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小島晶子は、国際機関の人事政策と戦略、組織開発、人材雇用育成に25年以上の経験を持つシニアの人事スペシャリストです。彼女はUNHCR(国連高等難民弁務官)、UN(国連)、ITU(国際電気通信連合)および, 雇用 , キャリアマネジメント、研修課課長であったOECD(経済協力開発機構)などに勤務しました。人事コンサルタントとしてUNISDR(国連国際防災戦略プログラム)、DNDi(Drugs for Neglected Diseases Initiative)とSotelGui(ギネアコナクリテレコム)などさまざまな国際機関、非政府機関で働いています。

候補者不足のポスト

UNIFIL Head of Mission and Force Commander Major-General Luciano Portolano, Brigadier-General Franois Chahine and Deputy Head of Mission Mr. Imran Riza participating in releasing doves at the end of the ceremony held at UNIFIL Headquarters in Naqoura, south Lebanon. September 21, 2015. Photo by Pasqual Gorriz (UN)
UNIFIL

UNJOB FINDERの記事に候補者探しが困難とされている国連空席のプロフィールが挙げられていた。空席がなかなか埋まらない職種とはどんなものか、邦人に応募可能なものをピックアップしてみた。これらに求められているプロフィールに合っていれば、採用されるチャンスは比較的高いということになる。

緊急事態発生中の国で勤務可能の女性警備担当官候補は不足している。専門職だと政治学、MBA, 犯罪学、法学等の修士の他に自衛隊や警察等での経験が必要とされ、P3レベルであれば5年中最低1年の国際経験が求められる。女性には稀な経歴だが、そもそも紛争や緊急事態発生中の国へ転勤希望の女性は他の職でも簡単には見つからないようだ。

DPKO平和維持活動担当官も女性の候補者が少ないポストでとくに管理職レベルは不足している。平和維持活動の人材ニーズは軍縮、裁判、政治学専門家等多様であり、軍人だけが求められているわけではない。物資調達やアドミニストレーション担当は、その分野の専門家であれば警察や軍での経験は必要ない。しかし国際レベル、公共事業での経験および緊急事態での経験が要求される。

身近な職種でありながら女性の少ないものにIT (コンピューター関係)がある。どこの機関にもあり需要の多いポストだが男性職員が大多数を占めている。日進月歩のこの分野では修士より学士で仕事を始める職員が多いので、女性でIT関係の修士をもち、十分な経験があれば採用されるチャンスは高くなるだろう。

以上の職は女性でなくとも日本人は少数派だから応募はお勧めである。OECD時代には新しいIT空席の度に日本人候補者の有無を聞かれたくらいであった。

妊産婦健康管理専門家は医学の学位だけでなく、公衆衛生の学位も歓迎される。これらの仕事はエボラ発生等の緊急事態に大量に必要とされるプロフィールで、たださえあまり登録者のいない領域だから、短期採用で構わないという専門家にとってはチャンスだろう。また医師は万年供給不足で、とくにUNVにボランタリーで医者として働くことを志願するものは稀と聞く。登録してみる価値はあるだろう。

アドミニストレーションの管理職レベルというのも以外に候補者層は薄い。人事、財政、資源調達、ロジなど全ての領域にわたって知識、経験のあるものは少ないし、このレベルだと年数だけではなく管理職としての経験の量と質が問われるから、内部の職員でも各当するものは多くない。日本人それも女性であれば有利といえよう。

職種全般にわたり女性の高級管理職、いわゆるダイレクターレベルは予備軍不足であるが、男性が優位に立てる例外として人事がある。これは伝統的に大多数が女性だから、邦人男性にはよいニュースだろう。同じような職に図書館司書や、文書担当官があるが、ポスト数自体が少ないので機会は限られてしまう。

