Tag Archives: 国際機関

国際機関職場の多様性と包括性

social-networks-550774_1280

国際機関の職場環境の特徴の一つに、職員の多様性がある

何しろ100ケ国以上の異なった国籍や文化の背景を持った人々が同じ職場で協力しあいながら仕事の成果を上げていくわけだから、共通語を使ってはいても誤解やすれ違いは免れない。反面意見や考えの違う同僚と議論しているうちに、相互理解が深まったり、斬新なアイデアが生まれたりもする。異文化間グループは効率が悪いが、いったん共通項が生まれれば、逆境に強い臨機応変なチームに変化する可能性もある。

多様性は国籍や文化、民族、ジェンダーに限らず、セクシャルオリエンテーション、身体障害等広い範囲に及ぶ。現在大抵の機関ではpeople from all backgroundsとか diverse workforceと広く定義して空席公募の際に明記している。

またILOのようにage, race, gender, religion, colour, national extraction, social origin, marital status, pregnancy, family responsibilities, sexual preference, disability, union membership or political convictionといった要素で採用に差別されることはないと細かくリストアップしている機関もある。

その機関の多様性、そしてそれを受け入れ生かしていく包括性のレベルを測るために、関連政策や戦略、職員統計の分析等がよく利用される。情報収集分析も大事だが、多様性、包括性を感じるには職場を訪問してみるのが手っ取り早いだろう。VIPの写真に女性の多いところ、オフィスにいる職員が多様で車椅子にのった職員が行き来していたりするところ、ホモセクシャルの職員が普通に扱われているところ等、多様性の推進されている職場は雰囲気がフレンドリーで開放的なことが多い。またそういう機関は大抵人事制度も洗練されていて近代化されている。

多様性、包括性を推進するには時間も予算もかかり、かつ短期には結果が出にくい。また上記したように、多様性に富んだチームは始めは効率性が低い。しかし懐の深い受け入れをする職場には優秀な人が惹かれ集まってくる可能性が高いし、複雑化多様化グローバル化した職務に対し職員が創造性や耐久力を発揮する場合が多い。国際機関は、加盟国の職員を採用し、その国の期待に応えるだけでなく、各国の公務員制度の手本としても職場の多様性、包括性に力を注いでいるわけである。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

空席広告の探し方

object26-688195406

空席広告の探し方はいろいろあるが、大抵の人はまず就職希望の国際機関のサイトにアクセスするのではないだろうか。しかし希望の職種がその機関だけに存在するとは限らず、意外な国際機関で同じような空席があったりする。現在はどの機関でも任務が複雑かつグローバル化している傾向にあるので、同じような職が多数の機関に散らばっているケースは多い。

例えば公衆衛生の専門家はWHOだけで求められているわけではなく、UNICEFであったり、IOM, UNDPで募集していたりしている。防災関係分野にしても、UNISDR, UNDP、UNEP, ADB等あちこちにみられる。

これらをもれなく調べるには決まった機関のサイトを利用するだけでなく、職種別に空席広告をチェックするのが近道だろう。例えば外務省の国際機関空席のエクセルシートをダウンロードし仕事タイトル別に検索する方法がある。またICSC 国際人事委員会のジョブネットhttps://jobs.unicsc.org/ はグレードや勤務地だけでなく職種別に空席を選別できる。UNJOBS http://unjobs.org/のサーチエンジンでは職名を入力すれば国際機関、NGO等の空席が広い範囲で検索できる。ただし過去の空席等も入ってしまうので注意が必要だ。

この他、人道関係の職捜しであればUNOCHA http://reliefweb.int/jobs,  UNISDR http://www.preventionweb.net/english/professional/jobs/ の空席サーチエンジンも包括的に空席広告データを提供しており、ある程度まで選別が可能である。これらのサイトは国際機関以外の空席広告が充実している。

