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応募前に、空席広告の最後に書いてある必要な学歴、経験、資格等の基本条件をもう一度チェックしたいもの。これらを全て満たしていなければ、応募しても筆記試験や面接に呼ばれる可能性はほぼない。
「ではAdvantage, Asset, Plus, Desirableと記された条件はどうですか。」とよく聞かれる。競争の激しい昨今、望ましいとされる資格や技能でさえも、なければ筆記試験や面接まではたどり着けない。
プロフィール合致の概念は最近かなり浸透してきたが、まだ現実把握は難しいらしい。「学歴はないが経験でカバー。」とか、「国際レベル経験はないが海外出張している。」という応募理由をよく耳にする。国連採用プロセスの例を取り、なぜ完全合致にこだわるか再度説明したい。
採用必要条件は、学歴、経験、言語の3種類。応募者リストができたら、人事部がそれらを満たしていない候補者をまず除外。その後、雇用上司による筆記試験招待者の選抜があり、上記の望ましい資格や経験のチェックがされる。さらに候補者を絞り込むため、条件に合っていても、その質の高さ(たとえば経験の年数と環境、空席のポストに近い経験かなど)を問われる場合もある。
このような書類選考後、300から400人近い応募者から15人ほどが筆記試験に招待される。筆記試験の結果を見て雇用上司が3人から8人程度最終候補者を選び面接となる。
インターネットの発達で応募者数は激増、また高学歴者が増え、募集広告条件を満たす履歴書は多い。これに内部職員やすでに採用可能者リスト(ロスター)に入っている候補者が加わり競争は激化。
採用プロセスを考慮すれば、資格条件と自分の経歴がマッチしていない応募は可能性が低いことを理解できよう。せっかく労力や時間を費やして応募するのだから、もっと自分の経歴に近い空席を狙うべきだろう。
国際機関の対面面接で守るべきマナーは、基本的に私企業とあまり変わらないが独自のものもある。以下の行為は面接官の心情に悪影響を与えるので気をつけたい。
面接前
面接時間に遅れるのは言外。余裕を持って到着し待機している応募者を、担当官が面接室まで案内することがある。その際面接官の先を歩くと横柄な態度と思われるので注意。この印象が面接中の話す姿勢などとも相まり尾を引くリスクは高い。
握手は適度にダイナミックに。力のない握手も困るが力をこめて強く握りしめ、相手に苦痛を与えてはマイナス。
席に着いたら携帯をテーブルの上に置いたりしてチラチラ見るのもご法度。電源を切ってバックに入れておくのがマナーだろう。
面接中
印象付けようと、大使や大臣などの名を知人として挙げる人がいるが、好感度を自ら下げる行為。また給与に関する質問をするのは面接外で良い。
前職の批判や愚痴といったネガティブ発言は「採用後も同じように不満を抱えるのでは」という懸念に繋がる。
話が長いのもご法度。特に最初に自分の適性や強みをアピールする際2分以上一人で喋り続けるのはやめよう。自己PRが面接官にとって長すぎ退屈と思われる候補者が採用された例はない。
化粧が濃すぎたり、オーデーコロンや香水が強すぎたりすると、不快なだけでなくその印象のみが残る。ネールが奇抜なネオン色の応募者がいたがその色の記憶が後を引いていた経験がある。
面接最後の逆質問
積極的に質問しモチベーションを強調する機会だが、内容も吟味。ホームページを見ればわかる基礎情報を聞くのは勉強不足を暴露しているようなもの。
また「私が採用される見込みはどのくらいですか?」と聞いたり、質問の代わりに「この機関で働くのが夢です!」とか「絶対役に立ちます」とアピールする候補者がいるが、採用側はむしろ引いてしまう。
以上面接で避けたいマナーをいくつか挙げてみた。全部網羅しているわけではないが、これらに気をつけるだけでかなり面接の質は上がるだろう。
応募書類添削中に頻繁に出くわすutilize。大抵useに直すが、疑問に思う応募者も多いようだ。Utilizeとuseの違いは何なのか。
Useは「使う」の意味でほぼあらゆる状況に対応。Utilizeよりずっと古い英語で広範囲に使われるので、ほとんどの場合utilizeを代用できる。
Utilize はuse のフォーマルな形ではなく、意味も同じではない。19世紀、フランス語utiliser (使う )から取り入れられたこの語には、Make practical and effective use of(オックスフォード辞書)という特殊な意味がある。転用や活用の要素を含み、本来の使い方と違った新しい、独創性のある使い方に適用される。以下使い方例。
I use my pen to write a book.