応募やキャリアについてのアドバイス希望者はこのサイトのリソースセンターにあるコンタクトフォームを利用していただきたい。

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空席広告の探し方

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空席広告の探し方はいろいろあるが、大抵の人はまず就職希望の国際機関のサイトにアクセスするのではないだろうか。しかし希望の職種がその機関だけに存在するとは限らず、意外な国際機関で同じような空席があったりする。現在はどの機関でも任務が複雑かつグローバル化している傾向にあるので、同じような職が多数の機関に散らばっているケースは多い。

例えば公衆衛生の専門家はWHOだけで求められているわけではなく、UNICEFであったり、IOM, UNDPで募集していたりしている。防災関係分野にしても、UNISDR, UNDP、UNEP, ADB等あちこちにみられる。

これらをもれなく調べるには決まった機関のサイトを利用するだけでなく、職種別に空席広告をチェックするのが近道だろう。例えば外務省の国際機関空席のエクセルシートをダウンロードし仕事タイトル別に検索する方法がある。またICSC 国際人事委員会のジョブネットhttps://jobs.unicsc.org/ はグレードや勤務地だけでなく職種別に空席を選別できる。UNJOBS http://unjobs.org/のサーチエンジンでは職名を入力すれば国際機関、NGO等の空席が広い範囲で検索できる。ただし過去の空席等も入ってしまうので注意が必要だ。

この他、人道関係の職捜しであればUNOCHA http://reliefweb.int/jobs,  UNISDR http://www.preventionweb.net/english/professional/jobs/ の空席サーチエンジンも包括的に空席広告データを提供しており、ある程度まで選別が可能である。これらのサイトは国際機関以外の空席広告が充実している。

他にも利用できるサイトは多々あると思われるので、ご存じの方はこのページでシェアして頂きたいと思う。またある程度機関を限定できたら、アラートシステムを積極的に利用して自分のプローフィールにあった空席の情報を早く確実に入手できるようにしたいものだ。

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米ヘルムズ議員の国連叩き

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アドバイザー春氏の投稿です。

結構前の話になるが、90年代国連はアメリカ共和党ヘルムズ氏の先頭するバッシングに会い、国際機関全体が影響を受けた。当時の国連事務総長ブトロス・ガリ氏の、国連が中心となって冷戦終了後の国際秩序を模索していくべきだという野心的なビジョンは、ヘルムズ氏の保守思想をいたく刺激し、アメリカ議会は国連と衝突の道をとるようになった。1996年『Foreign Affairs』誌掲載のヘルムズ議員のガリ氏に対する以下の反論後、議会は国連の分担金を大っぴらに滞納するという挙に出た。

「最近の国連は加盟国諸国家のための機関というよりそれ自体がひとつの国家になってしまったような観がある。独自の軍隊を持ちたいといってみたり、税金を徴収したいなどといったり、いったい何様のつもりなのだろう。ガリ事務総長は冷戦の終了とともに国家の絶対主権の時代は終わった、という。たしかに今日、我々の抱える諸問題はグローバルなもので国境を越えた対応が必要である。しかしそれは諸国家が主権を国連のような国際機関に委譲すべきだという議論には繋がらない。例えばイスタンブールで開催されたHABITAT II。ここでのテーマは都市の抱える問題だったが、これなどは国連が扱う前に、国家、それ以上に地方自治体がまず考えるべきローカルな性格の問題ではあるまいか。国連がどこにでもしゃしゃり出てくるようになったのはブトロス・ガリ氏が事務総長になってからのことである。

とにかく現在の国連機関は間口を広げすぎている。宇宙の平和利用委員会に「なにびとも大気圏外から侵入してくる不審な物体を目撃したときにはただちに事務総長に報告しなければならない」という決議がある。UFOが目撃された時のために予算がつき、職員が待機しているのだ。これは事務局の経営形態が放漫であることもだが、国連の官僚達が「国際」とつけば何でも自分たちの仕事だと思いこんでいるからで、加盟国国民の税金を、勝手な事業を作って独りよがりに使いまくっている例である。