他にも利用できるサイトは多々あると思われるので、ご存じの方はこのページでシェアして頂きたいと思う。またある程度機関を限定できたら、アラートシステムを積極的に利用して自分のプローフィールにあった空席の情報を早く確実に入手できるようにしたいものだ。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

米ヘルムズ議員の国連叩き

DSCN0797

アドバイザー春氏の投稿です。

結構前の話になるが、90年代国連はアメリカ共和党ヘルムズ氏の先頭するバッシングに会い、国際機関全体が影響を受けた。当時の国連事務総長ブトロス・ガリ氏の、国連が中心となって冷戦終了後の国際秩序を模索していくべきだという野心的なビジョンは、ヘルムズ氏の保守思想をいたく刺激し、アメリカ議会は国連と衝突の道をとるようになった。1996年『Foreign Affairs』誌掲載のヘルムズ議員のガリ氏に対する以下の反論後、議会は国連の分担金を大っぴらに滞納するという挙に出た。

「最近の国連は加盟国諸国家のための機関というよりそれ自体がひとつの国家になってしまったような観がある。独自の軍隊を持ちたいといってみたり、税金を徴収したいなどといったり、いったい何様のつもりなのだろう。ガリ事務総長は冷戦の終了とともに国家の絶対主権の時代は終わった、という。たしかに今日、我々の抱える諸問題はグローバルなもので国境を越えた対応が必要である。しかしそれは諸国家が主権を国連のような国際機関に委譲すべきだという議論には繋がらない。例えばイスタンブールで開催されたHABITAT II。ここでのテーマは都市の抱える問題だったが、これなどは国連が扱う前に、国家、それ以上に地方自治体がまず考えるべきローカルな性格の問題ではあるまいか。国連がどこにでもしゃしゃり出てくるようになったのはブトロス・ガリ氏が事務総長になってからのことである。

とにかく現在の国連機関は間口を広げすぎている。宇宙の平和利用委員会に「なにびとも大気圏外から侵入してくる不審な物体を目撃したときにはただちに事務総長に報告しなければならない」という決議がある。UFOが目撃された時のために予算がつき、職員が待機しているのだ。これは事務局の経営形態が放漫であることもだが、国連の官僚達が「国際」とつけば何でも自分たちの仕事だと思いこんでいるからで、加盟国国民の税金を、勝手な事業を作って独りよがりに使いまくっている例である。

昨今のPKOなどは当初の意図から全くはずれ、選挙管理から難民の世話、国の復興事業までも「平和維持」の名のもとに行なおうとしている。このように勝手に拡大された定義にカネをだせ、などと云われてはたまったものではない。拠出金はアメリカ国民の血税なので、アメリカ国益にかなった使い方がされるべきだ。これらへの対処法として、アメリカが国益にそわないと判断したプロジェクト(例えばPKO)にはカネをださないというやり方はどうだろう。プロジェクトの財政は、安保理や総会で賛成した国々だけが受け持てばよい。こうすれば本当に必要なプロジェクトしか行なわれないし、野放図な国際官僚の専断もコントロールできるというものだ。」

ヘルムズ論は国連、国際機関は「外交の手段であって、それ自体が目的ではない」という視点から、「外交の道具としての国際連合」という概念を示唆している。日本にとっての国連およびその事業と国益の結びつきを考える際、オカネやヒトをだし貢献する、すなわち使われる、ということでなく、国連機関を「あやつる」くらいの気合で国益達成に向けて成果をあげる、という外交技術の問題が提起されているように思えるだ。

90年代の国連はヘルムズ氏の強引な理論と実践の犠牲者であったが、彼の言動は、ガリ国連事務総長の組織のキャパシティを無視したビジョンに対し、毒をもって毒を制したというか、効果的にブレーキをかけたという見方もできる、と考えている。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

国際機関でのキャリア開発

Imagebase41343

国際機関の任務、機能は国際政治経済情勢の変化そして情報化、科学技術化、グローバル化等に影響される。それに伴い機関自体の構造の変化、役割の複雑化や多様化、地理的条件、予算やポストの不安定化など様々な要素が、採用条件、求められるプロフィール、そして職員のキャリアに反映されてくる。