I utilize my pen as a bookmark.
I used my frying pan to cook.
I utilized it as a weapon.
また科学用語として 運用計画が有効活用された場合、化学製品や栄養素が効果的に使用された場合にも使われる。
例 Vitamin C helps your body utilize the iron.
しかし科学論文でなければ、上の文はuseでも代用できる。
履歴書やカバーレターでuse をutilizeで置き換えると、もったいぶった印象になるばかりか英語の間違いまで披露してしまう。
I utilized my networking skills to develop new partnerships.
I applied (or used) my networking skills to develop new partnerships.
よく見かける一番目の例だが、誤用を避けるために、2番目のように書き直すのがお勧め。とにかくどちらを使うか迷ったらuseを使うことだ。
5月19日テルアビブでユーロビジョン・ソング・コンテストが開かれた。この国別対抗歌謡祭、国際関係や文化的多様性、果ては参加国の経済、政治事情まで反映していてなかなか興味深い。
ユーロビジョン・ソング・コンテストは、欧州放送連合加盟放送局によって1956年以来毎年開催されている。世界的にも長寿のテレビ番組で視聴者の数も世界一との由。「ユーロ」と呼称されるが、地理的にヨーロッパである必要はなくイスラエルやオーストラリアも参加。今年は前回優勝者の出たイスラエルで41カ国のアーティストが準決勝、決勝を争った。
審査員票半分、視聴者票半分の合計で順位が決まるが自国のアーティストには投票できない。グローバル化を反映して、一時は殆どの参加者が英語で歌っていたが、最近は個性化を目指し、母国語や架空の言葉で歌うケースも。高得点を目指した無難な王道ポップとショー要素の高い振り付けが大部分だが、差別や女性問題を扱ったメッセージ性の高い歌も増えている。
投票には各国間の政治的、地理的、歴史的関係が微妙に反映。一部の国々は互いに票を入れたり、文化や言語圏の近い隣国に投票したりする。祖国を離れて暮らす移民や少数民族は、居住国(自国)への投票はできないが、出身国に投票するパターンも多い。
経済面もコンテストに影響。欧州放送連合の主要な資金拠出国であるイギリス、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアは自動的に決勝進出できる。歌手にとっては、コンテストでの成績は売り上げアップに繋がるが、出身国にとって勝利は痛し痒し。優勝すると次回の開催国となり莫大な予算がかかるからだ。
ゲスト出演マドンナのバックダンサー2人は手をつないで登場し、背中にそれぞれパレスチナとイスラエルの国旗をつけていた。またアイスランド代表のグループ、Hatari(ハタリ)は得点発表の際、パレスチナの国旗がデザインされたマフラーを広げ、Vサイン。政治的なイベントではないコンテスト場で、世界中にアピールしたハプニングとなった。
優勝はバラード「Arcade」を歌ったオランダ代表のダンカン・ローレンス。2016年のカミングアウト以来、バイセクシュアル(両性愛者)として寛容と理解を呼び掛けてきた。このようにエンタメ目的のソングコンテストであっても、時代の背景を写し様々な課題を投げかけている。
国際機関の採用面接は概ねコンペテンシーベーストだが、それ以外の質問も出ることがある。その中でよく出されるものの一つが、”What are your strengths and weaknesses?”というもの。もっと単刀直入に”What is your greatest weakness?”と聞く機関すらある。ポイントは弱点であって強みではないからだ。
強みは誰でもアピールできる上、すでに面接初期の質問や履歴書で分かっているので優先度は低い。興味の焦点は短所にある。
”仕事熱心すぎで寝食忘れて没頭”、というような長所とも取れる答えをする応募者は多いがあまり感心しない。面接官もその種の回答には慣れているので情報価値がないばかりか、正直さを疑われることもある。