昨今のPKOなどは当初の意図から全くはずれ、選挙管理から難民の世話、国の復興事業までも「平和維持」の名のもとに行なおうとしている。このように勝手に拡大された定義にカネをだせ、などと云われてはたまったものではない。拠出金はアメリカ国民の血税なので、アメリカ国益にかなった使い方がされるべきだ。これらへの対処法として、アメリカが国益にそわないと判断したプロジェクト(例えばPKO)にはカネをださないというやり方はどうだろう。プロジェクトの財政は、安保理や総会で賛成した国々だけが受け持てばよい。こうすれば本当に必要なプロジェクトしか行なわれないし、野放図な国際官僚の専断もコントロールできるというものだ。」

ヘルムズ論は国連、国際機関は「外交の手段であって、それ自体が目的ではない」という視点から、「外交の道具としての国際連合」という概念を示唆している。日本にとっての国連およびその事業と国益の結びつきを考える際、オカネやヒトをだし貢献する、すなわち使われる、ということでなく、国連機関を「あやつる」くらいの気合で国益達成に向けて成果をあげる、という外交技術の問題が提起されているように思えるだ。

90年代の国連はヘルムズ氏の強引な理論と実践の犠牲者であったが、彼の言動は、ガリ国連事務総長の組織のキャパシティを無視したビジョンに対し、毒をもって毒を制したというか、効果的にブレーキをかけたという見方もできる、と考えている。

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筆記試験 その2

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前回採用プロセスの一部である筆記試験について書いたが、これはその続編である。

最近は国際機関ポスト応募者の数と質が上がってきているので、筆記試験実地のケースが多くなってきているようだ。通常筆記試験には応募書類でスクリーニングを通過した人が招待され、結果が良ければ最終選考者リスト(ショートリスト)や面接に残ることになる。また面接と同時に筆記試験を実地し両方の結果を最終選考の判断に使う機関もある。とにかく履歴書選考を突破したわけだから、一歩採用に近くなったといえよう。

筆記試験の問題、採点をするのはたいてい雇用マネージャーである。面接パネルのメンバーにもテストの評価をさせ比べるという場合もあるが、専門性の高いものなので主導権は募集ポストの上司が握っている。国連の場合だと専門知識に関するテーマを2問程度電子メールを通じて出題し、エッセイ形式の答えを書かせるケースが多いようである。普通は2時間程度を要する。専門分野の知識を応募中の機関の環境に応用した問いが、よく見られるパターンといえる。例えばある特殊分野における国際協力の重要性につき論理展開し某機関の重要なパートナーへの働きかけの戦略を述べよ等の問題が典型的な例だろう。

国連雇用側マネージャーの手引きによると、採点で基準となるポイントは、考え、表現の明確さ、論理的かつ順序だててアイデアを簡潔に表明できる能力、必要な情報を最大限使いつつ見解主張をはっきり述べれる能力、ワードを使いこなせる能力(これによりスペルや文法のミスもある程度防げる)、論理的、分析的思考、そして英作文の技量となっている。ただしこの複雑なマニュアルに採用マネージャーが忠実に従うわけではなく、どのポイントに重きをおくかはすマネージャー次第である。実際には専門知識、分析、論理的思考そして英文作成能力の3点が目安となっている場合が多いようだ。

筆記試験の通知が来てから急に準備ができるものではないが、課題になりそうなトピックは空席広告からヒントを得られるので少なくても参考書類、サイト等の整理をやっておき、短い試験時間中に情報サーチ等に時間を取られないようにしておくべきであろう。応募機関の主な活動、環境等を熟知しておくのは言うまでもない。英語の洗練されたエッセイである必要はなく、簡潔かつ筋道のたった文章で意見を解りやすく伝えるよう心がけよう。答え自体はよくできているのだが、質問の本質からずれているケースもよく見られるので、最後に試験官の立場に立って、自分の論文が質問に答えているかのチェックをすべきであろう。

 