国際公務員のキャリア開発の例を見ると、かっての同じ場で専門家として成果をあげ幹部レベルまで昇進、というパターンはどんどん少なくなっている。国連に関していえば、プログラム遂行に必要な仕事が多様化し、専門家と総合職の境界がつけにくくなってきている時代でもある。また可動性のないキャリア開発は難しくなってきている。

キャリアパスや専門分野、仕事環境等が複雑化し、明確で予測可能なキャリアプランが立てにくくなっているのも特徴である。ただし変化のタイムスパンは早くなっているので、頻繁なプラン調整が必要となる。

これらの傾向は国際機関だけでなく、グローバルな人材市場に見られるものだろう。このようにキャリアの多様性、不確実性が高まる中で、変化に柔軟に対応し、自分でキャリアを開拓していくという資質がより求められてきたといえよう。

国際機関でのキャリア開発は、機関、上司、本人という3部構成になっている。組織のキャリア開発サポートと上司はキャリア開発の重要な助けである。ただし、国際機関の人材政策でも « キャリアは自分で作るもの »と、個人の最終責任を明確に打ち出している。これからのキャリア開発には、自分の市場価値を常に高めつつ周囲のサポートを利用していく、という態度がより重要となるだろう。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail

国際機関でよく耳にする表現

UN_08

国際機関のコミュニケーションは主に英語でなされる。英語が堪能とはいえ、母国語ではない職員も多いし、勤務地のローカルな言語からの影響もありキングスイングリッシュばかりが使われているわけではない。長く勤務しているとその機関独特の語彙に気がついたりして興味深い。以下の表現は記憶に残っているものの一部である。

High-maintenance

維持の手間がかかるという意味の言葉だが、人事部で使用する場合は常に注意の必要な職員をさす。例えば自分の待遇条件等に、頻繁に質問や不満を発する者や、感情の起伏が激しく上司や同僚と衝突の多い者、勤務成績や態度に問題があり定期的なモニターが必要な職員など。どこの会社や機関にも大抵何人かいる、世話のやける困ったさんのことである。機関や部署により、その手の職員の割合は微妙に異なると言えよう。まあ、ハイメインテナンスと言われないよう気をつけたいものだ。

Catch-22

第二次世界大戦中のアメリカ人飛行士の小説の題から有名になったこの言葉は矛盾していて出口のない状態を指す。小説中の奇妙な軍規22項(狂気に陥ったものは自ら請願すれば除隊できる。ただし、自分の狂気を意識できる程度ではまだ狂っているとは認められない)に翻弄され除隊できない主人公の例のごとく、2つの相反する要求のジレンマから解決不可能となるケースは国際機関でもよく見られる。例えばフィールドのポストに応募したが、フィールド勤務経験がないという理由で不採用になった場合とか、予算がもらえずプロジェクトが始められないがプロジェクト不在のため予算獲得ができない例等。国連でのキャッチ22という表現は悲しいながら何となく現実離れしたコミカル感も漂い、官僚主義にお手上げという語り手の気持ちが感じられる。

Take it from there (here)

そこ(ここ)から始めよう、またはそこ(ここ)から続けようという意味。建設的かつ肯定的な響きをもったこの表現はどんな状況でも都合よくピタッとはまり、特別提案することがない場合など、とくに重宝される。そのためか会議や、打ち合わせ、メール等で結構よく使われている。ただしそこ、ここというのが何をさすのかはっきりしない場合も多く皆が同じことを理解しているかどうか心もとない。そことはどこか、という質問がでることがほぼないのも不思議である。文化、習慣の違いを乗り越えての以心伝心が可能なのか、それぞれが違うことを理解し他人もそうだと信じ切っているのか、知るのがちょっと怖いような気もする。

Facebooktwitterlinkedininstagramflickrfoursquaremail