ではどういう弱みを述べるか。空席に書いてある職務直結のコンペタンシーは避ける。例えば広報のポストなのに人前で話すのが苦手といった場合。さすがに国際機関でそういう面接者に遭遇した経験はない。一般的な、しかし本当の弱点をあげ、それを意識し、克服する努力をしていると肯定的に終えるのがコツ。
多い回答例は、仕事の遅い人や進行のないプロジェクトへの忍耐力欠如、同僚に主張できず合わせる、仕事をたくさん抱えてしまう、繊細すぎ、締め切りギリギリでスパートなど。
面接官が注目しているのは弱点の種類や内容ではない。短所を素直に認め、それを克服する努力をしているという自己分析能力や適応、学習能力、円熟度を問いているのだ。将来この人と働きたいと雇用側に思わせるように、誠意のある答えでアピールしたい。
仕事柄応募書類によく目を通すが、UNICEF就職希望書が日本人の若い層で圧倒的なのに驚く。ユニセフ邦人職員数も88名と国連機関中第二位で、全体職員への割合からすれば一位の国連より高い。人気の原因は何だろう。
国際連合児童基金(UNICEF)は1946年、戦争の被害を受けた児童救済の緊急措置として設置され,その後国連の常設機構となった。1965年にはノーベル平和賞受賞。日本の子供達も第2次大戦後脱脂粉乳や医薬品などを援助されたほか、2011年の東日本大震災時にも緊急、復興支援を受けている。
ユニセフは「すべての子どもたちの権利が守られる世界を実現する」ため,190 以上の国で保健,栄養,水・衛生,HIV/AIDS,教育,子どもの保護,社会的包摂等の分野で活動。自然災害や武力紛争,感染症流行時の緊急人道支援から中長期的な開発支援までプログラムは幅広い。途上国政府への政策の提言,立案, 実施や国際社会に対するアドボカシー(啓発活動)も実施。官民連携等,多様なパートナーと協力し,国連機関中最も多いSDGs分野をカバーしている。
人道、開発支援両軸に発揮されるユニセフの実行力は国際的にも高く評価されている。日本政府が主導する「人道と開発,平和の連携」の実践にも大きく貢献しており、その知名度と発信力の高さで日本の国際社会への貢献を効果的にアピールしている。
ユニセフへの2017年拠出金は日本政府が1億7100万ドルで世界7位、日本ユニセフ協会(国内委員会)を通じた民間では1億3500万ドルとアメリカに次ぎ世界2位だ。赤い羽根等募金運動やユニセフ親善大使、寄贈プログラムやユニセフグッズ、クリスマスカードまで、バラエティに富んだ日本ユニセフ協会の集金能力は在日国際機関中断然トップ。
このようにユニセフは日本人にとって身近に感じられる機関であり、政治的にも、資金面でも結びつきは強い。またポスト数も多くJPO向け情報発信セミナーなど、邦人採用に積極的なところも人気の理由だろう。
平均寿命が延び、公務員の退職年齢も引き上げられている昨今、キャリアも多様化し転職者も増えている。JPOやYPP等の若手対象競争試験の年齢制限を過ぎてからの国際機関就職も考慮したい。35歳以降の国際機関への採用に、最近外務省も力を入れつつある。
2017年の国連アポイントメント数4330のうち、一番多い年齢層は30から34歳で延べ923人だが、35から39歳採用とは900人という微差。3番目は40から44歳グループで任命数696と、ミドルへの門戸が広いことがわかる。
35歳からの国際機関就職の道として考えられるのは、
個別空席広告に応募(外務省から幹部ポスト空席情報あり)
PKO等の特別ミッションのロスターに応募
国際機関の来日採用ミッションに応募
UNVに専門家として登録、特に邦人対象ポストの提示に注意
短期ポスト、コンサルタント、技術協力専門家等に登録、応募
政府、公共機関等からの派遣
世銀グループの邦人向けミッドキャリアポストに応募
広島平和構築人材育成センターのプライマリーコースに参加し、一年間UNV派遣者として国際機関でボランタリー活動をする(39歳まで)
などで、可能性は多様。
国際機関専門職ポストで一番空席広告の多いグレードはP3かP4なので、5 年以上スペシャリストとして経験を積んだ中間管理職者は理想的プロフィール。学位と職務経験が同一分野であり、関連分野でかつ、国連に類似した活動や環境での経験であれば有利だ。
