのか。
Useは「使う」の意味でほぼあらゆる状況に対応。Utilizeよりずっと古い英語で広範囲に使われるので、ほとんどの場合utilizeを代用できる。
Utilize はuse のフォーマルな形ではなく、意味も同じではない。19世紀、フランス語utiliser (使う )から取り入れられたこの語には、Make practical and effective use of(オックスフォード辞書)という特殊な意味がある。転用や活用の要素を含み、本来の使い方と違った新しい、独創性のある使い方に適用される。以下使い方例。
I use my pen to write a book.
I utilize my pen as a bookmark.
I used my frying pan to cook.
I utilized it as a weapon.
また科学用語として 運用計画が有効活用された場合、化学製品や栄養素が効果的に使用された場合にも使われる。
例 Vitamin C helps your body utilize the iron.
しかし科学論文でなければ、上の文はuseでも代用できる。
履歴書やカバーレターでuse をutilizeで置き換えると、もったいぶった印象になるばかりか英語の間違いまで披露してしまう。
I utilized my networking skills to develop new partnerships.
I applied (or used) my networking skills to develop new partnerships.
よく見かける一番目の例だが、誤用を避けるために、2番目のように書き直すのがお勧め。とにかくどちらを使うか迷ったらuseを使うことだ。
5月19日テルアビブでユーロビジョン・ソング・コンテストが開かれた。この国別対抗歌謡祭、国際関係や文化的多様性、果ては参加国の経済、政治事情まで反映していてなかなか興味深い。
ユーロビジョン・ソング・コンテストは、欧州放送連合加盟放送局によって1956年以来毎年開催されている。世界的にも長寿のテレビ番組で視聴者の数も世界一との由。「ユーロ」と呼称されるが、地理的にヨーロッパである必要はなくイスラエルやオーストラリアも参加。今年は前回優勝者の出たイスラエルで41カ国のアーティストが準決勝、決勝を争った。
審査員票半分、視聴者票半分の合計で順位が決まるが自国のアーティストには投票できない。グローバル化を反映して、一時は殆どの参加者が英語で歌っていたが、最近は個性化を目指し、母国語や架空の言葉で歌うケースも。高得点を目指した無難な王道ポップとショー要素の高い振り付けが大部分だが、差別や女性問題を扱ったメッセージ性の高い歌も増えている。
投票には各国間の政治的、地理的、歴史的関係が微妙に反映。一部の国々は互いに票を入れたり、文化や言語圏の近い隣国に投票したりする。祖国を離れて暮らす移民や少数民族は、居住国(自国)への投票はできないが、出身国に投票するパターンも多い。
経済面もコンテストに影響。欧州放送連合の主要な資金拠出国であるイギリス、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアは自動的に決勝進出できる。歌手にとっては、コンテストでの成績は売り上げアップに繋がるが、出身国にとって勝利は痛し痒し。優勝すると次回の開催国となり莫大な予算がかかるからだ。
ゲスト出演マドンナのバックダンサー2人は手をつないで登場し、背中にそれぞれパレスチナとイスラエルの国旗をつけていた。またアイスランド代表のグループ、Hatari(ハタリ)は得点発表の際、パレスチナの国旗がデザインされたマフラーを広げ、Vサイン。政治的なイベントではないコンテスト場で、世界中にアピールしたハプニングとなった。
優勝はバラード「Arcade」を歌ったオランダ代表のダンカン・ローレンス。2016年のカミングアウト以来、バイセクシュアル(両性愛者)として寛容と理解を呼び掛けてきた。このようにエンタメ目的のソングコンテストであっても、時代の背景を写し様々な課題を投げかけている。
国際機関の採用面接は概ねコンペテンシーベーストだが、それ以外の質問も出ることがある。その中でよく出されるものの一つが、”What are your strengths and weaknesses?”というもの。もっと単刀直入に”What is your greatest weakness?”と聞く機関すらある。ポイントは弱点であって強みではないからだ。
強みは誰でもアピールできる上、すでに面接初期の質問や履歴書で分かっているので優先度は低い。興味の焦点は短所にある。
”仕事熱心すぎで寝食忘れて没頭”、というような長所とも取れる答えをする応募者は多いがあまり感心しない。面接官もその種の回答には慣れているので情報価値がないばかりか、正直さを疑われることもある。
ではどういう弱みを述べるか。空席に書いてある職務直結のコンペタンシーは避ける。例えば広報のポストなのに人前で話すのが苦手といった場合。さすがに国際機関でそういう面接者に遭遇した経験はない。一般的な、しかし本当の弱点をあげ、それを意識し、克服する努力をしていると肯定的に終えるのがコツ。
多い回答例は、仕事の遅い人や進行のないプロジェクトへの忍耐力欠如、同僚に主張できず合わせる、仕事をたくさん抱えてしまう、繊細すぎ、締め切りギリギリでスパートなど。
面接官が注目しているのは弱点の種類や内容ではない。短所を素直に認め、それを克服する努力をしているという自己分析能力や適応、学習能力、円熟度を問いているのだ。将来この人と働きたいと雇用側に思わせるように、誠意のある答えでアピールしたい。