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国際機関でのキャリア開発

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国際機関の任務、機能は国際政治経済情勢の変化そして情報化、科学技術化、グローバル化等に影響される。それに伴い機関自体の構造の変化、役割の複雑化や多様化、地理的条件、予算やポストの不安定化など様々な要素が、採用条件、求められるプロフィール、そして職員のキャリアに反映されてくる。

国際公務員のキャリア開発の例を見ると、かっての同じ場で専門家として成果をあげ幹部レベルまで昇進、というパターンはどんどん少なくなっている。国連に関していえば、プログラム遂行に必要な仕事が多様化し、専門家と総合職の境界がつけにくくなってきている時代でもある。また可動性のないキャリア開発は難しくなってきている。

キャリアパスや専門分野、仕事環境等が複雑化し、明確で予測可能なキャリアプランが立てにくくなっているのも特徴である。ただし変化のタイムスパンは早くなっているので、頻繁なプラン調整が必要となる。

これらの傾向は国際機関だけでなく、グローバルな人材市場に見られるものだろう。このようにキャリアの多様性、不確実性が高まる中で、変化に柔軟に対応し、自分でキャリアを開拓していくという資質がより求められてきたといえよう。

国際機関でのキャリア開発は、機関、上司、本人という3部構成になっている。組織のキャリア開発サポートと上司はキャリア開発の重要な助けである。ただし、国際機関の人材政策でも « キャリアは自分で作るもの »と、個人の最終責任を明確に打ち出している。これからのキャリア開発には、自分の市場価値を常に高めつつ周囲のサポートを利用していく、という態度がより重要となるだろう。

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空席公募の締切日

応募の締切り日

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国際機関の空席公告にはなるべく早く応募した方がいいというのが一般的なアドバイスであろう。それに反して現実では、広告が出次第即応募する者は全体の半分に満たないといったところだろうか。何しろ締切ぎりぎりに大量の応募書類が届くから、雇用側の上司も全体像を把握するのは応募期間が過ぎてからになる。期間途中で応募状況をチェックしたり、一部の応募書類を見たりはしても、書類のスクリーニングを始めるのは締切すぎである。とくに内部職員やすでにロスターに登録されている応募者は締切日にどっと押し寄せる傾向があり、スクリーニングする側泣かせだ。

この締切日であるが、一体指定された日の何時に閉まるのだろうか。

国連空席公募サイトに掲載されているポストだと、勤務地がどこであれ、空席広告はニューヨーク時間の真夜中に取り除かれそれが締切時間となっている。時差の関係でジュネーブ在住のものにとっては翌朝まで同ポストに応募できることになるわけだ。国連のように本部の所在地の現地時間の真夜中、あるいは23時59分をもって締切日としている機関は、FAO, ILO, AFDB, OECD, UNESCO, WBなど多数でもっとも多いパターンだろう。

IAEAは空席広告発行の時間と締切の時間を表示している。発行された時間帯により締め切り時間も2種類に分かれており、12.59amまたは 11.59pmとなかなか設定が細かい。

ADB は締めきり時間をオフィス終了時間に合わせてか、マニラ時間の午後5時としている。

空席公募のサイトに締切日の時間まで載せていない国際機関も多く、IMF, UNDP, UNHCR, WHO, WIPO などでは特に指定が見られなかった。現地時間の真夜中と想像はできるが、リスクやストレスを避けるためにもそれまで待たない方が賢明であろう。

締切日当日の応募はネットワークやパソコンに問題が生じた場合等、予想外のトラブルに時間がかかってしまう可能性もあるので避けたい。いずれにせよ応募書類は余裕をもって準備し、遅くても締切日の一日前までには応募を完了したいものだ。

 

 

 

 

 

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国際機関でよく耳にする表現

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国際機関のコミュニケーションは主に英語でなされる。英語が堪能とはいえ、母国語ではない職員も多いし、勤務地のローカルな言語からの影響もありキングスイングリッシュばかりが使われているわけではない。長く勤務しているとその機関独特の語彙に気がついたりして興味深い。以下の表現は記憶に残っているものの一部である。