国際機関でのインターン、ボランタリー、コンサルや短期採用、民間のシンクタンク、官公庁関係、多国籍企業、在外公館調査員、派遣員、JICA、海外青年協力隊、開発コンサル、NGO、NPO、国際法律事務所、銀行などでの経験は有効。広島平和構築人材育成センターの研修以外は、海外での職務経験がないと選考されるのは困難だ。
また国際機関とのパートナー業務や、国際会議運営委員会のメンバーとなった経験等は貴重。海外研修や会議参加, ボランタリー活動等で国際機関と接触する機会があれば進んで活用したいものだ。
応募書類添削中、10未満の数字をアルファベット表記しているケースに遭遇することがある。文法的には正しく直す理由はないのだが、読みにくいのが難点。今回は履歴書やカバーレターによく使われる数字の表記に注目した。
英語の数字表記は色々なスタイルがあり、ウェブの発達やグローバル化に伴い簡略化される傾向にある。ここでは、国連の編集マニュアルを主に参照。
文章中1から9まではアルファベット表記、10 から 999999はアラビア数字というのは正統ルール。だが履歴書は数字統一で良い。職歴や業績を具体化し、読み手を印象つけるための量、時間、額等が、アルファベットに埋もれてしまい目立たなくては、効果が低いからだ。読みやすさとスペース節約に数字は有効。
同文で色々な数値が使われる時は、大きい数の表記法に合わせるのが基本。計量単位やパーセントがつく場合、選挙結果等も10未満で数字表記となる。ただし同じ種類に属さない数字が同時に入る文は、一方をスペルアウトし混乱を避ける。
例 Twenty 100-mm mortars; 15 five-year-old girls
序数は9までの数字をアルファベットにした場合、first, second, third…と統一する。国連では数値の大小にかかわらずcommittee, sessionはアルファベットmeetingはアラビア数字使用。
例 The fifty-seventh session of the General Assembly; 2nd meeting
例外は文章の始め。10以上でもアルファベット綴りにする。今日このルールは無視されることも多いが、数字を文頭に使うのは避けたほうが無難。
応募書類に具体的な数字を入れると、職歴や業績が生きてくるし、カバーレターのアピール度も上がるもの。十分に使いこなし、成果をあげたい。キャリア国際機関での添削サービスも利用してほしい。
最近よく聞くビデオ面接。スカイプ等でのライブ面接ではなく、録画にして採用側に送る形式を指す。本番の面接用候補者を絞り込むために、筆記試験の代わり、またはそれと合わせて行われる。
国際機関で使っているのはOECD, Green Climate Fund, IAEA, EMS, CTBTOなど。OECDではヤングプロフェッショナルのスクリーニングに使っているようだ。ビデオ面接用アプリは多数出回っているが、国際機関ではSonru使用が目立つ。
私企業と違い、上記機関では専門分野の質問を出すところが多く、時間は最大20分ほど、質問は5問程度。応募者は予め録画された設問に2分程度で応えていくが、やり直しが効かないので注意。面接用アプリの説明を理解し、テスト質問をこなしてから始める。
ビデオ面接には、時間や距離に関係なく面接ができ低コストというオンライン面接の長所に加え、関係者のスケジュール調整不要、同じ質問が全応募者に出され公平、いつ何度でも面接をリビューできる、といった魅力がある。特に応募者数の多いポストのスクリーニングには便利だろう。
応募者にとっての利点は自分の好きな時に始められる所。3日程の期間内にアプリにアクセスする。専門知識を試される質問が主だから、簡潔明快な話し方は大切。テスト質問でもある程度調整できるが、説明の仕方や速度、ジェスチャー、照明、音質等は前もってチェックしておきたい。最後に質問やコメントを自由に述べさせる機関もあるので、その対策も考えておこう。
採用側にとっては利点の多いビデオ面接。今後も取り入れる国際機関は増えると思われる。相手のいない一人舞台で戸惑いがちだが、成功し最終面接に繋げたいものだ。