High-maintenance

維持の手間がかかるという意味の言葉だが、人事部で使用する場合は常に注意の必要な職員をさす。例えば自分の待遇条件等に、頻繁に質問や不満を発する者や、感情の起伏が激しく上司や同僚と衝突の多い者、勤務成績や態度に問題があり定期的なモニターが必要な職員など。どこの会社や機関にも大抵何人かいる、世話のやける困ったさんのことである。機関や部署により、その手の職員の割合は微妙に異なると言えよう。まあ、ハイメインテナンスと言われないよう気をつけたいものだ。

Catch-22

第二次世界大戦中のアメリカ人飛行士の小説の題から有名になったこの言葉は矛盾していて出口のない状態を指す。小説中の奇妙な軍規22項(狂気に陥ったものは自ら請願すれば除隊できる。ただし、自分の狂気を意識できる程度ではまだ狂っているとは認められない)に翻弄され除隊できない主人公の例のごとく、2つの相反する要求のジレンマから解決不可能となるケースは国際機関でもよく見られる。例えばフィールドのポストに応募したが、フィールド勤務経験がないという理由で不採用になった場合とか、予算がもらえずプロジェクトが始められないがプロジェクト不在のため予算獲得ができない例等。国連でのキャッチ22という表現は悲しいながら何となく現実離れしたコミカル感も漂い、官僚主義にお手上げという語り手の気持ちが感じられる。

Take it from there (here)

そこ(ここ)から始めよう、またはそこ(ここ)から続けようという意味。建設的かつ肯定的な響きをもったこの表現はどんな状況でも都合よくピタッとはまり、特別提案することがない場合など、とくに重宝される。そのためか会議や、打ち合わせ、メール等で結構よく使われている。ただしそこ、ここというのが何をさすのかはっきりしない場合も多く皆が同じことを理解しているかどうか心もとない。そことはどこか、という質問がでることがほぼないのも不思議である。文化、習慣の違いを乗り越えての以心伝心が可能なのか、それぞれが違うことを理解し他人もそうだと信じ切っているのか、知るのがちょっと怖いような気もする。

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民族衣装のメッセージ

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今回はアドバイザー、春具氏の投稿です。

国際機関というところは本当に民族衣装のオンパレードで、会議だけでなくレセプションなども民族衣装のキャットウォークといってもよい。民族衣装は強烈なファッションステートメントであり、政治的ステートメントでもある。

民族衣装の政治的効果は絶大だ。アフリカ、アラブ諸国の代表たちとかインド、パキスタンの外交官や歴代の首脳は民族服の常用者であり、それがそのままトレードマークになっていた。リビアのカダフィ大佐やナイジェリアのオバサンジョー大統領が彼の地の伝統的な装いで壇上にあがり演説すると、西洋のスーツなど霞んでしまう。外交の場では民族衣装は強力なパワースーツだ。

国際機関の会議の場においてメッセージを伝える道具はスピーチだけではない。コミュニケーションの方法に non-verbal communicationというジェスチャーや態度での伝達法があるが、民族衣装はまさにこの役割を果たしているわけだ。
スピーカーは単純に自国の伝統を表示するために国民服や宗教的な衣装をまとって出てくるのではない。意気込みや信念を明確に伝えんとして着てくるのだ。民族衣装でなされるスピーチはパンチがあり、なによりも視覚的に説得力がある。

この視覚効果をメディアを通じて利用した政治家はインドのマハトマ・ガンジーだろう。ガンジーは独立運動の際、貧しい国民にアピールするためインドの民族服で国民の前に立った。ガンジーの腰布姿の写真は、彼の無抵抗主義思想をビジュアル化したようなもので、国際社会へのインパクトは相当なものだった。

事務局をみまわしてみてもナショナルコスチュームで出てくる国際機関職員というのは結構いる。アオザイやチャイナドレスを着てくるアジア人女性やサルワー・カミーズというパンツ・スーツで勤務するインドの女性にはよくお目にかかる。アフリカの同僚は、夏場にはうらやましいくらいクールビズそのままの風通しのよさそうな衣装で出てくる。キタンゲとよばれる典型的なアフリカのドレスであろうか。このように自らの文化に馴染んだふだんの衣装のほうが能率良く仕事できるという実用性、そしてその背後にある異文化、多様性を許容しているのが国際機関の魅力であろう。

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スカイプでの面接

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最近は電話やスカイプ等を使っての面接が増えている。前回の電話での面接に続き、今回はスカイプやビデオでの面接について考えてみたい。電話やスカイプ等を使っての面接への対応は基本的には直接の面接と同じだが、より高いコミュニケーション能力と念入りな準備が必要だといえる。面接そのものの準備に加え、スカイプでは環境等の整備が電話の際よりもっと重要なものになるだろう。

環境をチェックしておいて面接中思わぬ邪魔が入ったりしないよう心掛ける点は電話と変わらない。映像背景はなるたけシンプルなもので、個人的な装飾品や書類、文具等のごたごたが映らないように整えよう。音響、映像の調整は余裕をもってやっておこう。スカイプアカウントのユーザー名、写真等も前もって確かめておいて、面接にふさわしいプロらしい名前のものを使いたいものだ。ドレスコードは直接の面接と同じと考えていいだろう。下半身は見えないつもりでもパソコンの調整等で立ってしまえば全身が映ることになるので注意がいる。また面接中にキーボードを触ったりたり他のアプリをクリックしたりは好印象を与えない。

スカイプ面接では最初の好印象を与える時間が直接の面接よりずっと短い。アイコンタクトと微笑みをウエブカムに向けて発信すること、姿勢を正し胸を張ってはっきり話すことが必要だろう。また映像があるとはいえボデイランゲージは伝わりにくいので、声の出し方やペースで動機やエネルギーの高さを面接官に印象ずけるところは電話と似ている。

スカイプ面接にはどこを向いて話すかいう戸惑いがある。どうしても面接官のいるスクリーンばかり見がちだが、カメラの方を向いて話すのを忘れないようようにしよう。自分と面接官という二つの映像への対応がスカイプ面接の特徴であり、デリケートな点でもある。電話面接と同じでコネクションの問題が生じたらなるべく早く面接官の注意を促し、必要なら電話に切り替える等の可能性も頭にいれておくべきだろう。

スカイプの面接は慣れるまで結構違和感があるものだ。面接の不安を取り除くためにも、家族や友達を使ってスカイプ面接を実際に試してみよう。同じ条件でリハーサルしておけば精神的にもゆとりがでてくることと思う。

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人前で話す力

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今回はフォーリンプレスセンター所長、赤阪 清隆氏の投稿です。

人前で上手に話せるようになりたいと思うのは、万人共通の望みであり、悩みです。グローバル人材,特に国際機関の職員になるために一所懸命努力されている皆さんにも、ぜひコミュニケーション能力の向上に心掛けてもらいたいと思います。国際機関の採用試験では面接がきわめて重要ですが、そこでは話下手の多いわれわれ日本人は大変苦労をしています。私自身、面接に何度も立ち会いましたが、日本人の候補者は、自己主張が弱く、かつ自信のなさが目立ちました。常日頃学校や職場では、「聞く力」が重要視されていても、「話す力」を磨く訓練がなされていないからでしょう。(管理人注、前に掲載された、国際機関面接最初の3分間電話での面接の記事も合わせてご覧ください。)

私は、幸い、これまでの国際機関などでの勤務を通じて、話し上手な世界の指導者等を身近かに観察する機会に恵まれました。その経験をもとに、こういう人たちから話し上手になるコツを学びましょうという趣旨で、最近、新著「世界のエリートは人前で話す力をどう身につけるか」を河出書房新社よりを上梓いたしました。国際機関での勤務を目指す皆さんに少しなりともお役にたてば幸いです。皆さんのご健闘を祈ります。(拙著は、アマゾンあるいは楽天からもご入手いただけます)。リンクはこちらから。

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